無料 投稿日:2018年2月21日

2018年、日本のコレクティブインパクトに必要なこととは? No.1 コミュニティ・地域住民をリーダーシップに巻き込む カナダの取り組みから学んだこと

松田 典子Noriko Matsuda
日本ファンドレイジング協会 社会的インパクトセンター プログラム・ディレクター

2017年、東京都文京区で始まったこども宅食事業をはじめ、日本のソーシャルセクターでも耳にする機会が増えてきたコレクティブインパクト。2018年も引き続き関心が集まることが予想される中で、今回と次回のジャーナルを通して、これまでに北米で起こった動向を振り返り、昨年参加したコミュニティ・地域住民をリーダーシップに巻き込むコレクティブインパクトに関するカナダのカンファレンスからの学びについてレポートします。

コレクティブインパクト実践に見られる変化

コレクティブインパクトが提唱され始めた2011年から2017年までの間、その界隈や実践者コミュニティの中で起こった1つの大きな変化があります。それは、コミュニティのメンバーや受益者をクライエントやお客様として捉え、彼らのために何かを作るという視点から、彼らと一緒に変える、取り組むという視点への重要性が指摘され始めたということです。

北米の都市においては、そもそも資金提供側がより大きなインパクトを起こすためにどうすればいいかという文脈の中で発展してきたものがコレクティブインパクトの実践であり、コミュニティ財団や、地元の企業やフィランソロピストたちが、コミュニティの問題を解決するためにプログラムや事業を行う自治体や非営利組織に長年出資をしてきた歴史があります。2000年代に起きた金融危機の影響に加え、構造的な人種問題、都市部の人口の多様化や産業構造の変化、複雑に絡んだ貧困問題に対し、単(短)年のプログラムへの財政的支援だけでは、問題の根本的な解決を行うことが不可能であり、より効率的かつ効果的な手法を模索し始めた延長戦上に、コレクティブインパクトという実践モデルが発生していきました。これは、その後コレクティブインパクトの理想的なイニシアチブに共通して見られる特徴として、CEO レベルのリーダーたち(資金やその他のリソースを提供するにあたり、重要な意思決定をできる人)がセクターを超えて集まっていたという現象にも繋がっていきます。

しかし、当時は画期的とされたイニシアチブの構造も、その後「実際の地域の実情に則していない」、「コミュニティメンバーや地域住民が置き去りになっている」という指摘がされるようになりました。そして、2014年に発表されたEssential Mindset Shifts for Collective Impactの中で、従来のコレクティブ・インパクトの概念の中で変化を必要とする3つの重要項目のひとつとして、また2016年に発表されたCollective Impact 3.0の中でも、CEO レベルのリーダーたちだけでは問題が解決が不可能で、コミュニティや地域のメンバーを巻き込むことの重要性が強調されてきています。コミュニティ・オーガナイズの先駆的実践者として有名なマーシャル・ガンツは、constituency(日本語訳では有権者、支援者、後援者)はラテン語のcon stareから来ていて、意味はstand together (一緒に立ち向かう)、clientのラテン語の語源はinclinare、意味はlean upon, depend upon (頼る)であることを述べており、地域やコミュニティの課題を解決するコレクティブインパクトにおいて、ステークホルダーをどう位置づけるかという意味で、興味深い示唆を与えてくれています。

どのようにコミュニティ中心のコレクティブインパクトを起こすか-Tamarackからの学び

このコミュニティメンバーと共に作るコレクティブインパクトに焦点を当て、トレーニングやワークショップ、リーダーの育成を行っているのが、カナダのTamarack Instituteです。2016年9月にその団体が主催したCommunity Change Instituteというカンファレンスに、その方法を学ぶために参加してきました。

 

カンファレンスで特に印象的だったことは、変化を起こすためのラーニング・コミュニティを醸成するという意味で、そのカンファレンスの現場でとても丁寧なコミュニティビルディングのプロセスを体験したことです。世界中から集まった年齢も、国籍も、性別も、所属機関も異なるメンバーが、社会問題の解決に向けて変化を起こすために、ダイアログを始めます。まずお互いを知るところから始まり、「あなたがこのカンファレンスにきていることが、どれほど重要な意味を持つのか」という質問を皮切りに、お互いについて訊いたり、聴いたりしながら、5日間関係性を構築していきます。毎日行われる基調講演や、ツアー、ワークショップ等を通して感じたこと、学んだこと、疑問に思ったことなどを、Tamarack Instituteが開発したツールを利用しながらグループで共有します。どんなバックグラウンドであっても、そこにいて安全だと思えること、尊重されていると感じられること、存在を認められていることを実感し、そこから信頼関係が醸成されて、自分がどう貢献できるか、どう価値を提供できるかを話し合うという意味では、コレクティブインパクトのイニシアチブグループに必要とされるチームビルディングのプロセスを疑似体験をしたとも言えるのではないかと感じました。

次回は、その詳細と日本でどのような展開可能性や課題についてお伝えします。

ーーーーーー

「社会変革を生み出す「コレクティブ・インパクト」とは?~日本・海外の実践事例からコレクティブ・インパクトを学ぶ~」
2018年3月18日14:00~15:20
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【ファンドレイジング・日本2018】
2018年3月17日、18日開催 於 駒澤大学
『共感型ブレイクスルー』
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松田 典子 Noriko Matsuda

日本ファンドレイジング協会 社会的インパクトセンター プログラム・ディレクター

大学卒業後、金融機関で不動産ファンド業務に従事。働きながら、NPO法人Living in Peaceにて、国内の貧困に取り組む教育プロジェクトを立ち上げ、児童養護施設の子どもたちの環境改善のための寄付プログラム「Chance Maker」や、児童養護施設の子どもたち向けのスタディツアーを作る。現在は、日本ファンドレイジング協会社会インパクトセンタープログラムディレクターとして、社会的インパクト評価に関する業務に従事。

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