セミナー内容

3/9(土) 3/10(日)
3/9
(土)

9:00
開場

10:00
| 10:45

開会セレモニー
基調講演 世界を変えるファンドレイザー

ティモシー・セイラーさん(インディアナ大学 ファンドレイジングスクール校長)
11:10

1

夢しか実現しない~共感と感動を生みだす方法

福島正伸さん(株式会社アントレプレナーセンター代表取締役社長)

2

あらためて聞きたい“支援者にとって『わかりやすい仕掛け』づくり”Part3

多田千尋さん(認定NPO法人日本グッド・トイ委員会 理事長/東京おもちゃ美術館 館長)

3

READYFOR?を活用して2か月で800万円以上を集めた秘訣、大公開!

鎌倉幸子さん(公益社団法人シャンティ国際ボランティア会 広報課 課長/准認定ファンドレイザー)
米良はるかさん(READYFOR? 代表)

4

農業のビジネスモデル化を通じたファンドレイジング

曽根原久司さん(NPO法人えがおつなげて 代表理事)

5

オンラインを活用した寄付キャンペーン成功の秘訣

田口由紀絵さん(NPO法人パブリックリソースセンター チーフ・プログラムオフィサー)

6

トキワ荘プロジェクト徹底解説

菊池健さん(NPO法人NEWVERY 理事・事務局長/「トキワ荘プロジェクト」ディレクター)

7

社会を動かすソーシャルメディア

イケダハヤトさん(ウェブマーケティングコンサルタント)/
山田泰久さん(公益財団法人日本財団経営支援グループ 情報コミュニケーションチーム)
12:25

休憩

13:40

8

人を惹き付けるコミュニケーション力UPセミナー

はしながゆたかさん(感動経営コーロク 取締役社長)

9

活動を元気にする“コーズ・リレイテッド・マーケティング”

野村尚克さん(Causebrand Lab. 代表)

10

スポーツマーケティングとファンドレイジング最前線

平野祐司さん(一般社団法人日本トップリーグ連携機構 事務局長)
青木崇行さん(一般社団法人アスリートソサエティ 事務局)

11

人権保護団体のファンドレイジング~Human Rights Watchのガラ・パーティー等のファンドレイジング~

土井香苗さん(Human Rights Watch 東京オフィス 日本代表)

12・公募セッション

寄付から投資へのパラダイム・シフト~ソーシャルインパクトの評価測定がファンドレイジングのパラダイムシフトを生む~

熊沢拓さん(株式会社ソーシャルインパクト・リサーチ 代表パートナー)

13

韓国Beautiful Foundationのチャレンジ

ソ・ギョンウォンさん(Beautiful Foundation Management and Planning Department, Chief Executive Director)
15:20

14・冠講座1

戦略的ファンドレイジング

ティモシー・セイラーさん(インディアナ大学 ファンドレイジングスクール 校長)

15

ソシモ(SOCIMO)論~社会を巻き込む発想を持つためには

山名清隆さん(ソーシャルコンテンツプロデューサー 株式会社SCOP 代表)

16

愛と感動のファンドレイジング

長岡秀貴さん(NPO法人侍学園スクオーラ・今人 代表)

17

Run for Peace~走ったり、歩いたりすることが誰かのためになる

秋田稲美さん(一般財団法人ラン・フォー・ピース協会 代表理事/一般社団法人ドリームマップ普及協会 代表理事)

18

アートNPOのファンドレイジング

塩見有子さん(NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ(AIT/エイト) 理事長)
若林朋子さん
(公益社団法人企業メセナ協議会 シニア・プログラム・オフィサー)

19・公募セッション

オフィスがなくても寄付は集まる!クラウド事務局のファンドレイジング

太田智子さん(NPO法人マドレボニータ ファンドレイジング担当/准認定ファンドレイザー)

20

遺贈寄付を受け入れるには

早坂毅さん(税理士/行政書士/横浜市立大学 講師)
17:00

21

メルマガ×ブログ×ソーシャルメディアで共感と支援の和を拡げる

久米信行さん(久米繊維 代表取締役社長/CANPANセンター理事/社会貢献支援財団 理事)

22

ルーム・トゥ・リード徹底解説

松丸佳穂さん(NPO法人ルーム・トゥ・リード・ジャパン 事務局代表)
ゲーリー・ブレマーマンさん(ルーム・トゥ・リード東京チャプターサポーター Beers for Books オーガナイザー)

23

Social Venture Partnersというチャレンジ~10万円寄付して、プロボノで経営支援をするモデル

岡本拓也さん(Social Venture Partners東京 代表)

24

助成事業を未来に活かす~Peace Winds Japanのピースコーヒー事業の成功事例から学ぶ

山本理夏さん(Peace Winds Japan 緊急対応部長)

25

社会の期待値をたかめるブランディング

小林洋志さん(株式会社博報堂 ライジング・イースト・プロジェクト推進室 室長)
石川えりさん(認定NPO法人難民支援協会 事務局長)

26・公募セッション

ファンドレイジングで効果を上げるためのコツ&多様な資金調達手法のご紹介!

田代修弘さん(NPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ) 会員)

27

ファンドレイジングにデータベースを100%活用するDRM、徹底学習

吉田憲司さん(株式会社ファンドレックス 取締役)
18:45

20:30

 懇親会

 会費/5000円
3/10
(日)

9:00
開場

9:30

28

『もっと伝える! もっと伝わる!』広報ツールの見直し道場

白土謙二さん(株式会社電通 執行役員/日本ファンドレイジング協会 副代表理事)

29・冠講座2

信じて託する人生の寄附

合田政生さん(三井住友トラスト・ホールディングス業務部)
岸本幸子さん(特定非営利活動法人パブリックリソースセンター 事務局長/日本ファンドレイジング協会 理事)
杉山歩さん(特定非営利活動法人りすシステム 代表理事)

30

『スマートフォン時代』対応!ウェブ活用ファンドレイジング

菅文彦さん
(合同会社コーズアクション 代表/日本ファンドレイジング協会 理事)

31

『日本発』のTABLE FOR TWOが生み出すイノベーション~500の企業・団体を巻き込んだ、キャンペーンの成功の理由

小林智子さん(認定NPO法人TABLE FOR TWO International 事業局長)

32

疑似私募債徹底解説

多賀俊二さん
(全国NPOバンク連絡会 常任理事、事務局)/
露木尚文さん
(NPO法人ほっとコミュニティえどがわ 理事)

33

寄付者のための寄付税制を語れるようになろう!

脇坂誠也さん
(認定NPO法人NPO会計税務専門家ネットワーク 理事長/日本ファンドレイジング協会 監事/准認定ファンドレイザー)

34

日本型ファンドレイジング『もったいない寄付』を大解剖

石川圭さん
(NPO法人ハンガー・フリー・ワールド 資金調達担当/准認定ファンドレイザー)
11:10

35

ディズニー流カスタマーサービスの5つのポイント

香取貴信さん
(有限会社香取感動マネジメント 代表取締役)

36

社会変革をおこすNPOのためのマーケティング

長浜洋二さん
(NPOマーケティング・研究所 代表/公益社団法人シャンティ国際ボランティア会 理事)

37

ソーシャルファイナンスを活かしたファンドレイジング~ソーシャルファイナンスの本質・最新事例一挙紹介

木村真樹さん
(コミュニティ・ユース・バンクmomo 代表理事/准認定ファンドレイザー)/
水谷衣里さん(三菱UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社 副主任研究員)

38・冠講座3

Salesforceで社会を変えよう!~非営利団体支援プログラム・サービスのご紹介~

長野りえさん
(セールスフォースドットコム ファンデーション)/
吉田憲司さん
(株式会社ファンドレックス 取締役)/
小堀 悠さん
((特活)NPOサポートセンター 事務局長代行)

39・公募セッション

海外の助成財団から助成金を獲得する5つのポイント

ロシート・セラジーンさん
(デルタインターナショナル NPO/NGOコンサルタント)

40・公募セッション

『大学への法人寄付』企画と実践~大学基金の経験から

安藤晴夫さん
(東京大学 渉外本部 シニアディレクター)
12:25

13:40

休憩

13:40

41

世界を変えるパブリックスピーキング

蔭山洋介さん
(スピーチライター)

42・冠講座4

事業型NPO必見!IT活用でNPOの業務プロセスを徹底効率化・NPOマネジメントのホップ、ステップ、ジャンプ

龍治玲奈さん (日本マイクロソフト株式会社 法務・政策企画統括本部 政策企画本部 渉外・社会貢献課長)
岡本泰志さん (NPO法人日本NPOセンター 総務部門 NPO法人イーパーツ 常務理事・事務局長)
工藤彰子さん (NPO法人「育て上げ」ネット 若年者就労支援課長)
吉田憲司さん (株式会社ファンドレックス 取締役)
鵜尾雅隆さん (日本ファンドレイジング協会 代表理事 / 株式会社ファンドレックス 代表取締役)

43

メディアや人のつながりを活かしたファンドレイジング

鬼丸昌也さん
(NPO法人テラルネッサンス 創設者・理事)

44

ダイレクトメールを活かしたファンドレイジング・三つの成功の鍵

岡 徹さん
(ダイレクトマーケティングジャパン株式会社 代表取締役社長)

45

認定・仮認定NPO取得への実践的ポイント11~3千円寄付×100人で認定に

関口宏聡さん
(NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会 常務理事/プログラム・ディレクター)

46・公募セッション

金融業界全体による社会貢献~過去7年間で3億7,500万円以上を集めたファンドレイジングイベント運営紹介~

堀久美子さん
(UBS証券株式会社 コミュニティ・アフェアーズ&ダイバーシティ エグゼクティブ・ディレクター/FITチャリティ・ラン実行委員会2012 アドバイザー)

47

徹底比較!最も使いやすいNPOの決済システムとは

ファシリテーター:菅文彦さん
(合同会社コーズアクション 代表/日本ファンドレイジング協会 理事)/
事例発表者:ソノリテ、CANPANセンター、J-Payment
15:20

クロージング 日本の寄付文化の革新を目指して

「第4回日本ファンドレイジング大賞発表」

3月9日(土)

10:00 - 10:50
開会セレモニー/基調講演

基調講演

「世界を変えるファンドレイザー」

ティモシー・セイラーさん(インディアナ大学 ファンドレイジングスクール 校長)
USTREAMのjfraチャンネルにて、基調講演をノーカットでご覧いただけます(基調講演の議事録はございません)。
11:10 - 12:25

セッション1

「夢しか実現しない」

~共感と感動を生みだす方法

講師:福島正伸さん(株式会社アントレプレナーセンター代表取締役社長)
司会:清輔夏輝さん(日本ファンドレイジング協会会員)
記録:菅磨里奈

【福島さんの挨拶】

世界中の全ての人たちが夢と勇気と笑顔にあふれる社会をつくろうということで活動しています。そのうちの1つが夢(ドリーム)プラン・プレゼンテーションという大会です。昨年は国内50箇所で開催し、海外でも開催しています。
夢の国東北プロジェクトでは、沿岸地域19ヶ所の町で、新しい夢を実現するスクールを開校し、岩手・宮城・福島で夢の発表会を開催しています。


【夢を叶えるために】

夢を叶えるために必要なのは、自分にないものを集めること。自分に足りないものが補えると夢は実現する。足りないものを集めるには、自分が普段から他人や社会のためにどう生きているか、会う人に対してどう接しているかによって得られるもの、人間関係が全部変わる。普段から、人の夢を応援する生き方をすること。自分の夢を叶えたい人は他人の夢を叶える手伝いをする。これを全員がすると、夢が実現する確率が高くなる。
自分の夢を叶えることは一番難しくて、他人の夢と自分の夢が同時に叶うことが一番簡単。
そういう生き方をしていると信じられないくらいたくさんの応援が集まる。

【プレゼンテーション】

説明・説得では相手に概念がないと伝わらないが体験なら伝わる。できる限り五感に近い伝え方をしていけばいい。私は映像と音楽を入れるようにしている。事業計画書は読みたくさせてから共感した人に後から見せればいい。 (ここで、清輔さんがチャリティーサンタについてのプレゼンテーションを行う。) 夢(ドリーム)プラン・プレゼンテーションでは、その世界がさも今あるかのように伝える。
応援する人達が一番困ることは途中でやめられること。応援したことの意味が全部なくなる。どんな困難や問題があろうが、この人はやり抜いて必ず結果を出す人だという感覚になると応援したくなる。
プレゼンテーションはその人がどんな生き方をしているか見せられる。10分で人生をかけるという想いが相手に伝わる。
10分間のプレゼンの中に自分の人生を表す言葉を入れる。13歳の子どもが感動するレベルにする。子どもが感動するものは全ての人が感動する。できる限り専門用語は使わない。
今そこにいて体験しているかのような世界観をつくる。聞く人は、相手は本当にやるのか、その人がなぜあきらめないのかという人生観や生き方を知りたくなる。その人の人生観に夢とのつながりがあるかが根拠になる。やる人間とやることにつながりがあると、過去・現在・未来がつながっているのでやめる理由がない。

【機能と価値の違い】

機能の説明をしても相手には伝わらない。それを得た人がそれを使ってどう具体的に幸せになるのかを物語で見せる。テレビショッピングで売れるスピーチをする人達は物語で伝えている。物語によって相手は価値を体験できる。何かを伝えるというのは最高の価値を伝えるだけでいい。最高の価値を伝えるために、会話や気分・表情まで描ききる。

【自立型人材】

いかなる環境・条件の中においても、自らの能力と可能性を最大限に発揮して道を切り開いていこうとする人材
自己依存 ― 他に期待せず、自分に期待する。自分ややり方を変えようとする。
自己管理 ― 自らの可能性を最大限に発揮する。全てに意味をつける。何気なくやらない。
自己責任 ― 真の原因は自分自身にあると考える。謝るだけでなく、自分の出番に変える。
自己評価 ― 本物を目指してとことんやる。結果が出ても、まだまだ未熟と考えられるか、自分を向上させ挑戦し続けられるか。
他者支援 ― 他人を信頼して支援する。やったことは自分に返ってくる。

【プラス受信】

あらゆる出来事を客観的、好意的、機会的に受け止める。
問題が起きた時にその問題をチャンスにするかピンチにするかは人間が決めている。
チャンスにならない出来事はない。

◎講師プロフィール

福島正伸さん(株式会社アントレプレナーセンター 代表取締役社長)
1988年株式会社就職予備校(現・アントレプレナーセンター)設立。通産省産業構造審議会委員を始め、数々の委員を歴任。自立型人材の育成、組織活性化や新規事業立ち上げ、地域活性化支援の専門家として、日本を代表するいくつもの大手企業、大前研一のアタッカーズ・ビジネススクールや全国の地方自治体などで、約7,000回、述べにして30万人以上に研修、講演を行う。2007年より、すべての人が夢を語る社会に向けて、日本最大の夢の発表会『ドリームプラン・プレゼンテーション』を開催。





セッション2

「あらためて聞きたい“支援者にとって『わかりやすい仕掛け』づくり”Part3」

講師:多田千尋さん(認定NPO法人日本グッド・トイ委員会 理事長/東京おもちゃ美術館理事長)
司会:山田幸恵さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:小林泰士

1.本講義でのポイント

Time & Moneyが非常に重要、お金と時間は同価値である。時間の価値はお金以上のこともある。ファンドレイジングを行う人はどうやって寄付金を集めるかということに終始している人が多いが、それ以上に大切なことは時間である。
 人育てとモノ選びが大切、人育てとは人とどう付き合うかということである。人とモノの掛け算によって社会的活動を行っている。
 実際にモノ選びとしてGOOD-TOY-AWARDSの表彰している。この賞は有識者によって選ぶのではなく、全国のおもちゃコンサルタントによって選んでいる。
 またおもちゃの広場での活動は人育てにもつながっている。他にもおもちゃインストラクターという資格も発行している。
 人とモノの掛け算によって以下の4つの事業を行っている。
 ① 子育て支援事業
 ② 木育推進事業
 ③ 病児の遊びケア事業
 ④ 東京おもちゃ美術館


2.東京おもちゃ美術館の運営について

東京おもちゃ美術館は廃校になった校舎を活用して作った。この校舎は一度全焼してしまったが市民が募金によって再建した学校である。
 市民が自分たちでお金を集めて作った学校なので愛着がとてもあり、廃校になったときに市民が取り壊しに反対をして、東京おもちゃ美術館の話が出てきた。
 自分たちで作ったものに市民は愛着があるといういい事例である。
 運営費をかけずに人員を充実させるために強力なボランティア制度を作った。ただボランティアを募集するだけでは人が集まらないのでおもちゃ学芸員養成講座の受講生を募集した。募集したところ定員を大きく上回る240人が集まり、美術館が出来る前に12期まで受講生ができた。


3.市民立ミュージアムの4つの獲得について

①一口館長180人獲得

 これは熊本市役所が熊本城築城のために一口城主を募集したことを参考にした。ただこれは誰にでもただパンフレットばらまけばいいというものではなく、これまでどういう人間関係を築いてきたかということが重要である。

② 設立応援債(正確には債権ではない)の獲得

 一口50万で40口いくつかの返済プランを用意して債権を発行した。この設立応援債は理事の協力によって発行できた。この債券発行はできることならやったほうがいい、最初は気持ちとして債権を買ってくれた人が活動に参画しているうちに気持ちが変わり債権破棄してくれる人もいる。

