寄付・社会的投資が進む社会の実現に向けて挑戦を続けるリタワークス株式会社と、そのグループ会社であるコングラント株式会社。両社は、非営利組織に必要不可欠なファンドレイジング・サービスを提供する一方で、寄付をもっと身近で信頼できるものにし、社会全体に広げていく取り組みを進めています。
2024年12月のインタビュー(記事はこちら)では、お二人が描く寄付市場の未来像、そして全国のNPOと寄付者をつなぐためのチャレンジについて伺いました。
あれから約1年。語られた構想が動き出し、実現に向けた歩みが進んでいます。
(聞き手)日本ファンドレイジング協会 代表理事 鵜尾 雅隆
鵜尾:最近、大きな成果があったと伺っています。
佐藤:コングラント株式会社は、ソーシャルセクターと企業向けに寄付決済を中心とした「寄付DXシステム」を提供しています。寄付募集・決済・CRMなど、NPO経営に必要な機能をワンストップで支援する仕組みです。2025年9月現在、導入団体は3,500以上、寄付流通総額は120億円を突破しました。利用いただく団体が増える中で、私たちは、どうすればNPOへの寄付がさらに広がるのか、プラットフォーマーとして何ができるのかを考え続けています。寄付を募集する団体が増えるだけでなく、寄付する人を増やしていかないといけない。だからこそ、私たちが取り組むべきは、寄付する側の体験を向上させることだと考えています。
その一つとして、コングラントはPayPay株式会社との契約に基づき、対象法人が個別にPayPay法人向けビジネスアカウントを契約することなく、コングラント上で「PayPay」による寄付を受け付けられる仕組みを実現しました。
まるでオンラインの募金箱のように、寄付者は個人情報の入力をせず、わずか3タップで寄付が可能です。100円からの少額寄付にも対応し、誰もが気軽に社会課題解決に参加できる環境を整えました。
この機能により、コングラントを利用する認定NPO法人、公益財団法人、公益社団法人、社会福祉法人は、より多様な寄付者層とつながることができるようになります。
鵜尾:前回のインタビューでは、寄付市場の信頼と成長を支える鍵として「認定NPO法人」に光を当て、全国規模で集うカンファレンスを開催したい、という構想をお伺いしました。それが「ignite!」という名で形となり、2025年11月7日、日本初となる全国の認定NPOが集う大規模カンファレンスの開催が決定しましたね。
中川:この5年間ほど、私たちはNPOのウェブサイト制作や広報物などのクリエイティブ支援を続けてきました。その中で強く感じるのは、大きな団体やノウハウを持っている団体は、自分たちの活動が社会の役に立つことをしっかり発信できているということです。結果として資金提供をしたい人の目に届き、信頼を得て、寄付が集まっています。
一方で、草の根的に活動している団体は、良い取り組みをしていても、それを十分に伝えられず、寄付が集まりにくい現実があります。だからこそ、NPOの活動を“見える化”し、信頼を社会に伝える仕組みをつくることが不可欠だと思いました。
そこで、まずは、認定NPO法人に焦点をあて、全国の認定NPO法人が情報公開している情報をもとに財務情報を一覧化した、認定NPO法人データベース(https://data.congrant.jp/)に取り組みました。すると、実際にそのデータを活用するメディアも増えてくるようになりました。さらに、認定NPOを起点に“ignite!”という火を灯し、業界全体を盛り上げていきたいと思い、カンファレンスを開催します。

公式サイトはこちら:https://npo-ignite.com/index.html
佐藤:「ignite!」には三つの軸があります。
一つ目は、認定NPOの可視化です。認定NPO法人は、個人や企業が寄付する際に税制優遇が適用される“信頼の証”であり、ソーシャルセクターの中でも活動をけん引する存在です。しかし、日本の認定NPO法人は全国でわずか約1,300法人。認定NPO法人の組織成長の支援をすることで、次に認定を目指す団体や公益法人にも波及効果を生み、寄付市場全体の機運を高められると考えています。
二つ目は、大企業の社会貢献活動の促進です。これまで日本の企業寄付は、指定寄付や自社財団を通じて行われることが多くありました。しかし今は「個人の時代」です。従業員一人ひとりが社会とどう関わるかが問われており、企業もそれをサポートする責任があります。グローバル企業では従業員の寄付やボランティアを積極的に後押しし、資金的支援を行う例も増えています。日本ではまだ十分ではないからこそ、「ignite!」を通じて企業に参加いただき、従業員寄付や社会貢献活動を後押しするきっかけをつくりたいのです。
