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【メディア掲載】30万円どこに寄付する? 高校生が授業、悩んで決めた

2017.01.10

メディア掲載

1/9付け朝日新聞に、当協会が高校生向けの寄付教育として、東京学芸大学付属国際中等教育学校(東京都練馬区)と協力して行ったプログラムについて取り上げていただきました。

 

http://digital.asahi.com/articles/ASJDV03FKJDTULFA00N.html

 

現金30万円を、地域の課題に取り組む団体に寄付する。どこに贈るかは生徒たち自身が取材し、話し合って決める。そんな「日本初」のリアル寄付教育の授業が昨年秋から冬にかけ、東京都内であった。議論を重ね、悩んだ末に出した結論は――。

 

この寄付教育プログラムは、米国の「ラーニング・バイ・ギビング財団」が大学向けに提供している。財団の代表、アレックス・バフェット氏は著名投資家ウォーレン・バフェット氏の親族にあたる。

 

プログラムの特色は、寄付先を学生に選ばせることによって「社会的投資」を体験してもらう点。授業を通じ、学生は非営利組織を評価する目を養い、効果的な寄付のあり方を学ぶ。リアルなお金を実在する団体に渡すことが、学生を真剣にさせるという。

 

今回、日本でこのプログラムに初めて取り組んだのは、東京学芸大学付属国際中等教育学校(東京都練馬区)に通う6年生(高校3年生)12人。同校の藤木正史教諭(37)がNPO法人日本ファンドレイジング協会と協力し、高校生向けにアレンジ。通年の選択授業である「国際協力と社会貢献」の2、3学期を使って取り組んだ。30万円は協会が提供した。

 

寄付先は、あらかじめ「子ども」「医療」「動物」の3分野から3団体ずつリストアップされた、計9団体から選ぶ。生徒12人が3チームに分かれ、各チームが1分野を担当。まず3分野からそれぞれ1団体に絞る。次に、残った3団体について全員で検討し、ひとつに決定する。

 

授業は一コマ50分で週1、2回のぺースで進んだ。まず生徒たちは、寄付やボランティアをする意味を、自らの体験を振り返りながら考えた。日本の寄付の現状やNPOが果たしている役割を学んだ後、寄付先を選ぶのに必要な評価基準づくりに取りかかった。

 

団体側の自己評価も聞こうと、生徒たち自身で連絡を取り、アンケートを各団体にメールで送った。設問は30万円の使い道やこれまでの実績、今後3年間の目標など多岐に及び、どの団体からも記入欄いっぱいに書かれた回答が戻ってきた。団体の施設の見学に出向いたグループもあった。

 

「高校生にとって30万円は大金。自分たちの判断で大きなお金が動く責任感を強く実感しています」

 

12月3日、東京都内であった「寄付フォーラム」で授業での取り組みを紹介した横山彩乃さん(18)は、そう話した。悩んだのはデータや数字に表れない団体の成果や、スタッフの熱意や情熱をどう評価したらいいかという点だ。候補の9団体は規模がバラバラで、規模の違いを評価にどう反映させるかも難しかった。

 

こうした疑問を外部の専門家にぶつけると、「寄付をする側がNPOに何を期待するかを重要視しては」と助言された。30万円の使い道が明確で、いかに団体の役に立てるか。活動に独自性はあるか。何より、その団体や団体の活動にどれだけ共感できるか。高校生という自分たちの立場や目線を重視する評価方針が次第に固まっていった。

 

12月15日。いよいよ寄付先を決める日だ。残っていたのは、「子どもの貧困対策センターあすのば」「難病の子どもとその家族へ夢を」「日本補助犬情報センター」の3団体。30万円の使い道は、「あすのば」がこの春に行う小中学生の合宿キャンプに、「難病」は難病を患う子どもと親の家族旅行の費用、「補助犬」は高校生を対象に、新たにワークショップを開きたいとアンケートに答えていた。