③ 信金から融資

 最初は前例がないと断られたが、設立応援債の名簿を見せたら融資をしてくれることになった。また金融機関との関係を大切にしている、自動引落のみで返済可能だが一年に一度必ず挨拶に行っている。

④ おもちゃ学芸員240人の獲得

 おもちゃ学芸員の人たちは時間の寄付者である。おもちゃ学芸員は美術館のホスピタリティを保つために最低10人必要で、彼らに日給8000円支払うとすると年間2400万円寄付してもらっていることと同じである。このようにボランティアの方は時間の寄付をすることで、お金を寄付してもらっていることと同じであると考えることがとても重要である。


4.私たちNPOのファンドレイジングの失敗

一口館長が一回きりの支援になってしまい継続性がなかったこと。
 フェードアウトしていくボランティアがいること、ボランティアにやりがいをしっかり与えられていないこと。
 助成金の切れ目が事業の切れ目になっていること。これを避けるために行政・企業との連携に力を入れている。


5.ファンドレイジングは日本の先人から学んだ

明治時代に孤児院を作った石井十次は厚労省などがない中で孤児院を継続していくためにファンドレイジングを行っていた。孤児たちとオーケストラを行い、PVを作成し、講演することで寄付を集めた。



◎講師プロフィール

多田千尋さん(認定NPO法人日本グッド・トイ委員会 理事長/東京おもちゃ美術館 館長)
乳幼児から高齢者までの遊び・芸術によるアクティビティケア及び世代間交流の実践・研究に取り組む。08年には新宿四谷の廃校に東京おもちゃ美術館を開設し、林野庁長官から感謝状、経済専門誌からは「日本の社会起業家30人」の一人、さらに、月刊誌『ソトコト』からはロハス大賞などを受ける。認定NPO法人日本グッド・トイ委員会理 事長、東京おもちゃ美術館館長。他に芸術教育研究所所長、高齢者アクティビティ開発センター代表。早稲田大学、お茶の水女子大学講師。

セッション3

「READYFOR?を活用して2か月で800万円以上を集めた秘訣、大公開!」

講師:米良はるかさん(READYFOR?代表)
   鎌倉幸子さん(公益社さん法人シャンティ国際)
司会:大西純さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:小林ななみ

【米良さんの講演】

インターネットを使用し、小さなお金や個人の思いを沢山の方々から集める新しい資金調達の手段として、“クラウドファンディング”というものがアメリカで注目されている。READYFOR?の特徴としては目標金額と募集期間というのが設定されており、期間内に目標金額が一円でも満たなかった場合は全額寄付をしてくださった方々に返金するというシステムをとっていることや支援額によって支援してくれる方への権利の渡し方が変わってくるところ(三千円寄付すればお礼状が届く、一万円ならばfacebookに名前が載るなど)。運営費やイベント、備品集めのための資金集めなど様々な用途に使用されている。


【鎌倉さんの講演】

クラウドファンディングにおいて、どううまく支援を得られるかという点についてテクニック的な面からお話しさせていただきたい。どなたでも簡単にできるので、沢山の方に挑戦してほしいと思う。


【質疑応答】

Q.プロジェクトをサイトに掲載するにあたり何か基準のようなものはもうけているのか?
A(米良さん).こちらでプロジェクト掲載における審査を行うが、アイディア自体の否定をすることは全くない。だが、アイディアのみ考えていて、実際にお金が集まってもプロジェクトが行えるかわからないという場合はお断りさせていただく場合もある。私自身はその一歩が社会をよくするような一歩であってほしいなと思っているので、最初は気軽にスタートしていただければなあと思っている。

Q.期間内に目標金額が集まらなかった場合の返済が大変だとおもうが、それはどのように行っているのか?
A(米良さん).募集期間が終了し目標金額に達していたら、その時初めて決済されるという形になっているので、実行者の方や支援者の方には一切煩わせることはない。

Q.鎌倉さんへ質問。1日の業務の中でサイトのレスポンスなどの情報を掲載するのにどのくらい時間をかけていたのか、また陸前高田のプロジェクトが目標金額より大幅に上回っていたがその差額は別のプロジェクトに投資しているのか否かおしえていただきたい。
A(鎌倉さん).大体1日30分くらいです。コメントを返信したりしていた。そこで会話が続いたりして資金集めが終わってもつながりをもてたことはよかった。差額に関してはこれからももっと沢山の図書館を陸前高田に作るつもりなので、そこに使わせていただいている。成功するプロジェクトとしないプロジェクトの大きな違いは諦めるか諦めないのかの違いだと思う。

Q.READYFOR?の運営資金はプロジェクトからの手数料はもらっているのか?またプロジェクトは都市部が多い、農村部が多いなどといった傾向はあるのか?
A.プロジェクトが成立した場合のみ、達成金額に対してクレジットカードの手数料含め17%をいただいている。逆に不成立になったプロジェクトからは一切いただかない。傾向に関しては、現状は都市部が多くなっている。ただオフライン上で地方の伝統芸能や美味しい物を絶やさないようにするプロジェクトも始めている。

Q.資金を達成した後にどういうふうに活動報告をしているのか?
A(米良さん).報告方法は沢山あると思うが、こちらではサイト上の新着情報を使用した活動報告を定めています。更新をすると自動的に支援してくれた方にメールが行くようになっていて定期的に見ていただくことができるようになっている。

◎講師プロフィール

鎌倉幸子さん(公益社団法人シャンティ国際ボランティア会 広報課 課長/准認定ファンドレイザー)
米国ウエストヴァージニア州セーラムインターナショナル大学で青少年福祉学を学ぶ。米国で大学職員を経験後、ヴァーモント州のSchool for International Trainingで異文化経営学の修士号取得。1999年、SVA入職。同年カンボジアに赴任し図書館事業を担当。2007年に帰国。東京事務所海外事業課カンボジア担当、国内事業課長を経て、2011年から現職。

米良はるかさん(READYFOR? 代表)
2012年慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科修了。2011年3月日本初のクラウドファンディングサービスREADYFOR?の立ち上げを行い、NPOやクリエイターに対してネット上で資金調達を可能にする仕組みを提供している。World Economic Forumグローバルシェイパーズ2011に選出され、日本人史上最年少でスイスで行われたダボス会議に参加。2012年第一回政策投資銀行女性起業家コンテスト受賞。

セッション4

「農業のビジネスモデル化を通じたファンドレイジング」

~農村資源と都市のニーズを結べば10兆円産業が動き出す~

講師:曽根原久司さん(NPO法人えがおつなげて)
司会:大木本舞さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:砂盃実

【自己紹介】

東京で金融機関等の経営コンサルタントであったが、経済バブルと健康バブルの崩壊を機に、1995年、山梨県北杜市白洲町へ移住。個人として農村事業を開始。農林業、都市農村交流事業等を通じ、農村事業のノウハウを蓄積する。「NPO法人えがおつなげて」を2001年設立。個人事業からNPO法人の事業へ、都市と農村の交流による共生の社会づくりを目指して、山梨県北杜市須玉町、増富地区を拠点として活動を開始する。


【活動拠点(山梨県北杜市須玉町、増富地区)】

この地域は農業の衰退という範囲をこえ、集落そのものの維持が困難な状況で、いわゆる限界集落。面積は、¥世田谷区2個分の100平方キロで、人口500人。高齢化率62%・耕作放棄率62%。一時期、過疎高齢化で生産農家ゼロ!のときもあった典型的な限界集落である。
この地域に広がる遊休地を賃貸し、全国から集まった述べ約500人/年の農村ボランティアによって人力で開墾を行い、約3haの農地が復活。開墾した農地で野菜や穀物の生産を行う。


【2008年には「空と土プロジェクト」がスタート】

これは、三菱地所グループと提携した、都市と農山村をつなぐプロジェクト。
耕作放棄地、放置されたままの森林、限界集落と東京丸の内を結び、開墾による農地再生、間伐材の活用による製品開発、再生農地での農業体験、そこで生産された米を使った純米酒の開発、間伐材の建材活用など、都市と農山村を結ぶ幅広い活動が、具体的成果を生んでいる。


【2012年には博報堂との連携がスタート】

「博報堂」が社員研修プログラムの一環として、「えがおつなげて」と連携。社員による耕作放棄地の開墾、そして再生、田植え、草取り、稲刈りツアー、そして生産されたお米は社員食堂で利用などを行っている。


【講談社イブニングとの連携】

「もやしもん」読者サービスとして、「酒米作って日本酒かもそう」プロジェクトが発足。
もやしもん田植えツアー/もやしもん稲刈りツアー募集し、いずれも40名の募集に1000名を超える応募があり、当選した幸運な読者が田植え、稲刈りを行った。今年初めての日本酒がまもなく発売予定。


【地元山梨県の企業との連携】

〇金精軒の畑:信玄餅で有名な和菓子屋さんとの連携で、自社生産の枝豆でずんだ餅を作っている。
〇清月:モンドセレクション2年連続受賞の山梨県内有数の菓子屋さん。花豆の農作物の栽培を共同で行っている。


【農村の自然エネルギー開発】

従来より取り組んできた、「山梨の自然エネルギーを地域に」との取組みも、新たな段階に来ている。
太陽光発電/小水力発電/バイオマスで、約200億の産業規模が見込める。


【農村資源を都市のニーズと結べば10兆円産業・100万人の雇用の可能性が!】

それを実現するポイントは、農村と都市をつなぎ、事業の企画運営ができる農村起業家の育成。その育成に、全国各地で「えがおの学校」などの運営・支援も展開している。


【質疑応答】

Q.TPPの影響をどう考えるか?
A.えがおつなげては、独自の流通ルート、サプライチェーンからなっているので、影響はないと考えている。

Q.最初の大手企業・三菱地所との提携はなにがきっかけで始まったのか?また、また交渉の窓口はどんな立場の方だったのか?
A.えがおつなげてが主催の「限界集落ツアー」に、三菱地所の方が参加がされたことがきっかけ。
また、連携のきっかけ窓口になった方は様々である。その部門の長、部長や局長など。企業のトップがきっかけということもあった。



◎講師プロフィール

曽根原久司さん(NPO法人えがおつなげて 代表理事)
1985年、明治大学政治経済学部経済学科卒業。金融機関等企業経営の経営コンサルタントを経て、現職。やまなしコミュニテイビジネス推進協議会会長、山梨県立農業大学校講師、内閣府地域活性化伝道師など多数兼任。著書「日本の田舎は宝の山 -農村起業のすすめ- 農村資源を都市のニーズと結べば10兆円産業が動きだす」/日本経済新聞出版社。

セッション5

「オンラインを活用した寄付キャンペーン成功の秘訣」

講師:田口由紀絵さん(公益財団法人パブリックリソース財団)
司会:清野陽子さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:細貝朋央

【田口さんの講演】

「E-ファンドレイジング・チャレンジとは」
E-ファンドレイジング・チャレンジ(以降E-チャレンジ)は、パブリックリソース財団によって運営されているオンライン寄付サイト「Give One」を使ったオンライン寄付キャンペーンである。ボーナスやチャリティ企画の多い2012年11月27日~12月26日の1ヶ月間行われた。サイト内に1団体1ページが与えられ、プロジェクト名と詳細、プロジェクト担当者の写真とコメントを見ることができる。寄付者は、1000円から自分の寄付額を決めて、オンラインショッピングと同様にクレジットカード支払いかジャパンネット銀行などでの銀行振り込みのいずれかで寄付することができる。また、E-チャレンジでは、団体ごとに目標額を決めてもらい、50件を超えるオンライン寄付があった場合、1件あたり1000円の報奨金が提供される。これには、新しい寄付者の開拓を応援する目的がある。加えて、「Give One」を通した寄付だけでなく、団体の口座に直接振り込んだり、「Give One」以外のオンライン寄付の利用も行っていた。


【研修でのポイント】

「オンライン寄付キャンペーン成功のカギ」
E-チャレンジ参加団体は、キャンペーン前に研修でオンライン寄付集めのノウハウを学ぶことになっている。その研修で行った「オンライン寄付キャンペーン成功のカギ」として4つのポイントを挙げる。
(1)「情熱」:組織としてファンドレイジングにエネルギーを注ぐこと。
(2)「必要性・緊急性」:プロジェクトの中身が、本当に取り組んでいる問題に対して必要かどうかということ。
(3)「写真・文章」:専門知識や関心が高くない人でも、見たり読んだりして共感できる写真・文章をつかうこと。
(4)「有力な応援団」:ファンドレイザーをどれだけ確保できるかということ。


「オンライン寄付調達の方法論」
ドナーである既存寄付者と潜在寄付者をリストアップする。潜在寄付者の中には、組織の役員やスタッフとその家族・友人、過去に寄付してくれた人などが含まれる。このリストの中から、一緒に寄付を呼び掛けてくれる人を見出す。寄付者のリストから、1000円あたりの見込み寄付者数という具合に、ドナー・カテゴリ別の寄付見込みを想定する。
寄付のお願いの文面を作成する。問題の所在を説明し、その問題の解決法を平易に、妥当で合理的であることを説明する。その結果、どのような効果があるのかを明示する。寄付がどのように役立つのか、貢献内容を定める。
ファンドレイジング計画をたて実施する。E-メールで伝える場合、個人宛てが効果的である。


【オンライン寄付調達の成功の秘訣】

組織内での役割分担ときちんとした計画を立て、ミーティングで進捗報告をして次につなげるように組織的に取り組む。メールやソーシャルメディアなどのオンライン上での綿密なコミュニケーションと情報発信が大切である。


【質疑応答】

Q.寄付集めに必要な経費はどうまかなえばいいのか?
A.寄付集めの経費を寄付の中からまかなうことは認められるべきである。また、経費を寄付の何割かでまかなうことへの理解をしてもらえるように説明していくことが必要。


Q.どのようにすれば、一度寄付をしてくれた人がリピーターとなってくれるのか?
A.年賀状や新しいプロジェクト立ち上げ時などに寄付をお願いするとともに、前回寄付をしてくれたことに対する感謝の言葉も添える。継続的に、年に何回かメッセージを送る。


Q.ボランティアの人たちにどのように寄付をお願いするか?
A.ボランティアとして普段の感謝を伝えつつ、寄付の必要性も伝える。また、そのボランティアに寄付を呼び掛けのお願いをすることも考えられる。



◎講師プロフィール

田口由紀絵さん(NPO法人パブリックリソースセンター チーフ・プログラムオフィサー)
ケース・ウェスタン・リザーブ大学にて非営利経営修士号取得。外資系銀行、政府関係機関、米国NPOの東京支局長および社会企業を経て2002年より現職。現在、企業の社会貢献活動支援、 NPOマネジメントのコンサルティングおよび組織診断、オンライン寄付サイト「Give One(ギブワン)」の企画・運営を担当。共著に「NPO実践マネジメント入門」(東信堂、2009年)。

セッション6

「トキワ荘プロジェクト徹底解説」

講師:菊池健さん(NPO法人NEWVERY)
司会:松井大介さん(日本ファンドレイジング協会会員)
記録:伊森由美

【菊池さんの講演】

1.自己紹介

トキワ荘プロジェクトとは、本気で漫画家を目指している若者を支援するプロジェクトで、彼らに都内で低家賃の住宅(シェアハウス)を提供している。また、講演会・イベントや仕事の紹介/各種面談などを行うことで、漫画家志望者同士や、プロ作家や編集者とのコミュニティ作りを行っている。
NPO法人NEWVERYでは、7年前からトキワ荘プロジェクトを開始しているが、自分は4年前から関わるようになっている。
平成23年度からは、京都国際マンガアニメフェアの広報や商品化を担当している。

2.現在行っている活動

主にNPO法人NEWVERYでは3つの事業を行っている。「トキワ荘プロジェクト」
「ニートの支援」「おとな大学」である。どの事業も小規模なものであるが、すべて予防を行っている。例えば、40代のニートになった人をなんとか支援しようとすると、かなりの労力がかかるが、学校中退者がニートになることが多いので、それを予防するように取り組んでいる。

3.トキワ荘プロジェクトの運営資金について

トキワ荘プロジェクトの運営資金源は以下の様になる。
1)シェアハウスによる家賃収入
2)イベント・講習会の売り上げ
3)書籍販売の売り上げ
4)業務委託売り上げ
5)助成金

4.活動の中で印象的だったこと

助成金については、これまでは消極的であったが、最近は変わってきた。
京都市の「漫画家を育ててシェアハウスにする」という構想にほぼ一致したので、自分自身で企画をたてそれに予算があてられることになった。

【質疑応答】

Q.日本のコンテンツの海外輸出について話を聞きたい
A.日本のコンテンツが海外に出たのは、1950年代頃。アニメが出始めたのは、1970年頃である。これまで日本のコンテンツ業界の人は、日本のコンテンツの市場を国内に求めていた。海外市場は余り考えていなかった。なので、海外に版権に売る時に、日本は、雑に売る傾向がある。アニメを放送する企業と、キャンペーンや商品化する企業が違うことがある。最近は流石に改善しつつある。

