投稿日:2016年8月3日

ソーシャル・インパクト・ボンドとは?―世界のマーケットの現状―

連載
下田 聖実Seimi Shimoda
日本ファンドレジング協会 社会的インパクトセンター ディレクター

I. はじめに

社会課題を解決するための「資金調達」の1つの手段として、ソーシャルインベストメント(社会貢献型投資)が世界的に広がりをみせています。そのなかでもソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)*は、日本でも本格的な導入へ向けた動きが加速しています。
*以下、SIBと明記
SIB※1とは、官民連携の社会的投資モデルです。イギリス発のソーシャルセクターへ向けた新たな資金調達の仕組みで一旦投資家からNPOなどの活動資金を調達した後、NPOなどによる社会問題の解決の成果に応じて政府が投資家に配当を支払うモデルのことです。

日本でもSIBの案件組成が2015年からはじまっていますが※2、グローバルでは2010年からSIBの案件が形成されており、60を超える案件が15か国で誕生しています。これら海外のSIBに関する事例報告書を、イギリスのSocial Finance(SIBを開発した民間非営利組織)が発行しました。
本ジャーナルでは、Social Financeが発行した事例報告書の内容を踏まえ、SIBの海外最新動向について3回に渡って紹介していきます。

II. ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)マーケットの現状(全世界)

海外のSIB市場は年々成長しています。第一号のSIB案件が2010年に形成されてから、既に60を超える案件が全世界15か国で形成されたことが報告されています。

図表1 SIB案件数の推移(全世界)

図表1 SIB案件数の推移(全世界)

出典:SOCIAL IMPACT BOND P.11より、筆者作成

全60案件の内22案件は、アウトカム(事業の成果)や、社会的インパクト、また財務リターンに関するパフォーマンスデータが公開されています。更に、データが公開されている22案件中、21案件はポジティブな社会的インパクトを生み出しました。

財務リターンに関するデータを見てみると、全60案件中12案件は投資家への返済がはじまっており、4案件は既に債務全額の返済が完了したそうです。また、2016年までに投融資された総額は$200million以上に上ります。(図表2参照)

図表2 SIB案件の状況別内訳(全世界)

図表2

出展:SOCIAL IMPACT BOND P.6及びP25より、筆者作成

図表1の通り、SIBの案件数は2014年から急激に伸びています。案件数の増加の要因は複数挙げられますが、特にSIBの「仕組み」そのものが社会的課題の解決に非常に有効なものであるため、成功事例が出てから、認知度が向上し各国で採用されるようになったと報告されています。

案件数が増加する一方で、パフォーマンスデータが開示されている案件は全体の約1/3であり、返済を開始している案件数は全体の約1/5です(図表2参照)。このことから、SIBのマーケットはまだ発展途上であることが見て取れます。Social Finance(UK)の出した報告書内でも、SIBのマーケットは初期段階であることが言及されています。今後、SIBマーケットの更なる成長のためには、どのような取り組みが行われるべきなのでしょうか。

次回の記事では、SIBに寄せられる批判や、マーケット成長に必要な取り組みについてご紹介します。

※1 「SIB」に関する詳細は、以下の記事をご覧ください。
・会員限定記事:
「ソーシャル・インパクト・ボンド〜社会的価値評価を活用した「社会を変えるお金」の新しい流れ」(http://jfra.jp/fundraisingjournal/249/

※2 「日本でのSIBパイロット事業」については、以下の記事に詳細が記載されています。
・今だけ無料記事:
「ソーシャル・インパクト・ボンドの本質的な価値とは?」(http://jfra.jp/fundraisingjournal/374/

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Profileこの記事を書いた人

下田 聖実 Seimi Shimoda

日本ファンドレジング協会 社会的インパクトセンター ディレクター

慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科修了。
大学卒業後、教育系NPOのファンドレイジングを担当。
その後、外資金融情報ベンダーや大手監査法人のアナリストとして企業価値向上に向けたESG(環境・社会・ガバナンス)や財務分析業務に従事。他、NPO法人マドレボニータでインターンの経験有。
2016年より、社会的インパクト評価・投資事業のディレクターとして日本ファンドレイジング協会に入職。

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