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【報告】「子どもの寄付教育を考える」セミナー

2011.07.27

 【報告】「子どもの寄付教育を考える」セミナー
日時:2011年7月5日(火)18:30~20:30
会場:日本財団ビル 会議室3・4
主催:日本ファンドレイジング協会
講師:鵜尾雅隆(日本ファンドレイジング協会)
   牧野郁子(鶴ヶ島市社会福祉協議会)
   白木朋子(認定NPO法人ACE)
   イノウエヨシオ(日本ファンドレイジング協会)

昨年度、日本ファンドレイジング協会で実施した、フィランソロピー教育「寄付の教室」を振り返ると共に、子どもの寄付教育について、各地で取り組まれている、先駆的な事例を共有しながら意見交換することで、日本における寄付教育について考えるセミナーを開催しました。

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<1> 基調講演「日本と世界の寄付教育」 日本ファンドレイジング協会 常務理事 鵜尾雅隆
        
      (以下講演抜粋)
     今日のテーマは、「日本における寄付教育と寄付の教室」についてです。
     「寄付の教室」では、“寄付の仕方”を学ぶということではなく、寄付を通して自分が社会にとって
    かけがいのない存在であると気付き、自分に自信を持てるということが大切なのだと思いました。
     日本では、ボランティアに関する学校での取り組みは、1970年代から行われてきました。他方で、
    寄付に関する教育プログラムについては、全国各地にプログラムが生まれてはいますが、体系的に
    整理されていません。また全国展開できるモデルがないというのも課題です。そこで、私たちは以下の
    「3つの目標+1」を掲げ、全国に寄付教育を展開していきたいと考えています。

     1.自己肯定感を促す
     2.多元的価値観を尊重する
     3.社会とのつながりの実体験する
     +1.楽しめる

    寄付を通して社会が変えられるんだということが分かるということも大切です。このような点を目標に
    「寄付の教室」ではいくつかの展開を用意しています。
     これから、ご紹介いただく事例を踏まえ、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

<2>事例1:「子ども審査員-子どもたちが助成金の公開審査会にかかわる」
         鶴ヶ島市社会福祉協議会 牧野郁子氏

    (以下講演抜粋)
     共同募金会の助成審査に子どもが参加している事例のお話をしたいと思います。
     子ども審査員導入の背景には、1995年以降、国際交流など、福祉以外の分野での助成ニーズが
    出てきたために、ボランティアセンターが総合的な取り組みを始めたということがあります。
     実際に子ども審査員が加わった審査会を行ってみて、下記のような気づきや学びが得られました。

     1.「お金はなんのために使われるんですか」など、子どもからの率直な質問が団体にとっても学びの
       場になっているのがよかった。
     2.地域の人が地域の中でのお金の使われ方を決めるというシステムである。
     3.団体にとっても、プレゼン力の強化など、メリットがある。
     4.自分たちの活動で精いっぱいで、周りが見えていない場合があるが、ほかの団体への理解を
       深める機会になる。
     5.3分で伝えるというプレゼン力を磨き、自分たちの活動を問い直すいい機会になっている。

     他方で、課題もあります。1つは、募金額が下がり続けていることです。もう1つは、募金を集める側と
    出す側の認識がずれてしまっていることです。
     想いとお金をつなぐのが寄付教育だと思います。これからの寄付の教室の展開に期待したいと思います。

<3>事例2:「参加型学習-学校の開発教育の中での寄付という参加」
         認定NPO法人ACE 理事・事務局長 白木朋子氏
    
    (以下講演抜粋)
     私たちは、児童労働の現実を知らせ、それをなくすために活動してきました。取り組みには大きく
    2つあって、1つは、現地を動かすことで、もう1つは、日本を動かす取り組みです。この「日本を動かす」
    の中に、子どもたちに向けたワークショップ「おいしいチョコレートの真実」があります。
     現状では、「知って考えて、行動する」の「知って」「考えて」は普及していますが、「行動する」の
    部分までなかなかいきませんが、実際に子どもたちのアクションにつながっている事例では、
    チラシの作成・配布を行い、企業や政治家への手紙の送付などが行われています。
     この教育プロラムを通じた気付き、大切にしていることに次のようなことがあります。

     1.寄付は問題解決の手段のひとつであり、働きかけることで社会を変えることができることを
       実感してほしい。
     2.社会を担っているのは自分たち一人ひとりであり、一人ひとりに役割があると実感してほしい。
     3.寄付がどう使われているのかをきちんとフィードバックする。

     授業の最後では、「行動する」ということに少しでもつながるように、フェアトレードのチョコレートを
    紹介し、チョコレートを食べることで貢献できることを知って行動してほしい、というメッセージを送って
    います。

<4>事例3:「寄付の教室-寄付教育モデル事業の成果と課題」
         日本ファンドレイジング協会 イノウエヨシオ
   
    (以下講演抜粋)
     日本ファンドレイジング協会で取り組んでいる寄付教育「寄付の教室」の実施事例と概要をご紹介
    させて頂きたいと思います。
     まずは、「寄付の教室」を北九州で実施するのにご協力頂いた、北九州市障害福祉ボランティア協会の
    遠山さんから、ご感想を伺いたいと思います。
     「『寄付の教室』を通して、寄付は信じて託す行為であり、子どもの教育である一方で、子どもの力を
    信じるという大人の力がためされているのだとも感じました。『寄付の教室』を通して、子どもが自分で
    選んで寄付をするという体験ができて良かったと思っています。」
    (北九州市障害福祉ボランティア協会・遠山さん)
     生徒たちからのアンケートからは、「気付きがあるから今後の行動と世界が変わる。」「寄付が社会に
    参画する方法のひとつであることが分かった。」などの意見が出ました。一方、課題として、“お金を得る、
    使うという総合的な金融教育の中での位置付け”ということがあります。実際の生活感覚の中で、寄付を
    どう入れるかということがポイントになってくると考えています。
     「寄付の教室」は、今後もっと拡大して、いろんなところでやりたいと思いますので、どうぞよろしく
    お願いします。

以上の講演後、パネルダイアローグ:「日本で寄付教育を進めるために」にて寄付教育に関する活発な意見交換が
行われ、時間通りに閉会した。