Q.アベノミクスの影響でこの業界が復興していくと思っている。NEWVERYの活動は、ニートや若者の職場づくりから始まっているということであった。しかし、クリエーターにお金が落ちていないように思えるが、クリエーターの収入源はどうなっているのか。
A.著作権など権利関係を考えなくてはいけない。テルマエ・ロマエの映画ははやったのに、作家には100万円くらいしか入らないということがある。昔は、漫画がアニメ化する際に、アニメ化の効果で漫画が更に売れたので、あまり議論されなかったが、ここ最近は、漫画が売れにくくなっているので、権利関係のところをなんとかしなくてはいけないのかもしれない。アニメの市場を広げるため、海外への進出をNPOの視点で今後は考えていきたい

Q.トキワ荘プロジェクトとでは、マスコミの取材が良い方向に動いたが、反対にデメリットはあるか?
A.トキワ荘プロジェクトに参加した人で漫画家になれなかった人に「漫画家になれなかったのは、このプロジェクトのせいだ!」逆恨みされることもある。シェアハウスの仲間の質が悪いという人もいる。また、家賃を滞納する人もいる。業界としては、周りから見えにくいので、周囲の人からの理解を得るのが難しい。

Q.家賃収入がメインになっていると思うが、シェアハウスの価格設定はどのようになっているか。
A.同じシェアハウス業者と比較すると、若干高くなっているが、地域の平均家賃よりは低めに設定している。

【菊池さんからのメッセージ】

漫画家を支援するのが社会のためになるのかという話もあるが、運営資金を集めるためには、使途が指定されている補助金よりも事業資金を得るように工夫が必要であると考えている。

◎講師プロフィール

菊池健さん(NPO法人NEWVERY理事・事務局長・「トキワ荘プロジェクト」 ディレクター)
1973年東京都生まれ。日本大学理工部機械工学科卒。機械専門商社(1997-1999)、プライス・ウォーターハウス・クーパース・コンサルタント(2000-2004)、ITベンチャー (2005-2007)、ソーシャルベンチャーの副社長(2007-2009)を経て、2010年1月よりNEWVERY事務局長。2011年4月より同理事。京都国際マンガ・アニメフェア事務局。京都版トキワ荘事業など受託中。



セッション7

「社会を動かすソーシャルメディア」

講師:イケダハヤトさん(ウェブマーケティングコンサルタント)
   山田泰久さん(公益財団法人日本財団経営支援グループ情報コミュニケーションチーム)
司会:高木慎平さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:葛巻あゆみ

【イケダさんの講演】

1. クラウドファンディング:群衆×資金調達

クラウドファンディングとは最近盛り上がりを見せる、新しい資金調達の方法のことであり、多くのNPOでも使われている。キャッチーなプロジェクトで目標の寄付金額が数十~数百万であればとても使いやすい寄付調達の方法である。特徴は主に三つある。一つ目は「ゲーム性」である。残りの日数や金額を表示し、到達しなければ寄付金はすべてチャラになるというやり方も実際に使われており、ゲームのような感覚で群衆を引き付けることが出来る。二つ目は「リターン」である。寄付に対するリターンが魅力的であれば、寄付してくれやすくなるということである。よく寄付と購入の中間という表現がされる。三つ目は「拡散」である。多くのクラウドファンディングはFacebookと連携しており、群衆に広めやすい。

2. ブログを活用しよう

他のソーシャルメディアとブログの決定的な違いは、検索エンジンによくヒットするというところである。何か調べようとしている人を捕まえることが出来る。ブログから入り、そこにあるバナーをクリックするとサイトに飛ぶという同線がうまくいっているので、人を呼び込むことが出来る。これは資金調達にとても有効である。

3. ソーシャルメディアの目的

ソーシャルメディアの大きな目的は、「オフラインの接点の獲得」である。ソーシャルメディアを通じてイベントの集客ができ、そこでサポーターの獲得ができる。

【山田さんの講演】

NPO団体の人達が情報発信していくプラットフォームとなるサイト、CANPANを運営している。一方的に発信するだけでなく、活動する人が応援する人と繋がることがとても大切である。そのために重要なことは、まず旗を掲げるイメージで情報発信することである。人がより多く集まっているところで、わかりやすくみんなで旗を掲げることにより活動や団体に関わってもらいやすくなり、情報を届けた人達との関係づくりができる。また、団体のことを発信するよりもキャンペーンやイベントなどの一時的なものの方が人の関心を引くことが出来る。情報発信は漢方薬と同じように、すぐに劇的な効果が出るわけではなく、継続することでその効力を発揮する。よって1年前、半年前から発信力を高めることが重要である。そして、イベントなどを開催する際は、告知・中継・報告を3点セットで使うことでより情報が効果的なものになる。これらのことは「リアルな状況と、リアルな自分達を、リアルタイムに伝えて、リアルな場へと繋ぎ、リアルなネットワークへ」という5つのリアルで表すことができる。

【質疑応答】

Q. ソーシャルメディアの更新頻度はどれくらいがベストか。
A.イケダさん Facebookなら4時間に1回、1日に4回くらいまでが最大ではないか。ブログなら多くても問題はなく、その書いた記事の中でおもしろいものをFacebookやTwitterで紹介しても良いだろう。Twitterならどれだけ多く書き込みをしてもフォロワーはあまり減らないのであまり更新頻度の上限は気にしなくても良いと考える。

Q.これから将来ソーシャルメディアで起こりそうなことは何かあるか。
A.山田さん これから色んなツールがくると思うが、何がきても個人として情報を発信する方法や考え方を身に着けていれば、自分がぶれることはないと思っている。
A.イケダさん 今まで指標化されなかったネットでの影響力がより評価され、重視されると思う。既に影響力を指標化するKLOUTというサイトがある。


◎講師プロフィール

イケダハヤトさん(ウェブマーケティングコンサルタント)
個人メディア「ihayato.news」を運営。NPO向けのソーシャルメディア活用プロボノ集団「テントセン」主宰。著書「フェイスブック(講談社)」「統治を創造する(春秋社)」など。BSフジ「プライムニュース」、NHK「ニッポンのジレンマ」などに出演。
山田泰久さん(公益財団法人日本財団経営支援グループ情報コミュニケーションチーム)
日本財団の公式サイト、社内システムの担当。さらにNPO・CSRのための公益コミュニティサイト「CANPAN」も担当し、NPOの情報発信支援に取り組んでいる。NPOの情報発信視点で、ソーシャルメディアがどのように活用できるのかを日々研究&実践中。これらの経験とノウハウを活かして、全国各地でNPOのための情報発信&ソーシャルメディアセミナーの講師実績多数。
13:40 - 14:55

セッション8

「人を惹き付けるコミュニケーション力UPセミナー」

講師:橋長 豊さん(感動経営コーロク 取締役社長)
司会:奥山大介さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:荒谷知佳

【橋長さんの講演】

「自己紹介」

京都で感動経営コーロクを経営しています。会社としては、エクステリアなど庭を作る資材の販売を行っています。その中で実演販売を行う際のコミュニケーションについてお伝えして行こうと思います。

「実演販売でお客様が商品を購入するまでのステップ」

ステップ1は、つかみ・関心。「笑い」「びっくり」を作ります。ステップ2は、興味。「隠された欲求を刺激し、興味を引き出す」のです。ステップ3は、連想・想像。「プラスイメージを思い浮かべてもらう」ことです。ステップ4は、決断。「お客様の右脳に働きかける」ことです。そして、ステップ5は、行動。「お客様の体を動かす」のです。

「実演販売でのお客様への対応方法」

1つ目は人を惹き付ける。お客様を「0→1」にする、1人を集めるまでにパワーがいります。2つ目は人を集めていく。自分のペースに持っていかないとお客様の行動につなげられないから、50人いたら50人を相手にします。3つ目は場の雰囲気を良くしていく。お客さんが盛り上げてくれると、私も盛り上がる。そのような環境や雰囲気作りの仕掛けを作るのです。4つ目は流れる売り方の開始。売る事はここから始まります。

「自分を買ってもらう」

売り場は私の「舞台」です。実演販売においては商品を売る場であるだけではなく、私の舞台でもあります。思い浮かべるのは、「売れる」イメージであって「売る」イメージではありません。何度も何度もイメージをしました。自分を買って貰うためには、具体的にその場に応じたテクニックやお客様と一体になることを意識しておりました。

「モノを買っているのではない」

お客様はワクワク変化出来る自分の未来を買っているのです。実演販売する事によって感動に対しての対価を払ってくれるのです。お客様は「この人から買いたい」という安心感や信頼を持ち、私を認めて買ってくれます。売れない人は「モノ」を必死に売っているのです。この人から買いたいと思って貰うためには、自分自身を売る事です。商品は後から付いてきます。



【質疑応答】

Q.「売る」という行為を自分がする事に恐怖感を持つ人がいる。「お金を貰うのが申し訳ない」「高い値段を請求出来ない」という人もいる。そういう人が持つと良い心構えは?
A.「この商品の値段は高いのではないか?」と思うとしたら、それは自信を持てていない証拠。まずは自分を知って貰う事から始める。お客様が自分の事を信頼してくれれば、お客様は心を開いてくれる。そうしたら売っている商品にも興味を持って頂ける。

Q.障害者支援の団体をしており、「障害者が作ったモノ」に如何に価値を持たせるかについて苦労している。モノに対する価値の付け方をどう考えているか?
A.モノに価値の付ける時は、比較がポイント。「これまでのハンガーではこれは出来ないが、こちらのハンガーならこんなメリットがある。」という様な事をしている。

Q.NPOは想いを持ってやっているので、人前で話す時はどうしても時間が長くなってしまう。話す時間の調節・話しの山場の作り方について教えて貰いたい。
A.実演販売はゼロから始めるので、まずお客様に前に来て貰う様にする。話すだけだと興味を持って貰えないので、物を大きく動かしたりして興味を引き付けて、前に来て貰う様にする。そして、雰囲気を良くしていき、詳しい話しを聞きたくなったお客様が出て来たら、彼らをレジの担当者に誘導し、今度は次のお客様に対応します。

Q.リピートについて。一度買った人がまた来て貰えるための工夫について教えて貰いたい。
A.以前買って貰った方の顔は覚えているので、その方がいらしたら感謝を伝える。「この商品を買って良かった」と言って下さるお客さんはまた来て下さいます。それはモノだけでは無く、私を買って下さっているからです。

◎講師プロフィール

はしながゆたかさん(感動経営コーロク 取締役社長)
大学卒業後、飛び込んだ実演販売業界で、一流の証とされる新宿伊勢丹・横浜高島屋・難波高島屋などのデパートのフロアを中心に、全国各地でその技を磨く。1997年エクステリ ア・ガーデン資材の流通・販売会社コーロクに入社。2007年社長就任。花に水や肥料が必要なように、人間の持つ心の能力を引き出すために「感動」と「元気」を与え続けている。

セッション9

「活動を元気にする“コーズ・リレイテッド・マーケティング”」

講師:野村尚克さん(Causebrand Lab.代表)
司会:久津摩和弘さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:今井彩子

【野村さんの講演】

コーズ・リレイテッド・マーケティングを日本で実践する仕事をしている。
このセッションでは、コーズ・リレイテッド・マーケティングの概念と事例、NPOにとっての長所と短所、企業側の本音とドナー側の本音、良い協働と悪い協働についてお話しをしたい。

「コーズ・リレイテッド・マーケティング(CRM)とは」

コーズ・リレイテッド・マーケティング(CRM)とは、収益の一部がNPOなどへの寄付を通し、社会問題の解決のために役立てるマーケティング活動の事。コーズブランドとは、その様な収益を実現する商品やサービスの事。

CRMの始まりは、1980年代のアメリカンエキスプレス社の「自由の女神修繕キャンペーン」。これは、新規にアメリカンエキスプレスカードに加入したり、カードを利用したりすると、その額の一部がこのキャンペーンに寄付されるというもの。このキャンペーンにより、新規入会者とカード利用額が非常に増え、3ヶ月間で170万ドルの寄付を集めた。

日本では、東日本大震災の影響もあり、消費者の社会貢献活動への意識が変化して来ている。2009年は45.5%、2011年は75%の方が寄付付商品の購入経験がある。2009年未購入の54.5%のうち74.5%が今後は購入してみたいと答えている。つまり85%の方が寄付付き商品の購入に前向きである。

商品価値とは、「機能」×「情緒」で成り立っている。機能だけ、デザイン性だけで商品価値を高めることが難しくなって来ている。コーズマーケティングは、社会問題の解決という「情緒」に働きかけ、これが差別化のポイントとなる。

代表的なコーズブランドには以下のものがある。
・Volvic社「1L for 10L」:対象商品を1L購入すると、アフリカに10Lの清潔な水が送られるというもの。
・アサヒスーパードライ「うまい!を明日へ!プロジェクト」:全国47都道府県それぞれの自然や環境・文化財等の保護・保全活動に対して、対象商品1本につき1円が活用される。
・アースノーマット:商品を1個購入すると5円がマラリア予防に使われる。
・PRODUCT RED:世界的なバンドであるU2のボーカルボノの呼び掛けで始まったアフリカのエイズ撲滅企画のCRM。Apple、NIKE、Dell、コンバース、スターバックス等が参加している。

東日本大震災の支援でも、CRMが活用された。一方で、これまでCRMで別の問題を扱って来た企業もいたので、「支援先を東北に変更するべきか?」という議論が出て来た。
森永製菓の「1チョコ FOR 1スマイル」は、支援先を東北に変更した。Volvicは変更しなかった。被災者・非被災者の両社に対する評価は、ともに変わらなかった。

「NPOにとってのCRMの長所・短所」

長所は次の通り:大口の寄付が受けられる。法人との取引のため安定性がある。一度協働がはじまると途中で変更がなされる事が余り無い。商品を通じた課題・団体のPRが出来る。団体の信用度が増す。企業が企業を、信用が信用を作って人を連れて来てくれる。
短所は次の通り:CRMへの依存度が高まる。企業のスピードに翻弄される。企業が不祥事を起した場合、NPOへも批判が起こる可能性がある。NPOの独立性が危ぶまれ、企業の下請け化する問題が起こる。

「CRMを実施する企業の本音」

実施時にはステークホルダーへの共感を求める。「何故このCRMをするのか?」が説明可能かどうか。
パートナーとしてのNPOに求める事は次の通り:知名度、実績、信頼性、企業の気持ちの理解度、担当者の性格・人間性。
NPOに対するアドバイスは次の通り:実績を作る、認定NPO・認定ファンドレイザーを取る事。
嫌われるNPOは次の通り:押し付けがましい、暗い、スピード感がない、担当者に元気がない。

「良い協働と悪い協働」

良い協働とは次の通り:企業とNPOが互いの状況を理解する。企業とNPOの両方の個が確立されている事。しかし優先順位は受益者であることを忘れない事。

「最後に」

企業・NPO・行政を繋ぐ役が求められている。それぞれセクターの事情を理解しつつ、繋ぐ人が必要である。



◎講師プロフィール

野村尚克さん(Causebrand Lab. 代表)
立教大学大学院修了、筑波大学大学院退学。宮城大学非常勤講師。企業のCSR、マーケティング、NPOとの協働をプロデュースし、「コーズブランド/寄付つき商品」という概念を日本で提唱。代表作に「1億人のバレンタインプロジェクト」「ありがとうproject」「Japan. Thank You.アクション」など。東日本大震災以降は被災地にて復興活動を行っている。著書『世界を救うショッピングガイド』。

セッション10

「スポーツマーケティングとファンドレイジング最前線」

講師:平野祐司さん(一般社団法人日本トップリーグ連携機構 事務局長)
   青木崇行さん(一般社団法人アスリートソサエティ 事務局)
司会:塙 創平さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:村松正彦

【平野さんの講演】

<日本トップリーグ連携機構の概要>

日本トップリーグ連携機構は球技の団体の集まりで、2005年に設立された。

<スポーツ界でのファンドレイジング>

スポーツ界で資金獲得していくためにはどうするか?スポーツは勝ち負けを競うのが当たり前だが、これは1つの価値でしかない。今の時代に欠けているのは、リスペクト、コミュニケーション。

ある地方都市で実験をしている。その都市の人口は5万人で、お年寄りは1万5000人。そこで、週に1回スポーツをやって貰っている。我々の期待としては、「体重が減った」とか、「血圧が正常になった」といったような、お年寄りの属性数値の改善だった。

その都市では、属性数値は改善されたが、思わぬ付加価値が出た。それは医療費が2億円削減されたこと。これは、スポーツが提示出来る価値。

今、注目されているのはスポーツツーリズム。観光庁の長官は大分トリニータの社長をされていた方で、その人がスポーツツーリズムを前面に出している。この方がトリニータにいた時に、ホームの試合にどれだけ人を呼んで来るかを考えていた。県外からトリニータの試合に見にくるサポーターの多くは、別府温泉や湯布院にも行く。なので、トリニータ周辺の町が潤う。つまり、スポーツを中心とした、国内の宿泊を伴った移動を盛んにすることによって、経済効果が出る。

このように、勝ち負け以外の価値を発信しないとお金は貰えないだろう。教育分野での価値、医療分野での価値、経済効果、スポーツの地域貢献・国際貢献、スポーツツーリズムを使ったマーケット価値の創造、こんなことを考えていく必要がある。

