本記事は、日本ファンドレイジング協会大学チャプターが行った緊急調査「高等教育機関(大学)における新型コロナウイルス感染症に関する寄付募集の状況」を全3部でお届けします。
•シリーズ01 大学寄付を取り巻く環境
•シリーズ02 国立大の7割で学生支援主体の募金活動を実施
•シリーズ03 大学ファンドレイジングの発展に向けて
•コロナ禍対策として募金活動を実施していたのは、合計140大学。内訳は、国立60大学、公立14大学、私立66大学。
•文科省リンク集の掲載大学数は、国立86、公立93、私立611の合計790大学。ここから算出すると、全体の約18%がコロナ禍対策として募金活動を実施。
•大学種別の内訳では、国立は70%の大学が寄付を募集しており圧倒的に比率が高く、公立は15%、私立は11%。
•募金を呼びかける大学の約70%が、学長や理事長からのメッセージを掲載。
•恒常的に、または記念事業で寄付ページを設けている大学数は、国立86(全ての大学)、公立63、私立345の合計494大学。ここから算出すると、コロナ禍対策として募金活動をしていた大学の割合は全体で28%。内訳は、国立70%、公立22%、私立19%。
•大学チャプターメンバーが在籍する76大学のうち半数の38大学で、コロナ禍対策として募金活動を実施。
(コロナ禍を要因とする募金活動を行っている大学の割合)
•寄付金の使途は、ほとんどが現役学生への支援。数は少ないものの大学病院への医療支援、研究プロジェクトへの支援を呼びかけるものもあった。
•多くの大学では、修学支援基金など既存寄付の枠組でコロナ禍対策への寄付を呼びかけていた。
•最終的な寄付金目標額を公表していない大学が多かった。公表されている中での最少額は100万円、最高額は2億円。
•一口の寄付金額についても、記載のない大学が多かった。記載されている中での最少額は1000円、最高額は10万円(クラウドファンディングを除く)。
•文科省の区分に応じて「北海道・東北」「関東・甲信越」「東海・北陸・近畿」「中国・四国」「九州・沖縄」の5地域で比較した。
•実施率が最も高かったのは中国・四国地区で22%、最も低かったのは東海・北陸・近畿地方で14%。
•Web申込フォームが利用可能な大学は、国立98%、公立57%、私立85%。
•国立大の決済手段ではクレジットカードが最も多く、93%。公立のクレジットカード決済は36%と低く、私立は80%。
•公立大と私立大の決済手段は、郵便振替または銀行振込が最多で、公立93%、私立88%(主に金融機関の窓口で払込票による送金。詳細のない大学もあった)。
新型コロナウイルス感染症に関連した支援として、寄付金以外の取組みもみられました。ここでは2大学の事例を紹介します。
島根大学の「お米の寄付」
島大では、緊急学生一時金への寄付を呼びかけると同時に、教職員有志が、お米を集めて配布する試みを実施。初回に600㎏以上のお米が集まったほか、缶詰やレトルトカレーなどの多くの食品が寄せられ、新聞等にも掲載されるなど話題になっています。
ウェブサイトの即時性を利用し、活動報告や寄付者と学生のメッセージを頻繁に更新することで共感を広げ、好循環を生んでいます。
(画像:島根大学 https://www.shimane-u.ac.jp/docs/2020051500029/ より)
国際基督教大学(ICU)のビジュアル活用
ICUは、調査期間中において、大学トップのメッセージを動画で配信していた唯一の大学です。また、同窓会特設サイトを設け、卒業生から在学生へのメッセージを、顔写真付きで掲載しています。
大学が広報として作り込む動画や画像は普及してきました。今後は、同学のように、同窓生と在学生の絆を強めて寄付につなげるためのビジュアル活用も、広がりを見せると思われます。
(画像:ICU同窓会 https://cov-aid.icualumni.com より)
参考資料:日本私立学校振興・共済事業団「平成28年度 学校法人の寄付募集に関するアンケート」
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