無料 投稿日:2017年10月16日

「もやっ」とした理由でやめていったアルバイトのスタッフがきっかけではじまった社会的事業で寄付3億円超。「バリューブックス」が目指すこととは?

三島 理恵Rie Mishima
コミュニケーション・ディレクター

バリューブックスは、本やDVDなどのリユースを活用し、その買取金額をNPOなどを通じて社会課題解決のために役立てられるプログラム「チャリボン」を提供されているほか、様々な社会的事業を行っています。
今回、10周年を迎えられ、特別にインタビューをさせていただきました。

ビジョンなんてなかった

今だからこそ言えるのですが、大学を卒業するころ、「就職せずに、食べていくにはどうしたらいいのか?」を本気で考えていたんです。学生の頃、仲が良かった友人たちが自分のお店をもったり美容師になっていたりする中で、当然ながらお店を持つ友人は貯金をしていたし、美容師になった友人は免許を持っていました。僕には、お金もスキルも経験もないという現実に、「やばい・・・」とその状況に直面してはじめて、思うようになりました。

そこで、試しに、中古本を売ってみたら、買ってくれる人がいた。それが本当に嬉しかった。単に売れてお金が入ってくる以上に、社会との接点を持ってくれる人がいるということ、社会とのつながりを感じて、言葉に表せない喜びがありました。それからは嬉しくて、毎日中古本を売り続けました。

それがバリューブックスの起点で、今でも、その瞬間が喜びのピークです。

その後、少しずつスタッフが増えてきたころ、ある壁にぶち当たりました。
創業メンバーは、仲間感と単純にビジネスが成長していくことで充実感をえることができたのですが、アルバイトのスタッフがやめた理由が新たなターニングポイントでした。

ある日、アルバイトスタッフが「自分が何の役になっているのかわからないから辞めたい」と言ってきたんです。それまで、退職していくスタッフは、家族の転勤だとかやむを得ない事情があったのですが、そのスタッフだけ、「もやっ」とした理由を言ってきたんです。今思うと、スタッフが辞めていくことは、当然と言われればそうなんですけど、当時は、悩みました。

人が増えたり、分業化されていく中で、特にインターネットでの仕事は、お客さんの顔が見えないから、社会との接点が見えづらくなってくるので、やりがいを感じにくくなってきます。その中で、仕事を通じて、社会に役に立っているという実感をもってもらうきっかけになるのではないかと、リサイクル本を施設に届ける「ブックギフト」を始めることにしました。

例えばその子のおばあちゃんの行っている病院で、バリューブックスの本がおいてあったら、もしかするとおばあちゃんから、褒められるかもしれない。スタッフは、僕のために働いているわけではないので、僕からありがとう、と言われるのではなく、自分の身近な人から褒められると、きっと嬉しいんじゃないかなと、そんなことを思いながら、社会的な事業もスタートすることにしました。

ただ、いい事業ながら、忙しくなると、優先順位が低くなってきました。それではいけないと持続可能なプロジェクトにしたいと考えたのがチャリボンです。

持続可能な社会貢献事業を行いたい、その思いで生まれたのが「チャリボン」

今では90団体、76大学、6自治体に広がっているチャリボン。12万人から、1400万冊の古本寄付が届き、寄付額も3億円を超えました。

最初、このサービスを導入してくださったのは、育て上げネットと東京大学でした。「ブックギフト」を持続可能な事業にしようと考えていたとき、育て上げネットの工藤理事長との出会いで、「キフボン」をスタートさせることができました。「チャリボン」がスタートする前の古本寄付の事業です。そのプロジェクトが日本経済新聞に取り上げられ、たまたまそれをご覧になられた東京大学の担当者の方からご連絡をいただき、教授などが退任などされるとき、大量の本の処理に困っていると相談を持ち掛けられ、東京大学でも古本寄付をスタートさせることができました。

当時、まだまだ小さい会社で、仲間と一軒家に住みながら仕事をしていたので、大学の方が事務所に来られるときは大慌てで準備したほどでしたが、若手の担当の方もとても熱心で、寄付見込み者を増やすことにKPIを置き、仕組みづくりを一緒にしてもらうことができました。このプロジェクトの立ち上げを、他の組織にも使ってもらいたいと思っている育て上げネットと、大学の課題や導入のしやすさを考えながら制度を考えてくださった東京大学とできたのは、ベストだったと思っています。

*チャリボンについては、こちらの記事をご覧ください。
小さい会社が考えた継続しやすい社会貢献プログラム ~「古本」を介して、社会と人とのつながりを生み出す仕組み「チャリボン」
http://jfra.jp/fundraisingjournal/624/

日本および世界中の人々が本を自由に読み、学び、楽しむ環境を整える

【日本および世界中の人々が本を自由に読み、学び、楽しむ環境を整える】というバリューブックスのミッションを、この10周年を機に考えなおしました。
正直、成長産業ではないこの業界を衰退産業にしていくのか、成熟産業にしていくか、これは大きな違いです。私たちは、関係性の質をあげていくことで、気持ちの再構築をしていきたいと思っています。その思いの中で、10周年を記念して、今年1年かけて、この10年間で見つけてきた課題を解決するための10の取り組みを発表していくことにしました。

ビジネスとしてバリューブックスを成長させる中で、社会への貢献もしたいという強い思いがありました。ただ、日々、その思いのせめぎあいでもあったのも正直なところです。ここ2-3年は売り上げも順調だったのですが、見て見ぬ振りができないことが増えてきたという感覚があります。今回10の取り組みとして発表する、それぞれの課題にきちんと向き合って注力するために、無理して売上を伸ばさない「立ち止まる宣言」もしました。https://www.valuebooks.jp/vb10th

インターネットも広がり、どこにいても手軽に本を買ってもらう環境がある一方で、インターネットができない人は本を買うことが難しくなっている現実があります。実は1/5の自治体で書店がないと言われる中で、インターネットにも書店にもアクセスできない人は、本と出会うことも難しくなってきています。そんな課題を解決するために、「ブックバス」プロジェクトをスタートさせました。これは、本をバスに詰め込み、地域やイベントに出かけていき、本を手に取ってもらう機会を届けていくプロジェクトです。資金は、クラウドファンディングで集め、こういった課題を知ってもらいたい、多くの方に参加してもらいたいという思いで始めました。偶然ブックバスで出会う本との出会いを全国に届けていきたいと、そんな思いを支援者と共有できたことが思っている以上に力になっています。

より多くの協力で、よい循環をつくりたい

読み終えた本を届けるのは、ブックバスや古本ブックカフェ「NABO(ネイボ)」などの運営もしているバリューブックスがいいな、そんな風にこの先思ってもらえるようになりたいなと思います。それは、【日本および世界中の人々が本を自由に読み、学び、楽しむ環境を整える】というビジョンにつながってきます。より多くの人と協力し、企業などと協業することで、よい循環をつくっていきたいなぁという思いです。
みなさんと一緒に、実現していきたいと思っています。

(聞き手:三島理恵)

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Profileこの記事を書いた人

三島 理恵 Rie Mishima

コミュニケーション・ディレクター

大学卒業後、国際協力機構に勤務。2009年6月から設立スタッフとして日本ファンドレイジング協会に入職。学生時代は障害者の家族の家族関係学を研究。現在は広報やボランティアマネージメント業務を担当するコミュニケーション・ディレクター。その他に、企業、NPO、行政、国際機関などと協働で行っている寄付キャンペーン「寄付月間-Giving December-」も事務局として携わっている。

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