<スポーツのマーケティング、ファンドレイジングの変遷>

スポーツのマーケティング、ファンドレイジングは大分変って来た。長野オリンピックの時に企業から「協賛金を下さい」とやっていたが、この手法には限界がある。
経済が厳しくなると、最初に引くのはスポーツ協賛。また、企業のスポンサーシップは効果測定するので、効果の見えないものには金は出さない。

つまり、大きなパラダイムの転換が必要。そのもの自体の価値をちゃんと創造していく。賛同者がお金を出してくれるような魅力を出さないといけない。勝敗だけではない価値の創造、勝ち負けだけでは無くて支援して貰えるような構造を考えること。


【青木さんの講演】

<アスリートソサエティの紹介>

陸上競技でオリンピック出場経験もある為末大さんから誘われて、一般社団法人アスリートソサエティの事務局を担当している。

アスリートソサエティは2010年8月に設立された。代表者は、陸上や卓球など、個人競技の著名なアスリート達。野球・サッカー・ゴルフは商業的に成り立っているが、個人競技のアスリート達は商業的に厳しい状況にある。なので、これらアスリートの自立のサポートとして、現役アスリートに対しては競技だけに留まらない勉強会や、引退後はセカンドキャリア支援・地域へのアスリート派遣などを行っている。

<アスリートの自立について>

プロアスリートの社会的価値としては、今後は「企業スポーツから、地域スポーツへ」「国威発揚から、エンターテイメントへ」「有名人としての肖像・宣伝から、アスリートとしての経験・知見へ」と変化していくだろう。

アスリートの知見の還流例としては、スポーツ用品のコンサルティング、ウェイトコントロールノウハウ、部活動指導などがある。これらで価値が出せればお金も入って来る。

【質疑応答】

 Q. スポーツ教室は、選手によって教え方にレベルが出て来そうに思うが、それをどう考えるか?
 A(青木さん). 今は、先輩アスリートが後輩アスリートに教え方を教えるというやり方をしている。
 A(平野さん).「名選手、必ずしも名指導者ならず」という事もある。指導者研修をきちんとしないといけない。

◎講師プロフィール
平野祐司さん(一般社団法人日本トップリーグ連携機構 事務局長)
1979年、財団法人日本体育協会入局を皮切りに、スポーツビジネス分野に従事。1991年より、財団法人日本オリンピック委員会にて主にマーケティング業務に携わり、長野オリンピックの マーケティングにも従事する。2004年から2006年まで財団法人日本フォスタープラン協会にて、広報・マーケティング・ファンドレイジングに関する業務を担当。2006年より現職。

青木崇行さん(一般社団法人アスリートソサエティ 事務局)
ソニー株式会社Corporate R&D A-cubed研究所に勤務後、2009年慶應義塾大学より博士(政策・メディア)取得。2008年、室内空間表現技術の研究開発に取り組むカディンチェ株式会社を設立。また同年に、ネパールでの環境保全・青少年教育を目的とした特定非営利活動法人パックスアースを設立。2010年8月一般社団法人アスリートソサエティ設立時より事務局担当。

セッション11

「人権保護団体のファンドレイジング」

~Human Rights Watchのガラ・パーティー等のファンドレイジング~

講師:土井香苗さん(Human Rights Watch 東京オフィス 日本代表)
司会:小山久枝さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:村松正彦

【土井さんの講演】

Human Rights Watchはニューヨークに本部のある国際NGOで、90カ国の人権の状況を調査・報告書の発表を行い、人権侵害を防ぐための行動をするのが活動の主たる柱。活動例としては、ビジネスによる人権侵害、子供の権利、障害者の権利、テロリズム対策等。団体としては、約30年前に設立され、全世界で300人強のスタッフがいる。スタッフの国籍は約40カ国。

日本では、年に1回のガラ・パーティーが主な収入源になっているが、その様なやり方をしている理由を説明する。Human Rights Watchは寄付者の70%が個人、30%が民間財団。日本NGOの多くは政府からの助成金と民間企業からの寄付が多いと思うが、我々は「政府からの助成金は(直接・間接問わず)貰わない」というのがポリシーになっている。これは、我々は世界中の政府を監視しているので、監視する対象からお金を貰えないため。企業からの寄付については断っている訳ではないが、それ程多くない。また、日本は私立財団は少ない。なので、日本では、ほぼ100%が個人からの寄付となるので、個人から寄付を貰うための努力をしないといけない。

自分がニューヨークのHuman Rights Watchで働き始めた2006年、Human Rights Watchのガラ・パーティーに初めて行って、ショックを受けた。当時はテーブル1個が一番高くて1000-2000万円、一番安い席は10万円。「こんな巨額のお金を払ってこんなディナーに来る人がいるのか」と思った。

その後、東京事務所を作るという話しになった時には、「是非これを日本でやりたい」と思い、東京でも毎年開催する事とした。2012年はホテルオークラ東京で開催し、約270名のゲストが来た。

チャリティ・ディナーのプログラム構成としては、レセプション、ウェルカムスピーチ、食事、活動ビデオ上映、著名な人権活動家への賞の授与、オークションとなる。

オークションでは、著名な写真家の作品、サッカー日本代表選手のサインの入ったTシャツなどを出品している。
その他、著名な学者や社長のゲスト出演・スピーチなどもある。

【質疑応答】

Q.パーティーの参加者層について。高額のチケットを買うのはどんな人達か?
A.基本的には個人が買っている。企業が購入する場合もあるが、そちらの割合は少ない。

Q.オークションへの出品者・寄付者はどう集めているか?
A. 2007年に日本に帰って来て日本支部を立ち上げたが、お金の目途がつくまで1年半掛かった。その間、サポートしてくれそうな、成功したビジネスマンを探すために、最初は自分の友達から始めて、口コミで人を探していった。

ある著名な社長と始めて会う時は、「人権団体」ということで、社長側は緊張していたらしいが、話しを聞いたら「支援してあげるよ」という事になり、そこがブレークスルーになった。1人信頼されているビジネスマンを味方につけると、他の人も少し安心する。それが無いと「良く分からない人権活動家がやっているNGO」と認識されてしまい、ビジネスマンにとっては信頼性が低いままになってしまう。そこから口コミで広がって4年5年と経って、今となっては席を買ってくれる人はかなり増えたし、オークションの出品もサポーターの人達が出してくれるようになった。

去年は、アートのオークションを行い、今回の大会ではセッション18も担当されているNPO法人アーツイニシアティヴトウキョウの塩見有子さんにお願いをして、アートギャラリーやアーティストとの交渉を手伝って頂いた。

Q.チャリティの物品は誰が出すのか?
A.個人のサポーターから募る。また、著名人のサポーターであれば、「この人と2時間話せる権利」といったようなものも出したりしている。

◎講師プロフィール

土井香苗さん(Human Rights Watch 東京オフィス 日本代表)
東京大学法学部卒業。在学中の1996年、司法試験に合格。大学4年生の時、アフリカ・エリトリアに赴き、1年間法務省で法律作りのボランティア。2000年、弁護士登録。普段の業務の傍ら、日本にいる難民の法的支援や難民認定法改正に関わる。2006年、国際NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」ニューヨーク本部のフェローとなり、2008年9月から日本代表。2011年世界経済フォーラムYoung Global Leader (YGL)。朝日新聞紙面審議会第21期委員。





セッション12

「寄付から投資へのパラダイムシフト」

~ソーシャルインパクトの評価測定がファンドレイジングのパラダイムシフトを生む~

講師:熊沢 拓さん(㈱ソーシャルインパクト・リサーチ代表パートナー)
ファシリテーター:鴨崎貴泰さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:山本玲子

【熊沢さんの講演】

 当社のミッションは、「新しい資本主義をつくる」で、ソーシャルビジネスモデルによるNPOが生み出した価値を社会的にどう評価し、投資に結びつけるかを考えています。まず、寄付モデルと投資モデルを比較し、ソーシャルセクターの投資モデルが求められていることから、評価指数をもとにした投資スキーム開発が不可欠と考え、社会的価値評価のためのソーシャルインパクト指数(SIS)をつくりました。アメリカではさまざまな認証システムが生まれていますが、日本では有益なものがまだないと考えています。時価総額は株主にとっての最大の利益を示すもので、企業はソーシャルイノベーションを示せていません。
 世の中の人の意識や行動、生き方を変えることを「ソーシャルインパクト」と定義し、次の5つの指標でアセスメントを行っています。
①社会課題の深刻度、②投資対効果、③波及効果、④スピード、⑤経営基盤・持続性
 特に定量化にはこだわっていませんが、SISが大きいほど、自分たちが社会に有益なインパクトを与えているということを意識することができます。また、有益なインパクトを与えられない原因を考えることも重要で、どういうふうにすれば変えられるのか、考えるきっかけとなります。従来のSRIは投資対効果を計っていましたが、効果性を加えたのが私たちの指標SISです。

 では、実際にどうやって評価するか、具体例としてファシリテーターの鴫崎貴泰さんの公益財団法人信頼資本財団を例にあげましょう。信頼資本財団は、300万円の無利子融資を行っています。大口の融資ではないこと、日本ではお金を借りてまでNPOが事業をするという意識が少ないことから、現在公募中ですが、問合わせはそんなに多くありません。
 ①深刻度は、信頼資本財団がお金を貸すことによってその問題の深刻度をどの程度やわらげるか?お金を借りられなくて困っていることによって解決できないこと、そのためにどうしなければならないかを指標化することです。
 ②投資対効果は、分子:共有価値(経済的価値+社会的価値)、分母:投資金額ですが、この場合、ちゃんと利益を生み出しているか、社会にいいことをどれだけ生み出すことができるか?このアセスメントが必要です。
 ③波及効果:融資先が2年後に効果を生み出すとすると、その先の見えない部分をいかに高めることができるか、効果が大きいところをどうやって予見するか、ただ、「社会的にいいこと」をどうやって説明するかは難しいことですが。
 ④スピードは、定量化まではできませんが、こういう視点を持って活動してほしい。
 ⑤基盤については、持続可能な経営基盤を持っているかどうかを考えてください。


【質問】

Q.共有価値は「経済的価値」と「社会的価値」の総和と考えていいのか?
A.総和で10だからといって、同じではない。社会的価値をどうやって経済的価値に示すか、が重要。NPOはサービスを提供する相手から対価を受け取るのではないことが多く、助成金や寄付金を得て活動している。それらを、どうやって経済的価値に転換するかを考えてビジネスモデルをつくることが重要。

Q.SISは第三者の評価軸のひとつとして考えてよいか?
A.現在はソーシャルインパクトが評価されていないと考える。銀行なども何が社会に貢献しているか、何が信用やお金を借りることにつながっていくのか、非常に曖昧。「ソーシャルインパクトは評価が難しい」で終わらないで、社会全体で考えることが重要。

Q.経産省のソーシャルビジネスの指標などいろいろな指標はあるが、評価するのは難しい。SISの対象は事業型NPOか?
A.難しいし、あまり使われていない。本来ならその金額にみあった社会にいいことをしているか考えるべき。自分たちの活動のバランスと社会に対するバランスを考えてみることが重要。事業型には限っていない。

◎講師プロフィール

熊沢拓さん(株式会社ソーシャルインパクト・リサーチ 代表パートナー)
(株)ソーシャルインパクト・リサーチ代表パートナー。慶応大学大学院経営管理研究科修了。ジャフコ、三菱UFJキャピタル、ソフトバンクグループ等、IT分野のベンチャーキャピタリストとして活躍した。リーマンショックを機に、新しい資本主義3.0を提唱し、ソーシャルビジネス分野にシフト。研究テーマは、ソーシャルインパクトの定量評価、ソーシャルイノベーション、最適なソーシャルファイナンスの形。

セッション13

「韓国Beautiful Foundationのチャレンジ」

講師:ソ・ギョンウォンさん(Beautiful Foundation Management and Planning Department,Chief Executive Director)
通訳:安信淑さん
司会:大村弘之さん
記録:中村亮

韓国を代表する財団であるBeautiful Foundationの実績を具体事例を交えてご紹介いただき、韓国の財団を取り巻く環境や、Beautiful Foundationの新たな挑戦についてのご説明いただきました。

【ソ・ギョンウォンさんの講演】

 Beautiful Foundationは現ソウル市長であるパク・ウォンスン氏が設立。故に最近では政治的イメージをもたれることもあるそうですが、韓国国内ではユニセフに次ぐ知名度を持つ財団の一つです。今回は、その理由や他の団体との差が何かを中心に講演されました。
 Beautiful Foundationでは単なる寄付集めではなく、人々の参加を目的とし、社会の変革を求めて活動しております。
 主な代表的事業の1つに「1%の分かち合い運動」といった、自分の持っている身近なものから寄付をするといった取り組みがあります。例えば、禁煙して節約したお金の1%やご祝儀の1%などから寄付を始めましょうという活動です。この他にも寄付者の名前を対象物につけたり、寄付自体をプレゼントするといった事業も行ってきました。
 またこれまでに集まった寄付の利息を運用し、年間約90億ウォンを他の約1千ものNPOや市民団体に寄付してきました。
 「希望は負けないキャンペーン」のように、市民団体を励ますキャンペーンも行っております。これは韓国の政治的背景も関係しており、保守党が政権を握り市民団体に圧力がかかったという影響もあります。
 そんな韓国では現在、寄付は一般の人々の日常になりつつあります。
 そのひとつに、市民だけで寄付文化を普及させる活動の中で「虹箱」というブロック型の貯金箱の事例を紹介いただきました。これは募金したブロック型の貯金箱いくつかを集めれば、病院や家も作れるといった募金事業です。ブロックを沢山集めることで社会に変化をもたらせることができるよう、多くの学校や企業に設置されました。
 このようにBeautiful Foundationの事業はキャンペーンや寄付や募金や支援だけでなく、生活の変化を導くことに焦点を当てています。ひとりひとりが年間1万ウォンを寄付することで166億ウォンの効果があるからです。
 しかしこれらのサービス以上に大切なのは透明性であると考え、毎月Beautiful Foundationのホームページには収支会計を公表しております。スタッフや職員の給与や、寄付金がどこの団体に寄付されたかもわかるようにしております。
 そしてBeautiful Foundationでは支援する人の物語ではなく、寄付する側の方の物語を公開することを大事にしております。これにより、自分でも寄付ができるんだ、という効果を広く伝えられるよう活動しております。

【質疑応答】

Q:集めた寄付金で支援する団体の選定基準は?
A:公募の上で、Beautiful Foundation内と外部の有識者を交えた審査で決定している。

Q:韓国で寄付文化を広める上での障害は?
また、周囲の変化や手ごたえは何で判断しているか?
A:政権の交代による制度の変更や政治的な圧力が一番の障害である。
寄付総額の増加や国際団体の韓国国内における支部の設立などで変化を感じている。

Q:Beautiful work placeキャンペーンに規定やルールはあったのか?
A:具体的な内容や金額の規定はなく自主的にやってもらっている。

Q:韓国国内での寄付に対する世代別の関心の違いは?
A:寄付金額は40代50代が多い、寄付人口では20代30代が多い。

Q:日本の共同募金会のように地域のお金を集める主流となる全国組織は韓国にあるのか?
A:政府が設立した全国組織はあり、年間3千億ウォンの寄付金を集めている。

◎講師プロフィール

ソ・ギョンウォンさん(Beautiful Foundation, Management and Planning Department, Chief Executive Director)
2000年Jamsil Social Welfare Centerに入職。2001年Save the Childrenの企画部門を経て、2004年よりBeautiful Foundationにて、企画広報部門など経験し、 2011年より同部門Chief Executive Director。2012年より現職。
15:20 - 16:35

セッション14・冠講座1

■□■協力:アメリカ合衆国大使館■□■

「戦略的ファンドレイジング」

講師:ティモシー・セイラーさん(インディアナ大学ファンドレイジングスクール校長)
司会:伊藤美歩さんさん(日本ファンドレイジング協会理事・会員/准認定ファンドレイザー)
記録:石井美里

【ファンドレイジングとは】

1) 大変な作業
2) 価値の交換:マーケティングの概念で、顧客や潜在的な寄付者が何を求めているかを理解する。NPOはこれだけお金が必要というところから始まるが、そこからスタートするのではなく、潜在的な寄付者が何を達成したいのかを捉えるとこから始める。
3) マネージメント機能:ファンドレイジングをする人は組織全体の運営にも携わってないといけない。
4) 経営のプロセス:ゴールに向かっていくステップ。目指すゴールを達成することができるという自信を持って進める。
5) フィランソロピー精神:フィランソロピーの定義は、公共の利益のための自主的な行動である。ファンドレイジングはフィランソロピーが目指しているものを達成できる。誰かのためにお願いする喜びがある。
6) 人のために行う喜びを伝えるアート

【キーとなるモデル】

1) 価値の交換:マーケティングの観点から、お客様の欲する物を理解する。
寄付者がNGOに提供するもの:時間、専門知識、お金
NGOが寄付者に提供するもの:NGOに自分も所属しているという所属意識、手伝うことが出来た満足感、NGOに属することで世の中にインパクトを与えることが出来た達成感、寄付したお金がどういう風に使われたのか認知、結果が認められる、自分も参加できたという参加意識、貢献できた幸福感。
寄付者のモチベーションや貢献の気持ちについての研究結果は、寛大に寄付した人はより健康で長生きする調査結果が出ている。