 

「限られた時間ですが、今日決めましょう。答えはみなさんの中にあります」

 

藤木教諭の言葉を合図にクエスチョンタイムが始まった。各人が、自分のグループ以外の生徒に、選んだ団体についての疑問をたずねる。聞かれた側は質問に答え、団体の良い点をPR。議論を深めていく。

 

「あすのば」や「難病」のように、困っている子どもたちを直接支援するか。「補助犬」のように、これまで活動を知らなかった人に知ってもらう試みを応援するか。合宿や旅費の一部では、自分たちの寄付がほかのお金の中で埋もれてしまわないか。いや、自分たちがどうして寄付したいかが大事では。

 

議論が尽きぬまま授業終了のチャイムが鳴り、最後は投票で決めることに。結果は「あすのば」「難病」がともに6票で、まさかの同数。30万円をまとめて1団体に寄付するのがルールだったが、結局、15万円ずつ2団体に渡すことになった。

 

授業を振り返って朴志雨さん(18)は「どの団体もすごくいい活動をされていて優劣をつけるのは難しかったけど、最後は一番自分がグッと来る団体に決めました」。末満樹林さん(18)は「お金の集め方にいろんな方法があると勉強になった。将来、自分が事業をやるときに使ってみたい」と話した。

 

藤木教諭は「生徒たちは将来、寄付を集める側や寄付を必要とする側に回る可能性もある。社会課題と同時にその解決方法を学ぶことで、大学生や社会人になったとき、自分の力で考え、すぐに動き出せるのでは」と今後に期待する。

 

生徒たちは近く、寄付先に決まった2団体に選考結果を直接伝える予定だ。

 

■寄付先の候補となった3分野9団体

〈子ども〉

●認定NPO法人フローレンス

●認定NPO法人日本グッド・トイ委員会

◎公益財団法人子どもの貧困対策センターあすのば

〈医療〉

◎公益社団法人難病の子どもとその家族へ夢を

●公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン

●認定NPO法人シャイン・オン・キッズ

〈動物〉

●NPO法人日本補助犬情報センター

●公益財団法人ヒューマニン財団

●ピースワンコ・ジャパン(認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン)

※◎が最終的な寄付先

 

■高校生が考えたアンケートの質問

①寄付する30万円、どう活用してもらえる?

②(代表者へ)壁や困難にぶつかりながら走り続けるために、大事にしていることは?自分の問題意識をスタッフや支援者とどう共有している?

③(スタッフへ)団体に入ったきっかけ、やりがいを感じる場面、団体の今後の発展にどう貢献したい?

④団体の活動の意義は?

⑤資金集めの際に工夫していることは?

⑥行政・企業・NPOなどと協働、連携しているエピソードは?

⑦これまでの成果と、今後3年間の目標と計画

⑧現在の課題と解決の手段

⑨ボランティアの巻きこみ方や支援者の声を活動に生かした例。継続的に寄付をもらうために工夫していることは?

⑩多くの人に共感してもらうために実施、工夫していることは?

⑪学校を巻き込んだ取り組みはしている?今後はどんな取り組みをしたい?

⑫団体の活動にとって、高校生はどんな存在であってほしい?高校生の具体的な巻きこみ方のアイデアは?

 

■記者のひとこと

現金30万円をどこかひとつに寄付するとしたら、大人でも迷う。自分とは親子ほど歳の離れた高校生たちが、どうやって決めるんだろう。ちゃんと話はまとまるのか。でも彼ら、彼女らは高校生の目線を大事にしつつ、客観的に、慎重に評価しようと努めていました。そんな若者の「本気度」が各団体にも伝わったであろうことは、余白がないほどに詰まったアンケートの回答からうかがえました。最終的に寄付先が二つの団体に落ち着いたことも、自然な結論です。生徒たちは、じゅうぶんに「大人」でした。(佐藤秀男)