社会貢献を仕事にする
働き方が多様化する中で、「社会に貢献する仕事」への関心も高まってきています。フルタイムで職員としての勤務に加え、本職を持ちながらそのスキルと経験を活かして社会的な団体で活動するプロボノなど、関わり方も様々です。しかし、社会貢献に携わる仕事の見つけ方、必要となる資格やキャリアなど、情報を必要とされている方も多くいらっしゃいます。
今回のトークショーではそれらの疑問に加え「仕事の内容は?」、「影響を受けたNPOの本は?」といった内容について、実際に社会貢献を仕事にされている3名の方にお話を伺いました。(出演者プロフィールは、下部をご参照ください)
「社会貢献を仕事」にしたきっかけとは?
まず、なぜ社会貢献を仕事にしようと考えたのか、影響を受けたものについてお話し頂きました。
大石さんは現職につく以前も別の中間支援組織に勤められていました。その前は学生で、大学一年生の時に出会った本をきっかけにNPOを就職の選択肢として考えるようになったと仰っていました。
青木さんは学生時代に開発に関する勉強をされており、将来は途上国開発に携わりたいと考えていらっしゃいました。現職に就いてから上司にその話をしたところ、SVPを紹介して頂き、プロボノとして関わるようになったとのことでした。
鎌倉さんがシャンティに勤めたきっかけは、カンボジアからの留学生でした。大学職員を経験した後、学校に入り直し、そこで出会った彼から聞いた内戦の話に影響を受け、単身カンボジアに乗り込まれたそうです。
皆さんに共通して言えるのは、社会貢献への想いを元々持っていて、それがそれぞれのきっかけで形になったということです。
必要なスキルは強い「想い」
社会貢献を仕事にするに当たり、必要となる経験や資格などはあるのか伺いました。必要なものとして、全員が仰っていたのは「やりきるという気持ち」です。社会に貢献したいというパッションが、何よりも大切だということです。勿論、コンピュータや語学などの一般的なスキルを習得しているに越したことはありません。しかしNPOでの仕事は、大石さん曰はく「刺激の連続」。予想外のことが起こる中で臨機応変な対応をしつつ、最後までやり遂げるという想いが必要不可欠だと仰っていました。
どこで探す?
様々な団体が、社会的な仕事についての求人情報を紹介しています。今回は日本財団が運営する「CANPAN」や、NPOサポートセンターの「NPORT」、「プロボネット」や「JANIC」等を紹介されました。それに加えておすすめされていたのが、実際にボランティアやイベントに参加してみることです。求人の際には、理念を理解し賛同してくれるような、団体と相性の良い人を優先することが多くあります。こういったことからも、普段から団体と関わりを持つ人に声をかけることが多いと仰っていました。
背中を押した一冊は?
影響を受けた本として、大石さんは学生時代に出会った『NPO入門』(山内直人 日本経済新聞社)を挙げられていました。NPOを就職の選択肢と考えるきっかけになった一冊です。
青木さんは『ブルーセーター』(ジャクリーン・ノヴォグラッツ 英治出版)や、キーワードとして「パラレルキャリア」に関した本をおすすめされていました。プロボノとしての関わり方やそのメリット、リスクなどの勉強になるでしょうとのことです。
鎌倉さんは自著である『走れ!移動図書館』(鎌倉幸子 筑摩書房)に加え、『トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦2』(トム・ピーターズ CCCメディアハウス)を紹介されました。ご自身も仕事をするうえで参考にされているとのことで、NPO関係者ではない人にも読んでいただきたいビジネス書だと仰っていました。
刺激と出会いの日々へ、一歩を
最後に、社会貢献を仕事にしたいと考える方々に対してメッセージを頂きました。その中で、NPO業界はまだ未整備であることは課題の一つですが、だからこそ常に新しい仕事を開拓していく中で刺激的なことが多く、面白い仕事であると仰っていました。又、プロボノという関わり方の中では多くの人と出会い、異なる価値観を知ることができると共に、参加したことによって更に人生の選択肢が広がっていくことも大いにあるとのこと。是非一歩踏み込んでみてほしいと仰っていました。
つながる機会をこれからも
今回のトークショーはまさに、社会貢献に関わる仕事に就きたいと考える方々にとって、求めている情報を集約したものだったと言えるでしょう。人材不足の問題が常にのしかかる非営利セクターにとっても、想いを持つ方々に一歩踏み出してもらうことは非常に重要なことです。そのきっかけとして、また交流の場としても有意義なイベントとなりました。今後も、こういった情報発信によって社会貢献に関する仕事に興味を持ち、飛び込む人々が増えていくことを願います。
(インターン大矢将弘)
<出演者プロフィール>
青木三紀(あおき みき)
金融機関勤務。2007年より、社会的な課題の解決に取り組む革新的な事業に対する支援を行うソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(SVP東京)に参加。本業である企業勤務と、SVP東京を通じて小さな組織のサポート、運営の両方に関わった経験も契機となり、英国の大学院に進学。現在は社外での経験を本業に還元したり、企業のリソースを社外につなげることに関わる等、活動の幅を広げている。
大石俊輔(おおいし しゅんすけ)
日本ファンドレイジング協会 寄付市場形成事業プログラム・ディレクター。
学生時代より、まちづくり、文化芸術分野のNPOでのボランティアを経験。2008年4月よりNPO法人せんだい・みやぎNPOセンターに勤務。2010年6月より現職。2010年日本で初めての寄付白書の編纂で中心的な役割を担うとともに、次世代向けのフィランソロピー教育である「寄付の教室」実行責任者として活躍中。
鎌倉幸子(かまくら さちこ)
1999年にシャンティ国際ボランティア会カンボジア事務所に入職。8年間カンボジアで本の出版、移動図書館など図書館活動に従事。東日本大震災直後に岩手県に入り、移動図書館事業を立ち上げる。現在、同団体の東日本大震災図書館事業のアドバイザー兼広報課長。大学院の専攻は異文化経営学。多国籍企業やNGOのマネジメントを学ぶ。著書に『走れ!移動図書館』(ちくまプリマー新書)がある。
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