2) 関係性の発展プロセス
ビルゲイツ夫妻や、オプラウィンフリー、マイケルジョーダンなど、どんなに裕福な人であっても、組織に関心がなければ寄付はしない。
1つステップが上がる度に、関わっている人は減少する。(潜在的寄付者>実際の寄付者>1回限りの寄付>リピーター>前回より多く寄付してくれる人)ステップ毎に取り組むことが大事。

3) 寄付者のピラミッド
関係性の発展プロセスに寄付を募るための戦略を付け加えたもの。一般的にどういった方法で第一回目の寄付をしてもらうかを表す。


【ファンドレンジグが持続的に継続するために必要なもの】

1) プログラムやサービスが売れるものでなければならない。寄付者が求めているものを提供していなければならない。
2) 情報を提供する。なぜ活動をやっているのか?なぜ大切なのか?を伝える。
3) 実行可能な計画を持つ。組織立ったファンドレイジングはより多くのお金を集める。
4) 関わっているすべての人が指導力を発揮するのが理想的。自分たちも自ら寄付をしようとする意思、他の人に寄付をお願いする意思がなければならない。
5) 高いレベルの説明責任を果たす。ファンドレイジングを行っている組織の多くは、感謝状を贈らない、どういう成果があったのか報告を怠っている。これでは、寄付者はより寄付しようという考えは起こらない。


【質疑応答】

Q 寄付者ピラミッドの人数的の割合は?
A 大口寄付者は寄付者の5~15%。トップの遺贈者は4~5%。トータルの寄付者の割合で考えると少ないが、金額で考えると毎年寄付してくれるトップ10%の方で60~70%を占める。建築物や装備の寄付をしてくれる方の金額はさらに大きくなる。

Q 大学で寄付活動に数年参加している。今回は個人の話しだったが法人はどうか?
A 企業の関わり方はやり取り、関与の在り方は変わってくる。個人的レベルでの関係性を高めることで、ファンドレイジングは成功する。アメリカでは85%のフィランソロピーは個人、5%は会社、10%は財団からの寄付。寄付者のベースは多様化した方が良い。現在、企業からの寄付で一番成功しているなら、継続しつつ次の潜在寄付者へベースを広げていって欲しい。

◎講師プロフィール

ティモシー・セイラーさん(インディアナ大学 ファンドレイジングスクール 校長)
アメリカでNo.1との定評のファンドレイザー養成学校インディアナ大学ファンドレイジングスクール校長であり、世界で最も多くのファンドレイザーの育成に関わり、ファンドレイザー養成の第一人者。

セッション15

「ソシモ(SOCIMO)論」

~社会を巻き込む発想をもつためには

講師:山名清隆さん(ソーシャルコンテンツプロデューサー 株式会社SCOP 代表)
司会:福田文さん(日本ファンドレイジング協会会員)
記録:本田あゆみ

【山名さんの講演】

株式会社SCOP代表として、公共広報や企業PR領域で独自のプロジェクトを展開している。世の中に役に立つプロジェクトを行い、人の関心・興味を集めて社会を動かすことが目的。今回は自身が提唱しているソーシャルモチベーション(SOCIMO)論について話しをする。

出会いとアイデアは似ている。DEAI、IDEA。自分と相手との間にアイデアがある。I(私)の位置が違う。私の位置を変えるだけで出会いがアイデアになる。

人はなぜ世の中的なことに挑戦し始めると強い動機と自由な創造力を発揮するのだろうか。社会と個人がダイレクトにつながる時、人はこれまでにない大きな力を発揮する。地域を超え組織を超え自分を超える人がいる。その人の中に湧く社会を動かす力はどこから来るのだろうか。ひとりの人が社会にポジティブにアプローチしていく動機をソーシャルモチベーションと考えます。このソーシャルモチベーションを略してソシモ(SOCIMO)と呼んでいます。人の動機としてマネモ(お金が欲しい)、フェイモ(有名になりたい)が挙げられますが、プロジェクトを進めるに当たっては、この2つとソシモを回していくことが大事です。この会に集まっている人はまさにソシモっぽい人で、最近ソシモっぽい人・ものにいいなと思う人が世の中全体に増えて来ている。

自身の活動例として、日本愛妻家協会による「日比谷の中心で愛を叫ぶ(ヒビチュウ)」、「キャベツ畑の中心で愛を叫ぶ(キャベチュウ)、ごめんプロジェクト(後免町)や、さらに東京スマートドライバープロジェクトの紹介をする。ヒビチュウやキャベチュウはその活動の様子が日本だけではなく海外でも報道され、かつ日本全国の色々な場所で展開されている。お金を掛けなくても面白いニュースを作れば自然に情報が広がって行くということが分かる。その際に、情報を発信しながら面白いほうに発展させていくことがポイント。大事なのは自分から一歩踏み出して実行に移し、自分の空間を変化させることで、司会でもなんでも自分でやってみること。「ファンドレイザーだから」と言い訳して表に出ないのは駄目。前に出て発信する事。日本愛妻家協会では、「やってみる」「出してみる」「聞いてみる」「捨ててみる」「なってみる」という愛妻家テミル原則を掲げている。馬鹿みたいに一所懸命やっていると、忙しい人にも関心を持ってもらえ、ボランティアやインターンも集まる。

【質疑応答】

Q.御免町で野菜を育てて、謝るときに「ごめんやさい」と渡すのはどうか?
 また、御免町から伊野まで日本一長い区間(全長28km)を走る路面電車があるので、夫 
 がその区間ごめんと言い続け、到着地点の伊野で妻に「いいの」と言ってもらうプロジェクトもやってみたい。
A.いいと思う。ごめんプロジェクトのメンバーに入って下さい。

Q.ホワイトデーに叫ばれキャベツを贈るのはどうか?
A.ぜひ叫ばれキャベツマーケティング担当でやってみて欲しい。

Q.ソーシャルモチベーションを山名さんの思いを汲んで広めるためには?
A.定義はないので、自由に広がっていくと良い。大事なのは社会貢献というよりソシモと 
 呼ぶ方が何かいい感じがするという事。ソシモっぽいものや人にいいなと思う人が増え  
 ていけばいいと思う。

Q.地元で愛を叫ぶ企画をやっても良いか?
A.自由に開催可。語呂を良くする事と、史実や事実を基に冗談をちょっと加えるのがポイント。また、イベントを企画するにあたって参加者を尊重する事が大切。


◎講師プロフィール

山名清隆さん(ソーシャルコンテンツプロデューサー/株式会社SCOP 代表)
国際博覧会ディレクター、米国食文化情報誌編集長、テレビ番組キャスターなどを経て広報企画会社スコップを起業。公共広報・企業PR領域で独自のプロジェクトを展開。近年は、人の中にある社会的動機を高めて多様で創造的な連携を生み出すSOCIMO(ソーシャルモチベーション)マネジメントを提唱している。東京スマートドライバープロジェクトプロデューサー、日本愛妻家協会事務局長など。

セッション16

「愛と感動のファンドレイジング」

講師:長岡秀貴さん(侍学園スクオーラ・今人)
司会:鐘ヶ江由香さん(日本ファンドレイジング協会会員)
記録:平井佑樹

【侍学園スクオーラ・今人の紹介ビデオの上映】

長野県のフリースクール(民間の教育機関)。年々増加する引きこもりや二―ト、3万人を超す自殺者。これに歯止めをかけるべく設立されたのが、侍学園スクオーラ・今人。同校では、「基本的な生きる力」を自ら探すサポートを一人一人に合わせて行い、生徒の社会的・経済的な自立を促している。

【長岡さんの講演】

NPOの数は増加傾向にあるが、その多くが経営難に陥っている。それは「NPOで収益を上げることに対する罪悪感や誤解」によるものである。人々は社会的使命感や社会奉仕精神によってNPOを立ち上げるが、そこでカベに直面する。資金源を見つけられない、または確保できないという問題である。そうした様々な制約・しがらみによってどんどん事業が限られたものになっていき、結局、「自分ががまんする」ことつまり自己犠牲によって、なんとかNPOを経営しようというリーダーが多い。この現状を変えないといけない。
では、資金源をどこに確保すればよいのか。それが寄付である。
日本とアメリカの寄付金額は約50倍もの差がある。日本人の寄付に対する認識は薄い。この現状の責任は寄付を募る側にもある。その理由は「用途等の情報不足」と「寄付による社会貢献感の不満足」である。せっかく寄付をしたとしても、それが一体何に使われているのか。また寄付によって本当に社会に役に立っているのか。こうした疑問が日本に寄付文化が浸透しない原因なのだ。
これらを解消するには、募集者から寄付者への丁寧なフィードバックが必要不可欠である。寄付による社会貢献活動への誘導がNPOの役割である。だれもが無理なく気軽に社会貢献活動に参加できるよう、努力しなければならない。そのための、NPOリーダーの仕事は以下の4つがある。
(1)現場業務の統括
(2)人材や資金の開拓
(3)メディアを通したPR
(4)行政へのアドボカシー
これらを通して常に社会に自分たちの活動を社会に還元していくことが大切なのである。

【THE サムガク流ファンドレイジング極意】

・寄付してくれた方の「想い」を大切に!
 たとえ1円でも、大切なお金を“預かって”いるのです。責任を持って社会貢献に役立てましょう。
・決して驕らないこと
 目標を持って社会貢献活動に従事するのは立派な事ですが、決して驕ってはいけません。寄付をいただいて、自分たちが代わりに実行しているという謙虚な気持ちを忘れない事。
・喜びの提供。
 「寄付をすることで社会貢献できた!」というお返しを支援者に対しておこなう。
・win-win-win
 3つのwinをもつ事業を確立すること。需要と供給だけの利害関係でなく、第3者に幸福をもたらす事業(サムガクの場合は若者への就労支援)。
・インターネットの活用など、スピーディーな事業システムの整備。

【質疑応答】

Q:NPO立ち上げを考えている。アドバイスを頂きたい。
A:失敗はたくさんした。しかし、失敗は次に失敗しないための学びであって、同じ過ちを繰り返さなければいいと考えている。やっておいて良かった事は、理事会。5000円持って飲み会をするが、会費は抑えめにして運営費として積み立てていた。貴重な財源になるし様々な業界人が集まっていたので、何か企画する時に助け合う雰囲気もできた。


◎講師プロフィール

長岡秀貴さん(NPO法人侍学園スクオーラ・今人代表)
NPO法人侍学園スクオーラ・今人理事長、NPO法人長野県NPOセンター理事、一般社団法人宿泊型自立支援実施団体協議会理事、厚生労働省委託事業地域サポートセンター実施責任者、合同会社ハイド代表取締役、株式会社J-Factory取締役、など多数兼任。

セッション17

「Run for Peace」

~走ったり、歩いたりすることが誰かのためになる

講師:秋田稲美さん(一般財団法人 ラン・フォー・ピース)
司会:矢崎芽生さん(日本ファンドレイジング協会会員)
記録:砂盃実

【秋田さんの講演】

はじめに、私(秋田稲美)どんなことしてきたか、
大学卒業後、いわゆる株式会社(大手生命保険会社)で働いて営業という、数字を追いかける仕事をしてきた、27歳の時個人事業主として独立、32歳のとき起業してずっと株式会社の経営を10数年やってきた。現在、私は一般財団法人ラン・フォー・ピース協会、一般財団法人ドリームマップ普及協会、株式会社エ・ム・ズ。3つの団体の代表をしている。

ドリームマップという、こどもが夢を描くというむツールを拡げる活動を企業のCSR活動として行っていた。それは意味もあり楽しい活動ではあるが、オーダーがひろがればひろがるほど、持ち出しも増え、苦しくなってきた。これがファンドレイジングを考えるきっかけとなった。

自らも走り、経験した、東京マラソンや名古屋ウィメンズマラソンなど様々なマラソンを大会をみると、マラソン人口など年々増加してきている。また、アスリート的な「競う」大会も多いが、走ることを「楽しむ」人も多くなっており、そんな大会も多い。
みずから参加費を払って、楽しんで参加する大会。その規模が大きければ、その一部でも、チャリティに回れば、それだけ、おおきなものとなり、その意義も深くなる。

多摩の河川敷で行われている「パラカップ」マラソン大会を参考に、「自分たちにあった適正な規模で」と考え、地元の名古屋で、自分たちのドリームマップの活動資金あつめる目的で、ランフォーピースのイベントをはじめて行った。その成功体験を踏まえ、その後のいくつかの大会の実績をつみ、そこから運営マニュアル的なものができ、公開することとなった。

Run for Peaceは、資金調達・活動報告・人材育成ができる、一石三鳥のチャリティプログラムである。Run for Peaceのイベントは、それぞれイベントごとに独立した実行委員会が独立採算制により運営する。協会は、ウェブサイトの管理、運営マニュアルや情報提供など、その後方支援を行う。

この活動の目的は、資金集めファンドレイジングだが、「忘れていたもの思いだして欲しい」という目的もある。それは、「運動する」ということを通じてぐっすり休む人がふえて、人にやさしい人がふえていく、そんな活動を広めていきたい。

動機づけの二つのアプローチに、これをしないと大変なことになる「対比型」と、これするとこんなに良いという「目的型」の二つがある。短期的に目的を達成させたい場合には対比型のアプローチが、長期的に育てていくような場合は目的型が良いといわれている。

成功するファンドレイジングは、やっている本人が楽しんでいる。そんな、ランフォーピースの活動を広めていきたい。

【質疑応答】

Q.ランフォービースに参加された人は、どんな動機や思い、またきっかけで参加されているのか?
A.走りたい人が、たまたま場所、日程などの都合で参加したりすることもあれば、知っている人に誘われたりする人もいる。結果として、楽しく走ったり歩いたりすることで、チャリティになるということに共感してもらっている。

Q.警察への届けや事故などへの備えなどは?
A.この規模では、警察への届けは推奨されているが義務ではない。公道を走る場合には、ランナーは交通を止めるのではないので。大人数の場合には、出発時間を複数設定したりして、ランナーが固まらないような工夫をしている。また、ボランティアにはAEDの講習を義務付けている。

Q.ランフォーピースとしての収入はどうしているのか?
A.ランフォーピース本体は、事業収入で運営。具体的にはコーズマーケティングの事業で、主にはフェリシモという通販会社の初心者ランナー向けグッズ開発、監修を行っている。


◎講師プロフィール

秋田稲美さん(一般財団法人ラン・フォー・ピース協会 代表理事/一般社団法人ドリームマップ普及協会 代表理事)
夢をかなえる目標達成ツール、『ドリームマップ』。チャリティラン&ウォークの仕組み『Run for Peace~世界を結ぶ私の一歩~』を考案。ソーシャルビジネスの重要性に着目し、社会的課題への解決をボランティアの力のみに依存することなく、ビジネスとして成り立つ「仕組み作り」「働き方」を模索している。著書として、「自分をひらく朝の儀式」「自分をゆるめる夜の儀式」(かんき出版)「そろそろ走ろっ!」(ダイヤモンド社)など多数。

セッション18

「アートNPOのファンドレイジング」

講師:塩見有子さん(NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ(AIT/エイト) 理事長)
   若林朋子さん(公益社団法人企業メセナ協議会 シニア・プログラム・オフィサー)
司会:戸田由美さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:高坂知子

【若林さんの講演】

助成対象となる芸術とは何なのか。ビジネスとして成り立っていくエンターテイメント性のあるものではなく、経済の原理になじまない芸術もあります。その非営利芸術の特徴を把握する必要があり、非営利芸術でも、非常に社会的な価値があり、残していきたい、将来に伝えていきたいと期待の持たれたものが助成される対象となると考えられます。
私たちは、助成対象を言葉にして(言語化)、説明できるようにしていかなければならず、言語化は必須です。

アートサポートの全体像を把握しましょう。大きく4つの区分があります。公的サポート(国、地方自治体)、民間サポート(企業、市民)です。これからの活動を考えたとき、各々の良し悪しを書き出すなど、分析することが大切です。民間(企業)には、協賛、寄付、非資金支援、広告、財団からの助成金があります。

企業へのアプローチのポイントは、まずは事前準備(企業側とNPO側の目的があっているか確認する等)。企画書、予算書は丁寧に書きましょう(企業からの問いに答えているか等)。企業にも判断をする時間が必要なため、スケジュールは考慮して立てましょう。企業の募集要項から、彼らのキーワードを読み取り、企画書等に反映させる等のポイントがあります。 

【塩見さんの講演】

AIT(エイト)の紹介をしますと、設立の目的は、現代美術のしきいが高い、わかりづらい、難解といわれており、皆さんが面白いものだとして、アクセスできる場、学ぶ場、アーティストに出会えたり、アートについて議論できる場を提供していくことです。
我々は、制作側ではなく、展覧会をつくる集団で、どう収入を得ているのか、とよく聞かれますが、2つ主にあります。アートの教育プログラム(MAD)とアートレジデンスになります。

アートの教育プログラム(MAD)は、立ち上げのときから行っており、AITのスタッフ等メンバーの人が持っている知識や経験を、ソフトコンテンツ、教育という形で、多くの人に提供することによって、受講料をいただきながら、実施費用としてAITの活動を支えています。

