【中編】「NPO向けソリューションプロバイダビジネスの活況」
「世界ファンドレイジング大会@アメリカ」レポートbyNPOマネジメントラボ山元圭太
前編「そこには日本の少し未来がありました」に続き、中編では「NPO向けソリューションプロバイダビジネスの活況」を紹介します。
■ 前編:「そこには日本の少し未来がありました」
「NPO向けソリューションプロバイダビジネス」とは
NPO向けのソリューションプロバイダビジネスとは、NPO向けに何らかのサービスを提供し、ビジネスを行うことを指します。日本で言えば、セールスフォースやgooddoなどがあげられるでしょう。日本でNPO向けソリューションプロバイダビジネスというと、「NPOってお金を持っているの?」と言われてしまい、残念ながらビジネスとして注目されているとは言えません。しかし、アメリカではNPOがひとつのマーケットとして成り立ち、多くのNPO向けソリューションプロバイダが参入するなど「活況」と呼べるような状況がありました。
IFCの会場にも、ファンドレイジング・日本と同様、ソリューションプロバイダが会場に集まりサービスの紹介する企業ブースがあります。しかし、その規模は明らかに異なっています。そこには約150社が出展し、自社のサービスをアピールするなど会場内をにぎわせていました。
アメリカ最大規模のドナーデータベース「Black baud」
日本ファンドレイジング協会代表理事の鵜尾さんと一緒に約20社近くを回りました。まずは会場で最も大きなスペースのブースを展開していた企業をご紹介します。クラウドのドナーデータベースを提供している「Black baud」です。
Black baudはDRM(ドナーリレーションシップマネジメント)に特化したドナーデータベースを提供している企業です。非常に使いやすくデザインされていて、寄付者一人一人のページでは今まで自団体にいくら寄付をしていきたか(生涯寄付金額)や他団体への寄付経歴なども見ることができます。調べたところによると、2012年で利益が約500億円、2013年には従業員数が約2600名にもなっています。日本では想像し難い規模ですね。
その他にもファンドレイジングに特化したコンサルティング会社や、富裕層の交友関係や寄付履歴などをまとめるリサーチ会社、non profit向けのメディアなど様々な面白い企業に出会うことができました。
NPO向けソリューションプロバイダの活況からみる4つの気づき
上記のようなNPO向けソリューションプロバイダの活況を現場で目の当たりにし、アメリカと日本の違いを考えながら、以下の4つの気づきを得ることができました。
1つ目は「かなり専門特化・細分化していること」です。ファンドレイジング支援と言っても、チャリティーゴルフの企画・運営代行から旅行に特化したコーズリレイテッドマーケティング支援まで専門分野は多岐にわたります。それだけ専門を絞ってもビジネスとして成り立つ市場に成熟していることが見て取れます。
2つ目に「競合との健全な競争関係があること」です。いくつもドナーデータベースの企業があったのですが、それらの企業はNo1のシェアを誇る前述のBlack baudとなんとか戦おうとユーザビリティを工夫したり、スマホ対応にしたりとサービスの向上を図っていると言っていました。健全な競争関係があるからこそ、よりよいサービスが生まれやすい環境であることが分かります。
3つ目の気づきは「日本マーケットの魅力のなさ」です。残念ながら「日本に進出する予定はあるか?」という質問の回答はどこの企業に聞いても”No”でした。これは日本のNPO市場が未だマーケットとして認識されていないためです。企業ブースでみたような良いソリューションがNPOに提供されれば、各NPOがより本業に注力することができ、より成果が出せるはず。日本の存在感を高める必要性を感じました。
最後の気づきは「モラルハザードの不安」です。どの企業ブースに回ってもサービスは素晴らしいのですが、どういう思いを持って活動をしているのかといういわば根っこの部分が見えてこないのは残念でした。行きつく先にモラルハザードが起きないかどうか、全く問題のない状況とはいえないだろうと感じました。
現在日本では、ファンドレイジングを成功させるためにも、全て自団体で試行錯誤をしなければならない状況があります。そこをアウトソースできる先があれば本業により注力して、自分たちでしか出せない成果を出していけるのではないでしょうか。日本でもNPO向けソリューションプロバイダビジネスが正しく発展する重要性を感じました。
NPO向けソリューションプロバイダビジネスを日本で盛り上げるために
あくまでも私見なのですが、日本でNPO向けソリューションプロバイダビジネスが発展するために以下の6つのステップを踏むとよいのではないかと思っています。
①既存のソリューションプロバイダが専門性をさらに高め、成果を出す
②その過程と結果をオープンにする
③エッセンスを一般化・標準化する
④市場が広がる
⑤プレイヤーが増える(既存企業の参入、新規起業)
⑥健全な競争が行われる
要は、既存のプレイヤーが成果を出し、それをオープンにすることでマーケットがあることを示すこと、その成功要因を一般化・標準化することで既存や新規の企業が参入しやすい環境をつくること、その結果として市場が広がり、プレイヤーが増えることで日本でもNPO向けソリューションプロバイダビジネスが発展するのではないかということです。僕も起業するときに諸先輩方から多くの知見やエッセンスをいただいた経験があります。だからこそ、僕自身も学んだこと、失敗含め積極的にオープンにしていきたいと思っています。
また、上記の6ステップを踏む際に、一連を通してNPO向けソリューションプロバイダとしてのモラルが守られる仕組みが必要だと感じています。協会のようなNPO向けソリューションプロバイダのベースを守れる仕組みが市場を正しく発展させるためには重要なのではないでしょうか。
次は、後編:「ソーシャルインパクト志向への転換」に続きます。
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