無料 投稿日:2018年2月1日

日本版社会的証券取引所の可能性について ~社会的投資が当たり前の時代へ~

松田 典子Noriko Matsuda
准認定ファンドレイザー
日本ファンドレイジング協会 社会的インパクトセンター プログラム・ディレクター

11月17日(金)~19日(日)、国際フォーラムで開催された「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2017」にて、「フィンテック×社会的投資の衝撃」というセッションが持たれた。ライフイズテック株式会社 代表取締役CEO水野氏、日本取引所グループ 総合企画部 新規事業推進室 調査役須藤氏、株式会社デジサーチアンドアドバタイジング 代表取締役黒越氏の3人のスピーカーと、ファシリテーターの認定NPO法人日本ファンドレイジング協会 鴨崎の4人が登壇し、急激な進化をとげるフィンテック(ビットコイン、ブロックチェーン、クラウドファンディングなど)は、NPOやソーシャルビジネスが「共感」をベースに上場する未来を実現し、社会的投資に革命をもたらすのかというテーマで議論が進められた。

まずは、ライフイズテック株式会社 代表取締役CEO水野氏より事業紹介の後、「共感」をベースに上場する「ソーシャルIPO」の展望について発表があった。短期の利益指標だけでなく、世の中に生み出した“インパクト”を元に、より最適なお金と人が集まる仕組みを作ることを目指している。

次に、日本取引所グループ 総合企画部 新規事業推進室 調査役須藤氏より、既にある社会的証券取引所の代表的事例として、イギリスのSocial Stock Exchange(SSX)と、カナダのSocial Venture Connexion(SVX)について紹介があった。イギリスのSSXについては、伝統的な証券取引所の上場基準を満たす企業の中で、社会性の高いものを区別するというディレクトリ型取引所で、実際の取引は伝統的な証券取引所が担っている。一方で、カナダのSVXについては、投資家と事業者を相対でマッチングする投資家紹介型の社会的証券取引所となるが、流通市場のないクローズドな取引所となっている。

最後に、株式会社デジサーチアンドアドバタイジング 代表取締役黒越氏より、情報の非対称性が大きいために生じている「お金を持っている人の権利が強すぎる」という問題意識が提示され、権利の少ないお金集めや、お金が出す側がリスクを許容する可能性について、説明があった。

それぞれの発表より、①お金の出し手と受け手の適格性、②情報の非対称性、③発行市場と流通市場、④制度設計について、の4つの論点が挙げられ、それぞれについて事業者・取引所・投資家という立場から意見が出されていた。以下より、それぞれの論点について説明したい。

①お金の出し手と受け手の適格性について
証券取引所では通常、上場する事業者側に厳しい審査基準が設けられているのみで、投資家側には審査が設けられていない。しかし社会的証券取引所の場合、投資家側にも適格性を求める必要があるのではないだろうか。カナダのSVXでは投資家にも審査があり、その詳細な内容については明らかにされていないが、短期的な利益ではなく、長期的な社会的インパクトを重視するため、議決権の行使不可や長期保有が前提となっている。

②情報の非対称性について
情報の非対称性が大きいために、短期的な利益を求める投資家の権利が強くなっている現状に対し、利益指標に限らず、その事業が生み出した社会的なインパクトを明確にし、より最適なお金と人が集まる仕組みを作り、インパクトとプロフィットの両方を重視する会社が後に続くことが求められている。

③発行市場と流通市場について
社会的証券取引所について検討する場合、資金を集める発行市場と、それを流通させる市場の二つについて検討する必要があるだろう。社会的証券取引所として知られている、イギリスのSSXやカナダのSVXについても、実際のところ、この二つの機能を持ち合わせているわけではないのが現状だ。

④制度設計について
ブロックチェーン上に生成されたトークンを一般に販売して資金を調達する資金調達手段であるICOや、株券をギフトカードのように送れるフィンテック・サービスなど、これまでなかった資金調達の方法が紹介された。取引コストを下げたり、日常生活に金融が入り込んでいくような仕組みの検討も必要であろう。

以上のような論点を整理することで、日本型社会的証券取引所の可能性について検討すべき項目が明確になったのではないだろうか。今後は、日本型社会的証券取引所の実現に向けて、実際のアクションに繋げていくことが求められている。

日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2017で開催されたセッションの第二ラウンドとして、2018年3月17日・18日のファンドレイジング・日本2018にて、講師に多摩大学大学院 特任教授堀内氏を加えて、「NPO、ソーシャルビジネスが上場する未来~激論!業界トップランナーが語る社会的投資市場とは?~」が開催される。今回の議論を元に、どのようなアクションが実際に取られたのか、その進化した姿に期待が高まるセッションとなるだろう。

「NPO、ソーシャルビジネスが上場する未来~激論!業界トップランナーが語る社会的投資市場とは?~」
2018年3月18日9:30~10:50
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【ファンドレイジング・日本2018】
2018年3月17日、18日開催 於 駒澤大学
『共感型ブレイクスルー』
▼詳細、お申込はウェブサイトを!http://jfra.jp/frj/

 

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松田 典子 Noriko Matsuda

准認定ファンドレイザー
日本ファンドレイジング協会 社会的インパクトセンター プログラム・ディレクター

大学卒業後、金融機関で不動産ファンド業務に従事。働きながら、NPO法人Living in Peaceにて、国内の貧困に取り組む教育プロジェクトを立ち上げ、児童養護施設の子どもたちの環境改善のための寄付プログラム「Chance Maker」や、児童養護施設の子どもたち向けのスタディツアーを作る。現在は、日本ファンドレイジング協会社会インパクトセンタープログラムディレクターとして、社会的インパクト評価に関する業務に従事。

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