アートレジデンスは、海外からのアーティストを招いて滞在してもらっています。彼らの創作やネットワークづくりの支援活動をしています。財団や行政から助成金や補助金、企業からお金をいただきながら運営しています。レジデンス特徴の一つとして、外国の団体とパートナーシップを組んでいます。日本の団体からは、2003年にトヨタ財団からいただいたのが初めてで、それまでの実績から、柔軟に対応していただき、助成金をだしていただくことになりました。レジデンスは、公的や民間、複数のソースからお金をいただいていて、バランスもよく、事業を継続しています。

【質疑応答】

Q:企業メセナ担当の立場になった提案ということがでたが、企業の立場になかなかなれない。提案の事例があれば、教えてください。
A:(若林さん)企業については、ホームページを見て、情報を得ています。また、企業のイベントにいき、担当者を捕まえて、話を聞いたりしています。提案の際には、企業の話を聞くことも大切です(困っていること等)。また、市民などの声を企業へ還元することも有効でしょう。

Q:言語化のほかに、数値化について、アドバイスがあればお願いします。
A:(若林さん)数値化は企業へのプレゼンにも必要です。日頃からできるだけ数値化しています。例えば、参加人数などの人数、取り上げられたWEBサイト数など。定性的な情報も蓄積しています。活動にかかるエピソードをデータ化しています。


◎講師プロフィール

塩見有子さん(NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ(AIT/エイト) 理事長)
学習院大学法学部政治学科卒業後、イギリスのSotheby’s Institute of Artにて現代美術ディプロマコースを修了。1996年よりナンジョウアンドアソシエイツにて企画やマネジメントを担当。2002年、仲間と共にNPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]を立ち上げ、代表に就任。アーティスト・イン・レジデンス事業や企業のメセナ活動に携わるほか、組織のマネジメントを行う。

若林朋子さん(公益社団法人企業メセナ協議会 シニア・プログラム・オフィサー)
1999年より同会勤務。企業が行う文化活動の活性化と芸術文化振興の環境整備に取り組む。これまでに企業メセナの調査研究、政策提言、税制面から文化活動への寄付を促進する「助成認定制度」、東日本大震災芸術・文化による復興支援ファンド「GBFund」、各種コーディネート(トヨタ・アートマネジメント総合情報サイト「ネットTAM」)等を担当。

セッション19

「オフィスがなくても寄付は集まる!クラウド事務局のファンドレイジング」

講師:太田智子さん(NPO法人マドレボニータ)
司会:黒岩雄二さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:佐野彩

【太田さんの講演】

<マドレボニータの活動>

マドレボニータは、見落とされがちな女性の出産後の心と体のケアの大切さを伝えるとともに、ケアのプログラムを提供しています。
マドレボニータの特徴は、「オフィスがない」ということです。9人の有給スタッフは、全員が幼い子どもを育てながら、それぞれのライフスタイルに合った勤務時間でワークシェアリングをしています。インターネット上でデータを蓄積・管理し、共有できるクラウドの仕組みを使うことで事務局を運営し、全国の理事、スタッフやプログラム・インストラクターと仕事を進めることが可能になっています。
産後ケアのプログラムの受講料は参加者の負担となっていますが、多胎児や障がい児の母親などを対象に、受講料の補助や介助ボランティアなどのサポートを提供するため、2011年3月、「マドレ基金」を立ち上げました。試行錯誤しながらファンドレイジングに取り組んだ結果、ほぼ無いに等しかった寄付は、年間140万円近くにまで増えました。

<マドレボニータのファンドレイジング>

マドレボニータの寄付のサイクルは以下となります。
① 寄付を呼びかける
公式サイトやブログ、Facebookファンページ、Twitter、会員向けメールレターなどによって、「こまめに、気軽に、複数の方法で」呼びかけます。

② 寄付を集める
クレジットカード決済(CANPANペイメント/メンバーズ)、JustGiving、マドレストア(ネット上の「レジ募金」)、クリック募金など、オンライン寄付の方法を複数用意します。

③ 寄付を使って活動する
基金利用者の申込情報、活動の進捗をクラウド上で管理することで、関係者間で情報を共有・蓄積します。

④ 受益者の声を集める
基金利用者へのオンライン・アンケート、各インストラクターによるブログでの報告などによって、受益者の声を共有します。

⑤ 実績の報告(①とセット)
①の方法の他、メールレターや紙媒体の通信を支援者に届けることで、「こまめに、気軽に、複数の方法で」報告し、活動への共感や活動に関わりたいという気持ちを喚起して貰います。

⑥ 内部の情報共有
クラウド型データベース、Skypeを利用した報告会やミーティング、Skypeのチャット機能を利用した「給湯室チャット」、メーリングリスト、Facebookグループなどによって情報共有を徹底し、寄付のサイクルをまわします。

<まとめ>

クラウド型ファンドレイジングのポイントは、スタッフ全員が使えること、複数の方法を柔軟に組み合わせることで相乗効果を図ること、パーソナルなメッセージのやりとりやオフラインの場を大事にすることです。そして寄付のサイクルの一連のステップを連動させ、多方向への継続的でこまめな情報のやりとりを行い、全員が当事者意識を持って継続的に取り組める体制を整えていくことが大切だと思います。

【質疑応答】

Q. クラウド事務局の体制は設立当初から設計・構築されていたのか。
A. 当初からではない。導入したときは、IT関連の方にプロボノで協力していただいた。試しに使い始めて、良かったので継続して使っているツールも多い。

Q. 組織の上の方のレベルでの意思決定が、フラットな情報共有にそぐわない場合は情報にフィルターをかけるようなこともあるのか。
A. 例えばFacebookグループによって登録されているメンバーが異なるなど、多少のフィルターはあるが、他の団体に比べると少ないのではないかと思う。

Q. 勤務時間や給与はどのように管理しているのか。
A. 給与は時間給で、勤務開始時と終了時に、その日の作業予定・報告とともにメーリングリストに投稿する。


◎講師プロフィール

太田智子さん(NPO法人マドレボニータ ファンドレイジング担当/准認定ファンドレイザー)
慶應義塾大学文学部(社会学専攻)卒業。総合印刷会社でダイレクトマーケティング業務7年、人材紹介会社でキャリアアドバイザーや企画スタッフを4年半経験。妊娠中に退職、専業主婦になり長女出産。2010年マドレボニータの産後ケアプログラムを受講し、その後ボランティアとして活動に参画、2011年4月事務局スタッフに。現在、団体のオンラインストアの企画・運営とファンドレイジングを担当。

セッション20

「遺贈寄付を受け入れるには」

講師:早坂 毅さん(税理士/行政書士/横浜市立大学 講師)
司会:江口 聰さん(日本ファンドレイジング協会会員/認定ファンドレイザー)
記録:岩井静花

【早坂さんの講演】

「遺贈」という言葉には遺言による贈与のみならず、相続人から、相続財産を相続会社へ寄付することも含まれる。

遺贈寄付をするためには、有効な遺言書を作成する必要がある。遺言書には公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言の3種がある。公正証書遺言は、多少費用がかかっても安心・確実である。また、ご逝去後の遺言の執行に関して、遺贈された財産は非課税となる。あるいは、相続人が申告期限(没後10か月以内)の間に寄付をした場合も非課税となる。

遺贈により財産をのこす人は今後増加していくだろうと予測しているが、その主な要因は生涯未婚率の増加である。また、カミングアウトするGLBT (ゲイ、レズビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の増加も要因の一つ。日本の民法上、性転換は認められていますが、同性の婚姻は認められていない。従って、財産を贈与したい場合、どちらか若い方が養子になるしかない。また、孤独死の増加に伴い、相続人のいない相続の増加が傾向として挙げられる。

近々、相続税の課税最低限が5千万から3千万に下がる。一般人でも、全財産が3千万という額に達するケースは少なくない。つまり、遺贈寄付は富裕層だけの話ではなく、より身近な話になりつつある。

土地・建物をもらった場合、約10年間はその事業目的のために使わなければならないという制約がある。つまり、貸すことも、売ることもできないという事。また、修繕費や固定資産税など、追加予算を避けるためにも、不動産等ではなく、できるだけ現金化して寄付を受け取る必要がある。

最後に、国内における認定NPO法人への寄付状況の調査結果では、遺贈者は「誰かに相談したい・・」という思いを持っており、相談機関の必要性を感じた。弁護士や税理士だけではなく、僧侶や神主、社会福祉士など、「自分の思いを残す」ために相談相手を選ぶことも重要。今後、税法上の曖昧さ、寄付税制の分かりにくさを改善する必要があると思う。

【質疑応答】

Q.生前贈与の場合と遺贈の場合の寄付控除について
A.個人間では、もらった人に贈与税がかかる。営利法人では、法人税が相手にかかる。 非営利法人では、基本的に双方ともに税金はかからない。(収益事業に対する寄付以外)

Q.海外オフィスのように、活動自体をおこなう団体と、寄付を受け取る団体とで分けて日本でオフィスを運営することは可能か。
A.寄付を集めるだけなら問題はない。特定の財団が特定の団体だけに継続的に助成金を出すことは、日本だと実現しにくい。

Q.市民後見人となり、NPOとの橋渡しをすることは実現可能か。
A.ある団体の支援者になっている場合、その団体を外す必要がある。よって、特定の団体を指定した場合、裁判所に立証することが難しい。

Q.相続税が発生する際、最初から遺贈しようと考えているのか、相続を考えている段階で遺贈という選択肢を考えるのか。
A.最初から相続人が意志をもっているというよりは、多くの場合、分けにくい、あるいは使い道があまり無いということで、遺贈を選択する。

Q.広報活動の促進についてのヒントは?
A.先進事例を真似し、ターゲットゾーンを持つ。増加している外国からの寄付に応え、ホームページを外国語でも作る。


◎講師プロフィール

早坂毅さん(税理士/行政書士/横浜市立大学 講師)
1998年よりNPO法人の設立、税務、会計に関与する。大学院では、非営利法人会計、公益法人の税務の研究を行い、経済学修士、博士課程満期退学。NPO法人の設立約40件、認定・仮認定申請6件(国税庁・都庁)。2011年秋より2012年3月まで全国の遺贈・相続の聞き取り調査を実施した。遺贈を増やす仕組みを構築中。
17:00 - 18:15

セッション21

「メルマガ×ブログ×ソーシャルメディアで共感と支援の和を拡げる」

講師:久米信行さん(久米繊維 代表取締役社長/CANPANセンター理事/社会貢献支援財団 理事)
司会:畠健太郎さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:有木梨沙

【久米さんの講演】

CANPANセンター理事・ブログ大賞審査委員長をしております。ブログ大賞で一番印象に残っているのが、第1回ブログ大賞を獲得した「理想の小児がん病院を作ろう」という事例です。自身のお子さんが小児がんにかかり非常につらい思いをし、家族と一緒に心温まる治療ができる夢の病院を作りたいとブログを書いて賛同者を募り、7年かかり8億円を集めて今年病院ができます。

成功しているNPOの人は本を出しています。会社案内より本の方が企業には効きます。本にするにはブログがもってこいです。隠すのではなくオープンにしていくのが重要です。

成功しているNPOの人は幸せそうにしています。そして好きなものがある人が多いです。この場合の「幸せ」とはお金がある人ではなく、①「パラボラアンテナ」がたくさんある人、②「心のズーム力」が発達している人です。この2つはfacebookやTwitterを2~3年やっていくことで高まっていきます。

今までの日本人の感性ではリタイアして何かする・何かを辞めてから何かをすると考えたので、心に重荷がかかり先送りしていました。そうではなくパラレルでNPOの活動をして、一人でいくつもの人生を歩めばいいのです。1日10分でできるような仕事をたくさんソーシャルメディア上に作ればNPO活動は繁盛するのです。

3.11で生活者の意識もメディアも変わりました。すごいプロが作っていなくても愛情のあるアマチュアに共感するのです。当然NPO活動なら2割は偽善と捉える人がいるでしょうが、それを気にするのではなく、みんなが盛り上がるイベントを企画することが重要です。

ICTはいつでも誰でも使えるタダの道具に過ぎません。これを使う人の「知情意」の力で上手く活用できるかどうかが決まります。クラウドサービスで最も大切なのは「知情意」の中でも特に「意」です。必要な知恵を得るには達人から教えてもらえばいいのです。企業にファンドレイジングで訪問する際に事前にどれだけ企業や社長のことを調べ、対談の感動をどれだけ相手に伝えられているでしょうか?ファンドレイザーやトップセールスマンになりたければ知情意の16項目(スライドP.22)が3か月・3年という単位で自動的にできるようにならなければいけません。経営者は名刺交換の時にこの人と付き合っていくかを決めています。だからこそ「ググってウィキして会いにいく」ことが重要で、これを訪問前の5分で簡単にできるのがスマホなのです。最初出すメールも重要で、支援してほしいという内容は一切書かずに相手のことをひたすら書いて、相手が「自分のことをこれほど分かってくれるのか」と思ってくれれば、「北風と太陽」でいう太陽のように一言も支援してくださいと書かなくても相手は支援したくなります。

質の高いfacebookの記事を書いているかどうかも重要です。支援すれば支援者のことをどう書いてくれるかが支援者自身にイメージできるからです。インターネットが進化している今、誰もが情報発信できます。つまり、全員が広報担当であり、マーケティング担当であり、ファンドレイザーなのだという意識が大切なのです。

Twitterやfacebookでまずしてもらいたいのは、今支援してくれている人ともっと仲良くなることです。身近な眼の前の10人を大切にすれば、その10人の後ろにいる100人と仲良くなれる可能性があり、隠れファン層が見つかるのです。

普段を変えることが最も大切です。みなさんの衣食住が世界を変えるのです。何を買い、どのように働き、何に投資していくかをぜひ考えてみてください。


◎講師プロフィール

久米信行さん(久米繊維 代表取締役社長/CANPANセンター 理事/社会貢献支援財団 理事)
イマジニア、日興証券を経て、家業の国産Tシャツメーカー久米繊維工業三代目。日経インターネットアワード、IT経営百選、東商勇気ある経営大賞受賞。ライフワークは、個人・中小企業・NPO・地域をネット活用で元気にすること。明治大学商学部講師、CANPANセンター理事、墨田区観光協会理事、など多数兼任。著書に『すぐやる!技術』『認められる!技術』『ブログ道』『ビジネスメール道』など

セッション22

「ルーム・トゥ・リード徹底解説」

講師:松丸佳穂さん(特定非営利活動法人 ルーム・トゥ・リード・ジャパン)
   ゲーリー・ブレマーマンさん(ルーム・トゥ・リード東京チャプターサポーター/Beers for Booksオーガナイザー)
司会:小川 宏さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:北山未紗

【松丸さんの講演】

ルームトゥリードは元マイクロソフト勤務のジョンウッドによって創設されました。「読み書き能力の向上」「教育における男女格差の是正」をめざし、支援を行っています。ルームトゥリードの大きな特徴は、世界で57か所、100%ボランティアで資金調達を行っているチャプターがあることです。ウェブサイトやソーシャルメディアの運営やイベントの運営、ファンドレイズなどをボランティアやプロボノの方が行っています。また、ボランティアの方が楽しみながら長く続けていることも大きな点です。
ルームトゥリードはさまざまなイベントを行っています。読書マラソンは子供もできるイベントであり、子供たちは本を読むことを通じて社会貢献に参加し、支援先のことを知ることができます。また、ルームトゥリードはフレンドレイズによってルームトゥリードの活動や現地の情報を伝える機会も設けています。ルームトゥリードではさまざまなイベントなどの活動をしていますが、資金調達というのは楽なことではなく秘訣もありません。サポーターの自発的な活動によって支えられています。

【ゲーリーさんの講演】

ルームトゥリードはイベントを行う際に非常にターゲットを明確にしているのですが、Beers for Booksは「全員」を対象にしています。私はルームトゥリードが提供している現地語書籍が一冊約100円であることを知り、ビール一杯につき100円、すなわち本一冊を寄付できるという仕組みにしました。Beers for Booksの成功の秘訣は「Make it SIMPLE(シンプルに)」「Make it FUN(楽しく)」「Make it VIRAL(口コミで)」です。「Make it SIMPLE(シンプルに)」とは、誰でもどこでもできる仕組みのことです。「Make it FUN(楽しく)」は、楽しいイベントをということであり、「Make it VIRAL(口コミで)」はFacebookやTwitterを使った口コミ効果ということです。2007年にスタートしたのですが現在は10か国で開催されています。Beers for Booksには3つの利益があります。一つはルームトゥリードのための資金調達であるということ、二つ目はルームトゥリードを知らない方にも子供の識字の課題やジェンダー格差について広く啓発すること、三つ目は寄付の候補者・長期的な寄付者をつくることです。

【質疑応答】

Q.支援者に対するお礼や感謝の気持ちを表すものとして、支援者の方に活動報告などの情報提供を行っているのでしょうか?
A.〈松丸さん〉Beers for Booksに関しては、ゲーリーが翌日に結果などを参加者に報告しています。ウェブサイト上でも報告は行っております。また、感謝ということについてですが、ルームトゥリードは寄付者とサポーターが同じという特徴があり、サポーターの方にあまり「感謝」いうものを求められていないと思います。「感謝」という形ではないですが、最新情報のアップデートなどは行っております。 

