無料 投稿日:2018年2月21日

2018年、日本のコレクティブインパクトに必要なこととは? No.2 コミュニティ・地域住民をリーダーシップに巻き込む カナダの取り組みから学んだこと

松田 典子Noriko Matsuda
日本ファンドレイジング協会 社会的インパクトセンター プログラム・ディレクター

前回のジャーナルではコミュニティメンバーと共に作るコレクティブインパクト実践やリーダーシップ育成を行うTamarack Instituteのカンファレンスの様子についてお伝えしました。今回はカンファレンスの体験をもう少し掘り下げ、日本での展開可能性と課題についてレポートします。

同じ釜の飯を食べる感覚!?

カンファレンスを通して強く感じたことは、コレクティブインパクトのイニシアチブにおいては、社会問題に強い意識を持つ投資家や財団、行政、企業、非営利組織団体や、ソーシャルビジネスにかかわるスタッフ、そして支援を必要としているコミュニティメンバーたちが、建設的なダイアログを重ね、お互いが何を期待し、代わりに自分(自団体)がどのように貢献することができるかを現実性と希望をもって共有するということが、大事だということです。お互いが必要とされている実感を持ち、かかわることに責任を持つ。異なる視点に価値を見出し、ステータスや性別、所属等を超えて学びあい、共通のビジョンのために前進する。「CEOは時間が無い」「行政は融通が利かない」「当事者は要求が多い」-そのようなステレオタイプな考え方を超えて、同じ釜の飯を食べる感覚にも近いかもしれません。コレクティブインパクトのイニシアチブはそんな社会実験の結果であり、ある意味失敗や成功といった運命をともにする覚悟が必要です。システムを変えるための新しい連帯は、ただ動員されたリソースやプレイヤーがそのテーブルにつき、誰かからの要求に答えたり、物言いをしている状況では機能しません。mobilize(動員する)だけでなく、engage(従事する)ことが必要です。(ちなみに、その釜の飯は誰かから提供されるものでもなく、その釜の飯を一緒に作るプロセスが必要で、一緒にいる人たちがその体験を最大化できるよう、お互いがどんなものが好きで、どんな栄養制限があるかなどを知らなければなりません。”動員”されただけでは生み出せない価値が、ここにあります。)

日本での展開可能性と課題

日本の社会保障サービスは従来、サービスの均てん化という言葉にも表されるように、基本的には行政主導で行われており、アメリカのようにボトムアップのアドボカシーによってコミュニティメンバーが権利を勝ち取るというような例は稀でした。しかし、一般化されることで制度の網目から零れ落ちる人々も存在し、行政の手の行き届かないエリアを支援してきた非営利組織や福祉・ボランティア団体が日本にも数多く存在し、彼らを支援し続けてきたコミュニティ財団や中間支援組織があります。今後、彼らがより効果的にプレイヤーをつなげ、行政とともに総合的に地域住民のニーズや問題を把握し、システムを変えながら問題解決を図る地域特化型のモデルは、日本でも発展していく可能性があります。北米と日本の市民力の違いや、コミュニティ財団の歴史やキャパシティの違いも存在しますが、地域の実情をよく理解した団体による変化を起こすための丁寧なイニシアチブビルディングや関係性構築が、コミュニティスケールの変化をもたらす第一歩だと考えられます。

コレクティブインパクトは、レシピでもなければ、モデルでもなく、実践そのものであり、その地域やコミュニティ、問題文脈において、何が最良かを決めなくてはなりません。しかし、ゆえに自由で、クリエイティブな取り組みが可能で、多くのイノベーションの可能性が潜んでいると考えられます。Tamarack Instituteのリズ・ウィーバーは、コレクティブインパクトをはじめるにあたり一番大切なことは、「そのコミュニティが、その問題解決に取り組むための準備ができているか」だと話していました。新しいものをつくるよりも、既存のリソースを生かすことを推奨しているコレクティブインパクトの実践では、ターゲットエリアを広く浅い範囲か、深く狭い範囲にするかは、その地域の住民とそこに関わるプレイヤーがリソースや準備度を把握し、その上で判断されるものです。

一方、現在日本においてコレクティブインパクトを推進していくにあたり決定的に足りていないものがあります。ひとつは、インパクトを必要としている地域やコミュニティ、人口層を把握するための包括的な定量・定性データです。これがなければ緻密なスケーリングも評価も困難です。現在アクセスができるものを最大限利用することはもちろんのこと、セクター全体としてこの問題についての意識化とアドボカシーが必要です。そして、前述したコレクティブインパクトマインドを持ち、全国のコミュニティや地域で活躍するカタリストが必要です。今後も引き続き、日本の事業の動向や、参考になる諸外国の取り組み等に着目しながら、日本の複雑な社会問題をシステムレベルで解決するための実践知の集積と、日本の文脈に合ったコレクティブインパクトの基盤強化を支援していきます。

ーーーーーー

「社会変革を生み出す「コレクティブ・インパクト」とは?~日本・海外の実践事例からコレクティブ・インパクトを学ぶ~」
2018年3月18日14:00~15:20
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松田 典子 Noriko Matsuda

日本ファンドレイジング協会 社会的インパクトセンター プログラム・ディレクター

大学卒業後、金融機関で不動産ファンド業務に従事。働きながら、NPO法人Living in Peaceにて、国内の貧困に取り組む教育プロジェクトを立ち上げ、児童養護施設の子どもたちの環境改善のための寄付プログラム「Chance Maker」や、児童養護施設の子どもたち向けのスタディツアーを作る。現在は、日本ファンドレイジング協会社会インパクトセンタープログラムディレクターとして、社会的インパクト評価に関する業務に従事。

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