投稿日:2015年7月10日

ソーシャルインパクト志向への転換

連載
山元 圭太Yamamoto Keita
認定ファンドレイザー
NPOマネジメントラボ 代表

「世界ファンドレイジング大会@アメリカ」レポート前編・中編に続き、後編では「アメリカにみるソーシャルインパクト志向への転換」を紹介します。
■ 前編:「そこには日本の少し未来がありました」
■ 中編:「NPO向けソリューションプロバイダビジネスの活況」

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IFC会場にて

ソーシャルインパクト志向への転換期にあるアメリカ

前編で紹介をしたAFP本部CEOアンドリューの言葉
「2015年のテーマは『transformation』だ。社会的課題が大きすぎるということを市民が気付き始めている。今までのやり方ではダメなので本当に成果が出るように変革していかないといけない。
という言葉にあるように、今アメリカはソーシャルインパクト志向への転換が求められ、模索している時期にあることが分かります。IFCの会場にあったブックコーナーにも関連する書籍が並び、訪問した現地団体は全てソーシャルインパクトの話をしてくれたことからもアメリカのファンドレイジング界隈全体で「ソーシャルインパクト志向への転換」が大きなテーマになっていることを感じました。
元々、IFCに参加する目的として「アメリカはソーシャルインパクト志向への転換が進んでいる好事例であり、現場でそのエッセンスを学びたい」ということがあったため、アメリカも転換期の最中であることに驚きましたが、そこから多くのエッセンスを学び取ることができました。

後編では「ソーシャルインパクトへの転換」をテーマに学んだことを共有していきたいと思います。

インパクト志向への転換を目指すトップファンドレイザー達の言葉

AFP本部と現地3団体へ見学ツアーに行った際、全ての団体で「ソーシャルインパクト志向への転換の必要性」についての言葉をもらいました。その中でも印象的だった言葉を3つ紹介していきます。

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赤十字ファンドレイジング担当者との会話の様子

今はお金を家族にではなく、公共に残す割合が増えている。NPOが創出した成果の大きさを説明することがうまくなってきたからである。アメリカでは同じ活動テーマで同じ地域で活動する競合団体がたくさんあり、問題にもなっている。だからこそ成果の大きさが差別化に繋がっている。」(赤十字ファンドレイジング担当者より)

インパクト志向にドナーも移行していっている。2008年のリーマン・ショックで、政府の財政が悪化し、税金をつぎ込むことに対して世論が厳しくなった。リーマン・ショックによって各非営利セクターへの補助金が50%も削減された。今までしていたレベルの報告ではなく、そのお金がどこにどれだけ使われて何になっているかまで説明しないといけなくなってきた。助成財団もNPOの組織基盤強化に資金を出すようになってきた。成果を出していかないと市民主権ではなく、中央集権化していくことになる。真の民主主義からは遠ざかる。」(AFP本部CEOアンドリュー氏より)

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AARPファンドレイジングチームとの記念写真

私たちは今、インパクト志向にシフトしている。リーマン・ショックがきっかけでインパクト志向が高まった。セクターに投下される資源は減ったのに、やらないといけないことは増えたので効果・効率性を追求せざるをえなくなった。長い付き合いだった大口ドナーにも「成果が見えないと寄付は出せない」と言われた。2年前から組織内のプロセスを変えた。パイロットプロジェクトを立ち上げて、指標設定をしてトライアルをしている。それらを検証した後にその成果を材料にして資金調達をして正式リリースする。金額が大きくなるほどドナーからの成果に対する追求が厳しくなっている。とくに新規のドナーについてはその傾向が顕著。」(AARPファンドレイジングチームより)

いかがでしょうか?
特にドナーがインパクト思考へ変化することによって、団体もインパクト思考へ変わらざるを得ないという状況が見て取れるのではないかと思っています。上記以外にも、「実際にインパクトマネジメントを実施するにあたってビジネスバックグラウンドのある人が入ったか入らなかったかが成功の鍵であった」というコメントもありました。

アメリカに見るソーシャルインパクト志向への転換ステップ

様々な団体のコメントをまとめると、アメリカでのソーシャルインパクト志向への転換ステップが見えてきました。それが以下の4つのステップです。

1)経済危機(共通の危機感)
2)大口ドナーの意識変化(個人・法人・行政・財団)
3)インパクト志向の経営人材の加入
4)インパクトマネジメントの実践

アメリカではリーマン・ショックという出来事を機会に、個人の大口ドナーや法人、行政、財団のお金の流れがより厳しくなりました。そのことによって、成果が他団体との差別化ポイントとなり、継続的に寄付をもらうためには成果を可視化し、伝えることが重要になってきました。そこでインパクトマネジメントという考え方が必要になってきます。その際、ビジネスバックグラウンドをもつ経営人材が加入している団体はインパクトマネジメントを実践できてソーシャルインパクト志向の団体へと転換している、というステップがあるようです。
このように見てみると、アメリカのソーシャルインパクト志向への転換はいわば「外圧」により推し進められてきたと言えます。しかし、日本ではリーマン・ショックのような明確な外圧がなくとも、自分たちの力で変わっていけるのではないかと思います。アメリカのエッセンスを参考にしながらも、日本なりのインパクトマネジメントを皆さんと一緒に作っていければ嬉しいなと思います。

終わりに

今回、多くの方のご支援でIFCに参加することができ、本当によかったと思っています。アメリカのノウハウを得られたことももちろんですが、相対的に日本を見ることで「日本で実現するためにはどうしたらよいのだろう?」「日本の良さはなんだろう?」と考えることができました。来年は日本から多くの方が参加することで、日本のファンドレイジングレベルをあげること、アメリカでの日本のプレゼンスをあげることができればよいなと思います。ぜひ来年は皆さんと一緒にアメリカに行ければ嬉しいです。

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Profileこの記事を書いた人

山元 圭太 Yamamoto Keita

認定ファンドレイザー
NPOマネジメントラボ 代表

NPOマネジメントラボ 代表/認定講師/認定ファンドレイザー

1982年滋賀県生まれ 同志社大学商学部卒。卒業後、経営コンサルティングファームで経営コンサルタントとして、5年間勤務の後、2009年4月にかものはしプロジェクトに入職。日本部門の事業全般(ファンドレイジング・広報・経営管理)の統括を担当した。現在は、NPOマネジメントラボ代表として、「本当に社会を変えようとするチャンジメーカーの『想い』を『カタチ』にするお手伝い」をするために、キャパシティ・ビルディング支援や講演/セミナー、コーディネートを行っている。専門分野は、ファンドレイジング、ボランティアマネジメント、組織基盤強化、NPO経営戦略立案など。2015年6月より日本ファンドレイジング協会理事。

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