Q.松丸さんはファンドレイズに秘訣はないとおっしゃっていましたが、自発的で長く続けてくれるボランティアの方を見つけることや、寄付者を見つける秘訣があったら教えてください。
A.〈松丸さん〉ルームトゥリードはアメリカンスクールに通っている子供のお母さんが始めた活動がスタート地点です。日本にいる外資系の富裕層の方が始めたことがきっかけということもあり、高額寄付者が多いのかもしれません。また、ジョンウッド自身が天才的なファンドレイザーであり、お金に対して躊躇せず、目的のために熱心になり成果を出すことにこだわっているということがあります。私自身も、現地への支援という目的を考えた上で、「お金をください」とかなりはっきり言います。


◎講師プロフィール

松丸佳穂さん(NPO法人ルーム・トゥ・リード・ジャパン 事務局代表)
早稲田大学卒業後、リクルートに入社。広報や結婚情報誌の編集・企画を担当。出版社社長室を経て、2010年1月にルーム・トゥ・リード初の日本人職員として採用され、日本事務所を立ち上げる。ルーマニア、ロシアなど海外で育ったことから、読書や教育の重要性を身をもって体験。ビジネスと同じようにスケールとスピード感をもって途上国に教育支援をするルーム・トゥ・リードの活動に深く共感。日本で寄付文化を創造すべく日々奔走中。

ゲーリー・ブレマーマンさん(ルーム・トゥ・リード東京チャプターサポーター/Beers for Books オーガナイザー)
シンプルで楽しいファンドレイジングの仕組み“Beers for Books”の考案者。日本初のこのイベントは、2009年2月に東京で開催以来、世界10ヶ国に広がり、これまでルーム・トゥ・リードの現地語書籍14万冊以上の寄付を実現してきた。今ではビールにとどまらず、ワイン(Bottles)やボーリング(Bowling)などバリエーションを増やした“B for Books”を提唱し、様々なイベント開催を行っている。誰でも、どこでも、年齢や収入に関係なく、気軽に楽しくファンドレイジングができる仕組みを考案し、広めることに力を注いでいる。米国サンディエゴ出身、日本に永住。

セッション23

「Social Venture Partnersというチャレンジ」

~10万円寄付して、プロボノで経営支援をするモデル

講師:岡本拓也さん(特定非営利活動法人Social Venture Partners東京)
司会:山田健一郎さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:冨田瑛祐


【 SVP東京とは~そもそも何を目指しているのか~ 】

 SVP東京とは、SVPというアメリカの組織の日本法人で、アジアで初めての加盟組織。SVP は1977年にシアトルで設立され、現在27の組織がある。最近はインドなどアジアに広がっている。

SVP には2つのミッションがある。
1、投資先、支援先のミッションの達成。
2、100名の10万円を支払っているパートナー自身が価値を持つ。
 お互いに成長して、お互いに価値を残していく。コミュニティを作りながら課題を解決するというモデル。

【 SVP東京の仕組み~なぜ、SVPの金額は10万円を支払って、かつ経営支援(時間と専門性の投資)をするのか? 】

 パートナーは会員として毎年10万円拠出。現在は100名ほどいる。そして投資先、支援先を募集し、去年は40団体の中で6団体に投資することを決定。支援先とパートナーでチームとなって経営支援を行う。SVPのモデルは支援先と参画者(パートナー)が共に成長する。起業家とパートナー、パートナー同士の出会い、「テーマ性のコミュニティ」という特徴がある。社会に対して当事者を生み出している。当事者がいると社会はどんどん変わっていく。

 2年間の経営支援は、戦略作り、ファンドレイジング、財務・会計、組織設計・開発、広報、実行にわたる。パートナーのバッググラウンドは、コンサルタントや金融、経営者が多いが、弁護士、公務員、研究者、学校の先生もいる。

【 コミットメントを引き出す仕組み~投資協働先の選定プロセスが、コミットメントを引き出す 】

 投資先の選定プロセスとしては、一次選考でヒアリングや書類選考をする。選考を通じて、二次選考準備の時点で支援先とパートナーでチームができる。二次選考ではチームでプレゼンを行う。

 キャパシティアセスメントツールというSVPインターナショナルのツールがあり、これはマッキンゼーというコンサルティング会社が提供している。これを使い、実際に投資を開始する時点で何が課題なのかをアンケート形式で発見していく。

【 投資先との協働と成果~パートナーによる2年間のコミットメントが投資先の飛躍的成長のきっかけとなる(具体的な事例) 】

 フローレンスは、事業規模4億円以上、従業員は170名、事業収入は3億円、あと1億円は寄付。SVP東京では、主に財務計画を2年間行った。
 マドレボニータは、SVP東京としては制度を整えていく「壁打ち相手」として、月1のミーティング、クラウド事務局の整備などを行った。
 ケアプロ株式会社は、経営のブラッシュアップを行った。毎月の経営会議に出席し、ケアプロ株式会社が株式発行を行い資金調達するという中で、株主になった。

 まとめると、SVP東京の価値としては投資経営先への経営組織の組織基盤の強化が一番となっている。結果としてパートナーが理事として関わり続けるなど社会参画していくケースが多く、社会的な意義に気づいていって、自分の本業と結び付けていく。

【 社会参画による企業ファンドレイズ~中間支援団体による企業からのファンドレイズ 】

 ショートコンサルティングセッションとは、SVP東京が支援先と一緒に、企業のランチタイムに訪問して、企業の社員のみなさんとセッションを行うというもの。

 セッション全体の大まかな流れは、SVP東京の説明、投資協働先の活動概要説明、質問内容の特定、質疑応答、社員のグループワーク、グループワークの説明。

 セッションの良い点としては、企業側には社員の社会参画への意識変革・会社へのロイヤリティ上昇・新規事業開発の可能性の発見があり、投資先側には優秀なビジネスパーソンによるアドバイス、ビジネスセクターからの共感の獲得がある。


◎講師プロフィール

岡本拓也さん(Social Venture Partners東京 代表)
大学時代に1年間休学し、短期留学と海外約30ヶ国の旅を経験。大学卒業後に公認会計士に合格し、監査法人を経てプライスウォーターハウスクーパース株式会社にて企業再生業務に従事。2011年3月に独立し、同年6月よりソーシャルベンチャーへの投資と支援を行うソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(SVP東京)の代表理事に就任。また、NPOカタリバの役員も兼務。経営の現場と支援の両面から、ソーシャルセクターの成長と成熟に尽力。

セッション24

「助成事業を未来に活かす」

~Peace Winds Japanのピースコーヒー事業の成功事例から学ぶ

講師:山本理香さん(Peace Winds Japan)
司会:木内 満さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:平井佑樹

【山本さんの講演】

 Peace Winds Japanは紛争や自然災害の被害を受けた国々で現地支援に取り組むNGOであり、講師自身も世界各国で実務に励んでいる。その中でも、今回は東ティモールでの事業を例に社会貢献活動の組み立て方についてお話したい。
 東ティモールは、インドネシア近隣に位置する国。人口は100万人、国内総生産400ドルの、貧しく小さい国である。そんな東ティモールは長い間ポルトガルの植民地であった。1975年のインドネシア軍の侵攻以降も実質的にはポルトガルの支配下であったが、1999年、インドネシアへの併合派と独立派の内部紛争が始まる。甚大な被害を受け国土は荒れ果てたが独立を果たし、「21世紀最初の独立国」となった。
 Peace Winds Japanは東ティモールで当初、紛争により被害を受けた住宅を再建する支援を行っていたが、次第に経済活動を支援し自立を促す「生活再建支援」にシフトしていく。これは、精米機、自動車修理器具といった商店設備の支援などである。その中にコーヒーの皮むき支援があった。このコーヒーをフェアトレードによってより自立したビジネスにできないか、と言うのが「ピースコーヒー」の始まりである。
 まずは元UCC社員のコーヒー専門家を招き、東ティモールのコーヒーに対する意見を仰ぎ、見事お墨付きをいただいた。東ティモールのコーヒーは、ポルトガルに伝えられて以来ほとんど変わっていなかったらしい。国の貧しさが功を奏したのである。品種改良されておらず、原種に近いコーヒー豆は素朴な味わいが特徴であり、また全て有機栽培で育てられていた。また、紛争からの再建を支援してきたPeace Winds Japanはその「ストーリー」を理解している。これが大きな武器になると専門家に評価された。
 しかし、問題も生じた。
 東ティモールの農業は家庭的でフェアトレードでは商売にならない。収穫量に大きな波があり、品質も低い。豆の熟期は全く無視され、青い豆・丁度いい豆・過ぎた豆が一度に収穫されていた。そしてそのままの状態の豆を言い値で商人にまとめて売っていた。東ティモールの農家は商売の仕方を知らなかったのである。
 そこで、Peace Winds Japanは農家への技術指導を始めた。まずはひとつひとつ豆の熟期をみて収穫をおこなった。当然、熟れ過ぎた豆は諦めなければならないが、これを農家に説明し理解してもらうのにかなり時間がかかった。そして、それまでは収穫したままの状態で売っていたものを加工するように言った。農家に手間をかけてもらい、ぞの分加工賃を上乗せして買い取る約束をした。そして生産者組合の結成を支援し、コーヒーの品質は向上していった。
 当初の専門家の評価は正しく、現在は全国各地の喫茶店や大手チェーン店で東ティモール産の「ピースコーヒー」が楽しめる。もちろん購入も可能。

【質疑応答】

Q.コーヒー事業によって支援が加速したか?
A.お金の寄付にはどうしても波がある。しかし、コーヒーを買う事で支援になるのなら、と購入してくれるお客さんは多い。つまり支援のハードルを下げることでより安定した支援が結果的に可能になった。また、「フェアトレード」という糸口からPeace Winds Japanを知ってもらう機会も増えた。

【参加者からPeace Winds Japanへのアドバイスを考えるセッション】

以下のような案が出た。
・現地へのツアーの企画
・「ピースコーヒー」喫茶店の開設
・菓子などを、さらに加工してみる
・出資・投資システム、事業計画やマネジメントプランなどを確立する。


◎講師プロフィール

山本理夏さん(Peace Winds Japan 緊急対応部長)
2000年にピースウィンズ・ジャパンに入り、東ティモール、アフガニスタン、イラク、南スーダンなど紛争地における人道支援や、スマトラ地震・津波、ハイチ地震、東アフリカ干ばつ、ニジェール食糧危機などの自然災害の緊急支援に関わる。海外での支援経験を活かし、国内でも新潟県中越地震、中越沖地震、東日本大震災で直後より現地入りしている。

セッション25

「社会の期待値をたかめるブランディング」

講師:小林洋志さん(株式会社博報堂 ライジング・イースト・プロジェクト推進室 室長)
   石川えりさん(認定NPO法人難民支援協会 事務局長)
司会:永田賢介さん(日本ファンドレイジング協会会員)
記録:中村亮

【小林さんの講演】

 ブランディングとは一言で「想いをカタチにして伝える」ということであり、その団体がもつ理念、ビジョン、ミッションなどの価値を働きかける活動であります。それは企業や団体の評判そのものを高めることが大切であり、ステートメント、スローガン、キャッチフレーズといったものがとても重要になります。
 ブランディングは、ブランドを的確に伝える方法であり、その価値を維持・向上させる、企業と顧客の間のすべての活動のことを言います。企業の行うブランディングもNPOが行うブランディングも基本的には変わらないが、NPOにおいてはビジョンやミッションを実現するための共有が非常に重要です。

【石川さんの講演】

 認定NPO法人難民支援協会は、日本にいる外国人難民を対象に、当たり前の生活ができるように支援することを目的に99年に設立。主に在留資格が安定してないアフリカ系外国人が日本国内でホームレスとなっている現状があり、凍死者を出さず越冬するという時期的な目標を掲げなければならないくらい深刻な問題を抱えている。支援対象者の増加に伴い自己資金の拡充が必要となったのをキッカケにブランディングを行いました。ブランディングは綺麗なロゴやパンフレットを作るだけが全てではないと考えており、結果として自団体はとてもいいものを作っていただいたが、そこに至る「私たちは何者なのかを考えるプロセス」がとても重要でした。

【質疑応答】

Q:高品質のパンフレットなどを作ると、支援者からそこにお金をかけるべきではないのでは?などの批判があったりしないのか?
A:(石川さん)本来、支援元の意向に沿った使用用途であったので、それを伝えることで理解していただけた。また、しっかりした資料を見て信頼性のある団体と判断してもらうことで支援して頂けているとも考え得る。反対意見の方には、お金の流れの透明性や、実績で見せて説明できるようにしていきたい。

Q:環境問題を取り組んでいたりエコを意識している団体の場合の注意点は?
A:(石川さん)コスト面ばかりを考えるのでなく、消耗品はちゃんと使い切り資源を無駄にしないという行動を意識する。コストとエコ製品とのバランスが現在の課題。

Q:客観的な外部から評価や声を集める方法があったら教えてください。また、そういった観点での、広告会社との付き合い方を教えてください。
A:(石川さん)広告代理店自体が外部視点なので、そういった中での意見は重要。また、サンプリングとして普段接点を持てる家族や知人などの意見も参考にしました。
A:(小林さん)外部にどう見られているかも勿論大事だが、中にいる人(スタッフ)が持っている想いが文章化されているかが大事。

Q:明日から参加者の皆さんが、日常でブランドを意識できる方法を教えてください。
A:(石川さん)どんどん身近な知り合いに伝えたり、コミュニケーションを広げていくことが大切。常に自団体のパンフレットを持参して行動することから始めてみてください。また活動を常に言い続けることが大事だと思います。
A:(小林さん)自らの団体が何を目指して、何をやっていくのかをもう一度きちんと消化する作業をやっていただくことが大事。それがブランディングにつながります。


◎講師プロフィール

小林洋志さん(株式会社博報堂 ライジング・イースト・プロジェクト推進室 室長)
株式会社博報堂 ライジング・イースト・プロジェクト推進室室長。早稲田大学卒業。1981年株式会社博報堂に入社。横浜ランドマークプラザ、大阪ドームなどの都市開発、東京ミレナリオ、スポーツ振興くじtotoの立上げ、2005年からは東京スカイツリーのソフト業務全般を担当。2007年4月より現職。2012年5月開催の東京ホタル実行委員、一般社団法人日本文化デザインフォーラム理事。
石川えりさん(認定NPO法人難民支援協会 事務局長)
上智大学法学部国際関係法学科卒業後、企業勤務を経て2001年より難民支援協会の職員となる。主に調査・政策提言の分野で国内外にて活動。同協会には設立前よりボランティアとして関わり、2008年1月より現職。共著として、『支援者のための難民保護講座』(現代人文社、2006年10月)、『外国人法とローヤリング』(学陽書房、2005年4月)ほか多数。二児の母。

セッション26

「ファンドレイジングで効果を上げるためのコツ&多様な資金調達方法のご紹介!」

講師:田代修弘さん(NPO法人ファザーリング・ジャパン会員)
司会:田中洋子さん(日本ファンドレイジング協会会員)
記録:北山未紗

【田代さん講演】

 ファザーリングジャパンは父親の育児支援を行う団体であり、父親の育児参画による社会の変革を目指します。父親が子育てをすることにより家庭が変わり、企業が変わり、社会が変わっていくという仕組みです。
 現在、社会保障の給付の内訳は高齢者や保健医療が多くなっています。その一方で、児童手当や児童福祉サービスにはほとんど使われていません。さらに、金融機関はお金を持っているにもかかわらず貸し渋って主に国債へ投資しているため、お金が停滞しています。そこでなんとか若い世代へ還流したいというのが私の問題意識です。ファザーリングジャパンはこれまで4つのファンドレイジングに取り組み、マイノリティの意見を代弁するような取組を行ってきました。情熱やチームワークを持たなければ問題へは取り組めないし、社会が抱えている問題のギャップを突くことも必要です。しかし、問題提起ばかりしても世の中の人は目を向けてくれません。そこで、世の中の潮目を読み人の心に訴える必要があります。そのことにより結果が出てくるのですが、その結果のとらえ方が大切です。
 フレンチトースト基金は父子家庭を支援する基金です。ファザーリングジャパンは麻生内閣が定額給付金の給付を発表したのに合わせてフレンチトースト基金を発表し、そのお金の使い道の一つとして提案したのです。フレンチトースト基金の結果は目標金額1億円だったのに対し実際の募集金額は550万円でした。目標は未達でしたが、ロビー活動などを通じて世の中を動かすことができたというところに意義があったと思います。
 さんきゅーパパプロジェクトは父親も産休を取ろうというプロジェクトです。この取組の結果、育児・介護休業法が改正されました。また、俳優のつるの剛さんが育休を取ったことが話題となり、つるのさんをはじめとした著名人の方と一緒にプロジェクトを行うことで話題作りに成功しました。その結果、メディアにも取り上げられるようになりました。タイミングとネーミングが大切であるという事例です。
 タイガーマスク基金は、子供や若者の自立支援を目的としています。タイガーマスク運動が全国へ広がったことをきっかけにタイガーマスク基金を設立し、募集金額は970万円になりました。
 次に、パパエイド募金についてです。これは東日本大震災への支援であり、このミッションは被災地の父親支援や被災者家族の応援です。パパエイド募金はクラウドファンディングという手法を利用しました。また、絵本ライブやバルーンアートによって、地元の子供やパパ達が笑顔になるような活動をしました。絵本ライブで使用した絵本は被災地で購入し、被災地の経済への貢献もしました。クラウドファンディングでの資金集めは一見リスクが無いように思えます。しかし、実際はリスクゼロではありません。サイト運営会社が倒産する可能性や、サイトに掲載したプロジェクトが災害などにより実行できず、その負担を自団体が負う必要が出る可能性があります。また、サイト上で資金調達を達成したとしても収益事業であった場合は税金がかかります。ここも考慮しなければいけない点です。

