無料 投稿日:2017年12月21日

インパクト投資

松田 典子Noriko Matsuda
准認定ファンドレイザー
日本ファンドレイジング協会 社会的インパクトセンター プログラム・ディレクター

今年に入って、「インパクト投資」に関するニュースをよく耳にするようになったのではないだろうか。
2017年7月に、神戸市と三井住友銀行、社会的投資推進財団が、医療費抑制に向けた官民連携の新たな取り組みを始めると発表。これは、個人投資家から集めた資金などを原資に行政サービスを行い、相応の効果が現れれば投資家に還元する「ソーシャル・インパクト・ボンド」と呼ばれる手法で、国内初の案件となった。
また、2017年10月に、第一生命保険株式会社が運用収益の獲得と社会的インパクトの創出の両立を意図した投資手法である「インパクト投資」を開始したことを発表し、カンボジアやミャンマーなどでマイクロファイナンス事業を展開する五常・アンド・カンパニー(東京・渋谷)に4億円、新世代バイオ素材を開発するSpiber(スパイバー:山形・鶴岡市)に10億円を投資している。

インパクト投資とは、経済的なリターンと社会的なリターンとの両立を意図した投資手法のことで、世界的には急速に伸びているが、日本の機関投資家による非上場企業への投資事例はまだ少ない。しかし、G8社会的インパクト投資タスクフォース日本国内諮問委員会が2016年9月に発表した「日本における社会的インパクト投資の現状2016」(1) によると、日本における社会的インパクト投資市場の規模は、2014年の約170億円から2016年の約337億円へと約2倍に拡大しており、今後市場としてさらに拡大する可能性を持っている。

そうした動きに先駆けて、インパクト投資を実践するのが新生企業投資だ。インパクト投資チームを2017年1月に発足し、「働き方改革」や「ワークライフバランス」と言ったキーワードを軸に、「少子化」「人口減少」といった社会的課題にフォーカス。特に、子育て・仕事の両立環境の整備と改善の分野で社会的インパクトにつながる「子育て関連事業」に対して、成長をサポートしている。これまで、3件の投資実績があり、1案件あたり平均50百万円で、3年間で500百万円程度の投資を予定している。

2017年1月に発足した新生企業投資のインパクト投資チーム立ち上げメンバーの一人である同社シニアディレクター高塚清佳さんに、チーム発足の経緯や、なぜ「子育て関連事業」を投資対象と選んだのかを伺った。

『子育て関連業界は、創業者の熱意によって起業した事業会社が多い中、比較的フラグメントな業界となっており、新生企業投資の培ってきたノウハウ活用による伸びしろが大きくなる可能性があると考えた。また、根底に、メンバー自身も子育てと仕事を両立する身であり、子育て関連サービスに対し、需要は多様であるのに供給が不足しているもしくは画一的であると感じていたことも大きい。』と話す。『そもそも投資業界に身を置く多くの方々は、リスクマネーをいかに社会的意義のある投資に振り向けていくかを考えていらっしゃると常々感じている。新生企業投資が当時属していた新生銀行子会社グループが2015年にポーター賞(2)を受賞したことをきっかけに、「経済的リターンを追う姿勢を崩すことなく、社会的意義の高い投資を目指すことのできる新規の取組み」につき、同僚と共にグループ内で付議したところ、最終的に経営層の理解を得ることができた。』

実際に、どのように「社会的リターン」を捉え、「経済的なリターン」とのバランスを取っているのだろうか。
『投資検討時に、ロジックモデルの作成、指標や測定方法のイメージすり合わせをインパクト投資チーム内で実施している。子育て分野は、指標の設定や測定が難しいと感じているが、投資後も、設定した指標を「経済的なリターン」と合わせて追っていきたいと考えている。ただし、現時点では、社会的リターンの測定方法等が、投資委員会による投資の意思決定を左右することはない。
「経済的リターン」としては、着実な需要を背景に、ミドルリスク・ミドルリターンのレンジを狙っている。ポートフォリオとしての「経済的リターン」を前提に、「社会的リターン」を加味する形で、全体のバランスを取りたいと考えている。』

最後に今後、新生企業投資としてインパクト投資にどのように取り組み、マーケット全体に対しどのような展望を持っているか、伺った。
『現在は100%新生銀行からの出資でファンドを組成している。投資先ごとに、適切と思われるパートナーと協働しながら、3年間着実にトラックレコードを積めればと考えている。その上で、2号ファンド組成も視野に、継続的な取組みを目指したい。
またマーケット全体としても、第一生命さまを始め、金融機関の参入がどんどん進み市場が大きく伸びることを期待している。弊社の小さな取組も、その一助となれればと願っている。休眠預金活用についても、こうした流れの後押しになるのでは。』

(1) G8社会的インパクト投資タスクフォース日本国内諮問委員会「日本における社会的インパクト投資の現状2016」 http://impactinvestment.jp/images/sii2016.pdf
(2) 製品、プロセス、経営手腕においてイノベーションを起こし、これを土台として独自性がある戦略を実行し、その結果として業界において高い収益性を達成・維持している企業を表彰するため、2001年7月に創設された。

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松田 典子 Noriko Matsuda

准認定ファンドレイザー
日本ファンドレイジング協会 社会的インパクトセンター プログラム・ディレクター

大学卒業後、金融機関で不動産ファンド業務に従事。働きながら、NPO法人Living in Peaceにて、国内の貧困に取り組む教育プロジェクトを立ち上げ、児童養護施設の子どもたちの環境改善のための寄付プログラム「Chance Maker」や、児童養護施設の子どもたち向けのスタディツアーを作る。現在は、日本ファンドレイジング協会社会インパクトセンタープログラムディレクターとして、社会的インパクト評価に関する業務に従事。

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