公益財団法人日本非営利組織評価センター(JCNE)は、2024年3月にNPOの信頼性に関する全国3,000人規模の調査結果を発表しました。また、6月には日本NPO学会で本調査をもとにしたパネルディスカッションが開催されました。本記事では、その調査結果と学会で交わされた意見をもとに、NPOに対する社会的認知や信頼の現状を把握し、信頼性向上に向けた取り組みのヒントを探ります。
※「NPOの信頼性についての意識調査」は、こちらからご覧いただけます。
https://jcne.or.jp/2024/04/02/report-12/
瀬上:本調査は、NPO法施行から25年が経過し、社会貢献活動の主体としてのNPOの認知が広がる一方で、その信頼性に対する疑問の声があることを背景に実施しました。本調査における「NPO」は、NPO法人に限らず、公益法人や社会福祉法人といった公益活動を担う法人全体を指しています。その結果、NPOを信頼できると回答した人は20.2%で、5人に1人という結果になりました。
山田:本調査では「信頼できるNPOはありますか」という質問をし、漠然としたNPOのイメージではなく具体的な団体の認知状況を確認しました。その結果、NPOの信頼度に関する質問で「信頼できる」と答えた人の中でも、具体的に信頼できるNPOがある人は3割に留まりました。NPOが身近な存在として認知され、具体的な団体名を思い浮かべられるようにすることが、信頼につながっていくと考えています。
「NPOの信頼性についての意識調査」より(JCNE提供)
坂本: 若い世代にNPOや市民活動の重要性を知ってもらい、体験や参加を促すことが重要だと思います。学校教育や地域イベントを通じて、若い世代にNPOの活動に触れる機会を提供することが、信頼性向上の鍵となるかもしれません。
瀬上:国内外における様々な社会課題だけではなく、近年は企業や政治を取り巻く社会問題への注目も高まっています。そこで「NPO」「民間企業」「政府」「マスメディア」の4つのセクターで信頼度を比較したところ、民間企業の24.5%についで、NPOは20.2%と2番目に信頼度が高い結果となりました。さらに政府は13.2%、マスメディアは12.4%となりました。
「NPOの信頼性についての意識調査」より(JCNE提供)
脇坂:「信頼できるNPO」の要素として、「情報が公開されていること」が上位に挙げられました。しかし、具体的にどのような情報公開が求められているのかが重要です。NPOの情報公開が重視されている米国では、毎年国税庁に提出するForm 990に、法人概要、活動計算書、貸借対照表、事業ごとの内容および費用の額、役員等への報酬、その他の情報、一定以上の給与や業務委託費を支払っている先の支払いの内訳などが公開され、誰でも容易にその情報にアクセスできます。日本でも、どのような情報を公開すればNPOは透明性が高いと評価されるのかを考えていく必要があるのではないでしょうか。
坂本:この調査では、信頼があると寄付されるという結果でしたが、寄付をすることで信頼が高まることもあります。最初の寄付のきっかけをどう作り、その接点からの継続的なコミュニケーションを通じて信頼性を高めていくことが大切かもしれません。
小川: 信頼できるNPOの要素として、行政機関や第三者機関から認証を受けていることが高く評価されています。JCNEさんのグッドガバナンス認証制度をはじめ、第三者機関の認証を受けている場合、それをPRすることが重要です。日本ファンドレイジング協会もグッドガバナンス認証を取得し、ウェブサイトや団体の紹介資料に掲載しています。また、企業からの支援や協働の取り組み、助成金の受取実績などがあれば、それを公開することも大切ですね。
瀬上:今回の調査や本日のディスカッションをきっかけに、NPOの信頼性に関心を持つ人が増え、信頼性向上に向けた取り組みを公益活動に関わるすべての人々と一緒に考えていけることを願っています。
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