サステナビリティの本質的な社内浸透をカードゲーム「from Me」で実現する<ファシリテーターオブザイヤー・インタビュー>

ファシリテーターオブザイヤー2024受賞
株式会社アドバンテスト サステナビリティ推進室マネージャー
大杉 健一 氏
株式会社アドバンテストでサステナビリティ推進を担当する大杉健一さんが、カードゲーム「from Me」ファシリテーターオブザイヤー2024に選ばれました。
企業でのサステナビリティ浸透や新入社員研修、さらには大学教育の現場でも from Me を活用されています。企業での活用方法、効果、そして今後の展望について伺いました。
――大杉さんのキャリアについて教えてください。
私のキャリアは国際協力からスタートしています。2000年代初頭、総合学習の時間が導入されたことで、開発教育のニーズが増加し、学校や教育機関で国際理解をテーマにしたワークショップを数多く実施しました。
参加者と一緒に課題を見つけ、対話を通じて理解を深めていく——このファシリテーションの手法は、現在のファンドレイジングやサステナビリティ推進の仕事にもつながっています。
現在はアドバンテストでサステナビリティ推進室マネージャーとして、社会的インパクト投資とサステナビリティを軸に活動しています。
――from Me に出会う前、どのような課題を感じていましたか。
多くの企業と同様、アドバンテストでも法定開示への対応やESG評価機関からの評価向上に取り組んできました。ただ、開示文書を整えることが、本当にサステナビリティの本質なのだろうかという疑問がありました。
大切なのは、社員一人ひとりが意識を変え、行動を変えていくこと。報告書がどれだけ整っていても、現場の社員がその意味を理解し、共感していなければ、本質的な企業価値の向上にはつながりません。この「社内浸透」をどう実現するか——効果的な方法を模索していました。
――from Me を知ったきっかけは?
2024年3月のファンドレイジング日本(FRJ)のイベントで、丸井グループの事例発表を聞いたことがきっかけです。「自社サービスが社会にどう役立っているかを、ゲームを通じて理解してもらえた」「従業員エンゲージメントが高まった」という話に、これは興味深いと思いました。
その場ですぐにブースを訪れ、4月の体験会に参加、5月にはファシリテーター養成研修を受講しました。
――社内での導入はどのように進めましたか。
最初は社内横断プロジェクトの枠組みで有志と実施し、好評でした。次に技術部門むけに実施したところ、予想以上の反応がありました。「普段の仕事と全然違うけれど考えさせられる」「新しい視点での議論ができた」という声が多く、理系人材が多い企業でこそ効果的だと実感しました。
――参加者からのフィードバックで印象的だったことは?
当初、私はサステナビリティ意識の醸成を主目的としていました。しかし実際には「従業員エンゲージメントに良い影響があった」「チームビルディングに役立った」という声が多く寄せられました。
開発部門では個人単位で業務を進めることが多く、from Me のワークショップが自然な対話のきっかけとなっていたようです。この発見により、「サステナビリティ」という言葉だけでなく、「従業員同士の関係性向上」という視点も含めて提案するように調整しました。
――人事部門への展開について教えてください。
技術部門での実施を経て、人事部門に提案しました。人事メンバーへ実施したところ、良い反応をいただき、「これは研修に活用できそう」という話になりました。
新入社員研修でも好評でした。講義形式の研修が続いた後でしたが、ワークショップが始まると場の雰囲気が変わり、積極的に対話し、協力し合う姿が見られました。
同期同士の関係構築や、会社の価値観を体験的に理解できる機会として、現在、新入社員研修への正式採用が決まっています。

――社内イベントでの出展について教えてください。
社内の技術発表イベントで from Me のブースを出展し、会長や社長もブースを訪れました。特に反応があったのは、「従業員エンゲージメント向上」という点でした。
当社では、エンゲージメントに関するKPIを設定していますが、具体的な施策については検討を続けていました。from Me を「エンゲージメント向上の取り組みの一つ」として提示したところ、経営層から「進めてください」と支持をいただけました。

――秋田大学での取り組みについても伺えますか。
私は秋田大学で企業会計と資源政策の非常勤講師も務めています。気候変動や国際的な枠組みについて説明する際、抽象的になりやすいのですが、from Me を授業に取り入れたところ、学生の反応が変わりました。
「説明を聞いているだけではイメージしづらかったが、ゲームを通じて行動と結果のつながりが理解しやすくなった」という声をいただきました。理論と実感を結びつけるツールとして、効果を感じています。
――今後の展開について教えてください。
アドバンテストは、日本国籍以外の社員が多く在籍する企業です。ワークショップを実施する中で、「英語版があれば」という声がありました。サステナビリティの重要な要素の一つが「多様性の尊重」ですから、多言語対応は意味があると考えています。
まずは英語版を作成し、アドバンテストの海外拠点向けに実施すること、そして、別途現地企業や教育機関での展開も視野に入れています。
――他の企業からの反応はいかがですか?
一橋大学が主催するサステナビリティ関連の経営人財育成プログラムで、様々な企業の担当者と交流する機会がありました。from Me を紹介したところ、関心を示してくださる方が多くいらっしゃいました。
サステナビリティの社内浸透や従業員エンゲージメント向上は、多くの企業で検討されている課題のようです。既に、外部講師としての依頼もいただいています。
――from Me の導入を検討している企業の方へメッセージをお願いします。
from Me の価値を理解する上で、「体験する前と後」の壁があります。社内イベントでも、説明だけでは「何のためにやるの?」という反応がありました。しかし、私の答えはいつも決まっています。
「まず体験してみてください。そうすれば、その良さが分かると思います」
私自身、体験会に参加して初めて、このツールの設計の工夫と効果を実感しました。参加者の一人が「カードゲームだけど、ゲームじゃない。実際の世界と似ている」と言っていたのが印象的でした。
自分のゴールだけを追求しても達成できない。協力し、譲り合い、社会全体を良くすることが、結果的に自分にも良い影響がある——この循環を、楽しみながら体験できるツールです。
本質的なサステナビリティは、開示文書の整備だけでは実現できません。社員一人ひとりの意識と行動に変化をもたらすこと。それが大切だと考えています。from Me は、その実現のための一つの選択肢になると思います。

【取材後記】
大杉さんの言葉で最も印象的だったのは、「体験してみないと分からない」という一貫したメッセージでした。
国際協力からファンドレイジング、そしてサステナビリティ推進へ——20年以上、人々の意識変容に携わってきた大杉さん。「人は説明されるだけでは変わりにくい。自ら体験し、気づくことで行動が変わる」という信念が、from Me の活用にも反映されていました。
企業のサステナビリティ推進は今、「開示対応」から「社員一人ひとりの実践」へ移行しつつあります。現場の社員が自分ごととして行動する——その橋渡しをするツールとして、from Me は新たな可能性を示しています。
ぜひ一度、体験会でその効果を確かめてみてください。
★今後のカードゲーム「from Me」の体験会情報
都内を中心に定期的に体験会を開催しています。
まずは人事ご担当者様ご自身で、その内容をご確認ください。
詳細・お申し込みはこちら
https://jfra.jp/fromme/event
お問い合わせ
日本ファンドレイジング協会 from Me 事務局
Email: ltg@jfra.jp
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