三つ目は、制度の改善と政策提言です。寄付や社会参加をもっと身近にするためには、制度や税制を参画しやすい形に変えることが必要です。そのための意見収集と政策提言の場として「ignite!」を育てていきます。
こうした三つの軸を通じて、「ignite!」を認定NPOを中心に、企業や市民、政策をつなぐハブとして発展させたいと考えています。
中川:「ignite!」は、認定NPOという共通言語を軸に、日本のソーシャルセクターを良くしたいと考える人々が集まり、未来を描き、共有する場になると思います。そして、特徴は、そこに大企業の方々が参加することです。認定NPOが自らの活動や熱意を直接伝えるピッチの時間も設けています。「どんな団体がどんな活動をしているのか、どんな想いで取り組んでいるのか」を直接知ってもらいたい。「寄付してよかった」という成功体験は、そこから生まれると思っています。
そしてNPOにとっても、自分たちの取り組みがどのように受け止められるのかを感じ取れる機会になるはずです。そうしたお互いの体験が重なり合うことで、NPOの可能性、ひいてはソーシャルセクター全体の可能性を広げる場になればと思います。
鵜尾:「ビジネスモデルを通じた社会課題解決」や「インパクトスタートアップ」といった流れが広がり、法人格にとらわれずに社会課題を解決していこうという議論が進んできました。こうした潮流とともに、「それは本当に一人ひとりの幸せにつながっているのか」という問いに向き合い続ける力も必要です。社会課題解決に挑むプレイヤーが増えている今だからこそ、その本質に責任を持って取り組める存在として、認定NPOのような法人格が再び社会的に認知され、信用を得ていくことは大きな意味を持つと思います。
また、多様なプレイヤーが自らの役割の枠を越えて力を合わせることも不可欠です。リタワークスさんやコングラントさんのように、自社の成長だけでなく、セクター全体に資金循環をもたらす仕組みを生み出している挑戦者が一堂に集まり議論する。そのこと自体が、新たな一歩を踏み出す契機になると期待しています。
中川:「ignite!」は、”火をつける”という意味ですが、私たちはこの業界に火を灯し、認定NPOという制度をさらに輝かせていきたいと思っています。数年かけて日本の認定NPO制度を昇華させ、その力でソーシャルセクター全体を盛り上げていきたい。そのための挑戦です。
リタワークス自身もスタートアップとして新しい試みに挑戦し続けています。「ignite!」を通じて得られる気づきやつながりを、自社の事業に取り入れるだけでなく、業界に還元しながら、ともに前へ進んでいきたいと思っています。
佐藤:これまで、日本ファンドレイジング協会が主催するファンドレイジング・カンファレンス「FRJ」で学んだことや出会った人とのつながりが、まさに今の自分の取り組みにつながっていると強く感じています。そうした意味でも、日本ファンドレイジング協会への感謝は尽きません。今後は、認定NPO法人の制度改善や新しい政策提言にも力を注ぎたい。多くの方々と連携しながら、制度を少しずつでもより良い形に変えていきたいと考えています。
「ignite!」の場ではその議論を深め、FRJの場ではそれをシステムチェンジとして具体化していく。二つの場を補完的に活かし、多くの仲間を巻き込みながら、寄付市場とソーシャルセクターの未来を切り開いていきたいと思います。
「ignite!(イグナイト)」は、認定NPOの経営課題解決や制度や仕組みの改善に向けて、全国の認定NPOが集う大規模カンファレンスとして、
2025年11月7日(金)〜8日(土)に東京で初開催されます。
「システムチェンジ」をテーマに、セッションやブースエリア、ピッチコンテストを通じて、社会のお金の流れの最新動向や最先端の取り組みを学び、協働のきっかけをつくる1日の対面イベントとして、2025年12月6日(土)に開催します。
30本以上の動画を通じて、現役ファンドレイザーが解説する実践的なスキルを学べます。ここでしか聞けない他団体の成功事例や明日から活かせるノウハウを、
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