【質疑応答】

Q.クラウドファンディングシステムであるReady for?はリターンを用意しなければいけないがどうすればいいのでしょうか?また、田代さんのプロジェクトは収益事業であったのでしょうか?仕組みを教えてください。
A.クラウドファンディングには寄付型・購入型・投資型があります。日本のクラウドファンディングはほとんど購入型で、ギフトを買ってもらうというかたちです。ギフトはなにかということについてですが、われわれのギフトは、サンキューレターと報告書・缶バッジ・寄贈絵本への名入れなど値段に応じてさまざまです。


◎講師プロフィール

田代修弘さん(NPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ) 会員)
世の中のお金の流れを変え、志ある人が達成感を得られる社会を創造すべく活動中。一児の父親となり、子ども/次世代が暮らす時代を、金融・財政・パーソナルファイナンスの面から考えたことがきっかけ。3.11以降は、被災地で絵本ライブ・バルーンアート・絵本棚制作を行うキャラバン活動(笑顔の復興支援活動)にも参画。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員。1級ファイナンシャル・プランニング技能士

セッション27

「ファンドレイジングにデータベースを100%活用するDRM、徹底学習」

講師:吉田憲司さん(株式会社ファンドレックス取締役)
   太田智子さん(NPO法人マドレボニータ事務局)
荒木 覚さん(NPO法人WE21ジャパン)
司会:大野博之さん(日本ファンドレイジング協会会員)
記録:藤木淳

【吉田さんの講演】

DRM:Donor Relationship Management(支援者関係性管理)とは、支援者と団体の間にある「関係性」を管理するという事。
「その会員がどういう想いを持ち、どういう事をしてきてくれたのか」、逆に「団体として、その会員に何をしてきたのか」という事を、関係性と呼んでおり、それを管理するのがDRM。

<支援者データベース>

 支援者データベースというと、「エクセルの名簿」という理解を持っている人がいるが、関係性を管理するのは、エクセルでは難しい為、専門のデータベース製品が必要となる。

<支援者データベースでのコミュニケーション>

 データベースでのコミュニケーションについては、コミュニケーションの範囲の3種類(「1対1」「グループ」「マス」)それぞれに対して、コミュニケーションの方向性が2種類(「一方向」「双方向」)あるのでデータベースでのコミュニケーションは計6種類がある。その中で、グループへの働きかけのバリュエーションをいかに増やすが、データベースでのコミュニケーションの肝となる。1対1やマスのコミュニケーションはメルマガ・電話で出来るが、ある特定グループへの働きかけにはデータベースを活用し、「グルーピングをする事」がまずは必要となる。

<支援者データベースの活用>

 人のネットワークが広がり・強化されているという事が、「ファンドレイジングが成功したという状態」という見方がある為、人のネットワークという観点で、データベースの活用を見ていく。

【太田さんからの事例紹介】

NPO法人マドレボニータは、出産後のケアに力を入れている団体で、扱っているデータとしては、1600人/年の受講生の情報・400人弱の会員の情報、そして、ボランティアの情報がある。マドレボニータはオフィスが無く、スタッフには地方在住者もいる為、独自の
クラウドシステムを使っており、情報の管理・共有に役立っている。

<吉田さんのコメント>

 マドレボニータのシステムは、基本的な情報が全て記録され、また、システムを見ると、団体の状況が全て分かるようになっており、団体の中心的存在になっている。

【荒木さんからの事例紹介】

WE21ジャパンは、神奈川県でリユース・リサイクルショップの運営をし、その収益で海外支援をしている団体。昨年、セールスフォースを導入し、新規寄付者獲得・アンケートによるアドレスの獲得/メルマガの発行・イベントへの寄付者の勧誘を行い、その結果、寄付者の実績が可視化・共有化できるようになった。

<吉田さんのコメント>

 システム導入前は、情報が適切に記録・管理されておらず、ネットワークになっていなかったのを、一つのデータベースに統合し、情報を記録・管理するという所からスタートした事例。情報が統合され、関係性が見えてきた事で、ネットワークを利用する事が出来てきている。

【質疑応答】

Q.実際の導入段階で、苦労した点を教えて欲しい
A(荒木さん).導入段階の話では無いが、WE21ジャパンは昨年システムの導入を開始したが、引き続きどうやってシステムの運営・更新をしていくのかを悩んでいる。
A(太田さん).マドレボニータは、毎月、システム開発者と打ち合わせにて、「要望を伝え、開発者からアドバイスを貰う」という事をやっているという事で、継続的に外部からアドバイスを受けるという事が必要だと感じている。

Q.システム構築の話をする際に、NPO側が気をつける事は?
A(吉田さん).NPO側でも、具体的なシステムのイメージを持ち、そのイメージを開発者に伝える事。具体的な要求事項を伝えないと、開発者の作りやすいシステムになってしまう。

Q.データベース導入にあたり、事務局の担当者は、どの程度の知識を持っている
必要があるのか?
A(吉田さん).知識やスキルでは無く、担当者が「どれ程、時間に余裕があるのか」が重要と考えている。ツールとしては、難易度は高くないが、思考錯誤・勉強は必要な為、ある程度の時間的余裕が必要。


◎講師プロフィール

吉田憲司さん(株式会社ファンドレックス取締役)
日本有数のファンドレイジング専門コンサルティング会社である株式会社ファンドレックスで、非営利団体向けの支援者関係性管理(DRM)システム(寄付者データベース) の開発に、2008年7月の同社設立から取締役として携わる。以前は2001年より、大手コンピュータメーカーでITに係る戦略策定やコンサルティングに携わっていた。2012年ファンドレックスとして、株式会社セールスフォース・ドットコムよりPartner Award 2012を受賞。
18:45 - 20:30

「懇親会」

会費/5000円

3月10日(日)

9:30 - 10:45

セッション28

「『もっと伝える! もっと伝わる!』広報ツールの見直し道場」

講師:白土謙二さん(株式会社電通 執行役員/日本ファンドレイジング協会 副代表理事)
司会:山田勇さん(日本ファンドレイジング協会会員)
記録:藤木淳

【白土さんの講演】

<人から人へのコミュニケーション>

まず、「人は、他の人の話を聞いていない」という事を理解する必要がある。団体は、メッセージを送ると、読んでくれる・理解してくれる・寄付してくれるという期待をするが、受け手側は、読まない・理解しない・寄付しない可能性が高い。
また、人は、複数の事は覚えられない為、「言いたい事は絞る」という事が重要。まずは、一つに絞り、もし他に言いたい事があれば、別の機会に伝えると良い。

コミュニケーションには、送り手と受け手がある。
メッセージを送る際、「自分の事を考える」だけでは無く、「相手の事を考える」事が必要。まず、自分達が何をしているのかを理解し、その中で、「何を」伝えるが重要。

<団体から人へのコミュニケーション>

団体にも、「人柄」があるが、その認識は人によって違う事がある。
もし10名の団体で、「人柄」の調査をしたら、各々が異なった認識を持っている事が多い。それは、団体を構成する各々が持っている「想い」が異なっている為であり、その「想い」を揃える事は意外に難しい。

また、活動の内容や、寄付者の気持ちは日々変わっている。
歴史がある団体ほど、設立当初から現在に至るまで、団体を巡る様々な事項が変わっている事が多い為、「自分達はどこから来て、現状はどうなっていて、今後どこに向かうのか」について、円卓会議を開催して定期的に確認する事が必要。

<伝えるコツセミナーに学ぶ>

何を伝えるかという事が決まれば、次は、どうやって伝えるかを考える。
私も色々な団体の文章を読むが、「文章で書いている」ものが多い。そこで、「音で書く」という事が重要。
通常、声を出さずに読んでいる時も、「音読=頭の中で声を出して読んでいる」為、音で書いた方が良い。そして、書いたものは、一度、声に出して読んでみる。

また、通常、読みにくい言葉は、漢字含有率が高い。漢字の含有率を下げると、分り易くなるが、一方で、文字数が多くなる為、絞る必要がある。また、文字が小さいと読みづらい為、文字を大きくする為にも、やはり文字数を絞る必要がある。

<団体から企業へのコミュニケーション>

現在、企業は、本業を通じたCSRを模索し始めており、「企業のNPO化」が始まっている。企業も元々は、「社会に役に立とう」という志を持って設立されており、元を辿れば、今のNPOと、さほど変わらない為、NPOの活動にも理解を示してくれている。
しかし、「企業のNPO化」が始まっている現在では、「自分達は良い活動をしているから、支援して欲しい」と言うだけでは無く、「相手に何が起こるのか」を伝える事が必要。
具体的には、企業の社訓を見ると、「何を大切にしているのか」が分かる為、その点を踏まえて提案をする。
また、現地に関して詳しいNPOが、企業に対して、色々な情報提供をする事で、win-winの関係性を築く事が出来る。

NPOは、「意識の高い生活者=社会や環境の課題を見つけてくれる、新製品・サービスの糸口を見つけてくれる存在」である為、NPOが企業に対して色々と発信する事は、企業にとってもメリットがある。ただ、その為にはNPOが上手に伝えていく必要がある。

【質疑応答】

Q.円卓会議における、情報公開のリスク・脅威を、どのように捉えているか。
A.新規事業の成功率は非常に低く、失敗する事が多い。
その失敗を公開した団体があるが、その際、支援者の数は全く減らなかった。
それは、失敗要因の分析・今後の対策をセットで公開した為であり、長い目での信頼
関係という点で考えると、プラスの効果を生む。
ただ、その失敗の内容を一度に支援者全員に伝える事はリスクがある為、円卓会議にて、まずは数名の支援社に伝え、「この内容を他の人にも伝えるか」という事を確認・相談する事も出来る。そういう意味で、クローズな円卓会議は有用だと言える。


◎講師プロフィール

白土謙二さん(株式会社電通 執行役員/日本ファンドレイジング協会 副代表理事)
77年株式会社電通入社。以来約20年間クリエーティブ・ディレクター、CMプランナー、コピーライターをつとめ、現在では企業の経営・事業戦略からブランドコミュニケーション、商品開発、プロモーション、店舗開発、イントラネット構築、企業カルチャー変革まで手がけ、戦略と表現の両面から、あらゆる領域の統合的コンサルティングを行う。2009年より現職。第33回カンヌ国際広告祭銀賞(86年)をはじめ、広告賞多数受賞。

セッション29・冠講座2

■□■協力:トラスト60■□■

「信じて託する人生の寄附」

講師:岸本幸子さん(公益財団法人パブリックリソース財団代表理事・事務理事)
   合田政生さん(三井住友トラスト・ホールディング業務部)
   杉山 歩さん(NPO法人リスシステム 代表理事)
司会:蓮村俊彰さん(日本ファンドレイジング協会会員)
記録:小林泰士

1. 岸本さんの講演

 最近では口座解除等ではなく、生前契約での遺贈という形での寄付が増えている。アメリカでは遺贈による寄付が寄付市場の全体の8%を占めている。
 遺贈には寄付の本質の多くを見ることができる。非常にパーソナルであること、人に託して行う社会貢献活動であること、時空を超えて社会貢献をできることなどがある。

2. 合田さんの講演

 信託銀行とは通常の銀行の業務と信託業務(遺言執行・遺産整理等)を行っている。信託とは信頼する人に財産の管理等を託す財産管理制度である。そして寄付(遺贈)と信託を合わせたものがプラント・ギビングである。
 寄付に関する実態として、潜在的に寄付をしたいという人は多いが実際に寄付をする人は少ないというギャップがある。その原因として、寄付金がどのように使われるかわからない、どこに寄付をすればいいかわからないからなどの理由がある。寄付を増やすために必要なこととしては、寄付仲介機能の強化や寄付仲介機能に対する税制の優遇等が必要である。

3. 杉山さんの講演

 リスシステムは生前契約によって自分の意思で自分の人生の幕の引き方を選択できるように支援しているNPO法人である。人が死ぬにあたって一人ではできないことがたくさんあるため、そこをサポートする活動を行っている。
20年前の設立当初は親族がいない人に対しての活動だったが、最近では親族がいるが自分で自分の遺産の使い道を決めたいという人が増えている。
このような事業は信頼がとても重要なので、生前契約決済機構というところで生前契約をきちんと守っているかどうかの監視をしている。

4. Q&A

Q.特定寄付信託を取扱うことの信託銀行のメリットは何か?
A.特にお金をもらっていないので事業単体での収益性は低いが、顧客となる方は基本的に資産が多い人なので、そのような方を顧客にすることがメリットになる。また遺言等の別の仕事につなげることができる。

Q.遺贈を取扱うことは非常にいいことだとは思うが、死を取扱うので非常に行い難い部分がある。何か気をつけていることはあるか?また家族との接し方はどのようにしているか?
A.そもそも遺贈を目的とした活動をしているのではなく、契約者が自分らしく死を遂げるために活動をしていて、契約者の中で財産が余りそうな方にこういう方法もあるという形で案内をしている。
 契約者は、家族と有効な関係を築けている人ばかりではないので、葬式にスタッフが行った時に問題が発覚したりする場合もある。また生前契約をした人同士の交流を促進することで契約者との信頼関係を築いている。遺贈は契約者との信頼関係を築くことによって可能になる。

5. 最後に

○合田さん

 特定寄付信託の課題としては、アメリカと比べ税制などとても遅れている部分が多くあるのであまり使い勝手のいい制度ではない。なので、ほかの方法で寄付を集めたほうが効率がいい。そのため、今後の制度改正をNPOセクターの人とも協力して行っていきたい。

○杉山さん

 信託をすることはこれまでは精神的にとても強い人しかすることができなかったが、これからは社会参画の方法として、社会に意義があるように遺産を使ってもらえることに価値を感じる人が増えてくるだろう。

○岸本さん

まず信託寄付を受けるためには寄付者から信頼されるようになることがとても重要である。遺贈の寄付はいつ起こるかわからないので、受け入れる側が存続していく必要があるため寄付を受け入れるファンドを作る必要がある。また不動産寄付を今後どのように受け入れていくか、そもそも信託業務を受入れることができるのは信託銀行だけでいいのか、認定NPO法人等もできるようになる必要がある等の様々な課題が信託寄付にはある。


◎講師プロフィール

合田政生さん(三井住友トラスト・ホールディングス業務部)
岸本幸子さん(特定非営利活動法人パブリックリソースセンター 事務局長/日本ファンドレイジング協会 理事)
杉山歩さん(特定非営利活動法人りすシステム 代表理事)

セッション30

「『スマートフォン時代』対応!ウェブ活用ファンドレイジング」

講師:菅 文彦さん(合同会社コーズアクション代表/日本ファンドレイジング協会 理事)
司会:鎌倉幸子さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:小林ななみ

【菅さんの講演】

 2008年に日本で初めての募金ポータルサイト“募金屋.com”を公開し、その後はヤフーボランティアの企画・運営を行っていた。2010年には合同会社コーズアクションを設立した。

 ここ数年は、ウェブを使ったファンドレイジングの講演をしてきた。今日はスマートフォンに特化したファンドレイジングの話しをしたい。現在20代の方々は半数以上がスマートフォンを持っている時代になった。2年後には、国民の2人に1人がスマートフォンを保有するという予測も出ている。また、ウェブサイトのアクセス解析システムを使うと、NPO・NGOのウェブサイトでも、スマートフォン等での閲覧率がすでに20%前後に到達している。そのためPC用のウェブサイトだけでなくスマートフォン専用も作るべきでないか、と考えている。だが、そのためには時間もお金もかかるので、どうしたらいいのかということを考えていきたいと思う。次にスマホならではのファンドレイジングの仕方についてお話したいと思う。

 IT系の技術革新は弱者にとっての味方だと思う。15年前であれば、自分の団体の認知を高めるのがとても大変だった。今はウェブサイトやソーシャルメディアの利用などを行うことで、低コストで行うことが出来る。
 では、「スマートフォン専用のウェブサイトを作りなさい」という事か?これは、半分正解、半分まちがい。どんな人にスマートフォンで見て欲しいのか、どんな情報を見て貰って、どうして貰いたいか、という様なユーザーシナリオを持つことが大切。

このシナリオは、以下の枠組みで考えるのが有効。
Attention―気づいてもらう
Interest―興味をもてもらう
Engagement―ネットでサーチする
Desire―気になる
Action―行動する
Share―する


 この様にして作ったユーザーシナリオで、スマートフォンのせいで損なわれているものがあったら、その箇所だけ集中工事を行う。この様にして、携帯用とPC用のサイトを作ったら、スマートフォンかPCで開いているのか判断できるプログラムを使い、表示の制御をする。これで寄付のページだけでも携帯用サイトができる。

 また、クラウドファンディングのサイトでは、携帯用とPC用のサイトも作られるので、これを活用するという方法もある。

 最近では、寄付を目的としたスマートフォンアプリが開発されているので、これを使うというやり方もある。

 スマートフォンの一番の強みはお財布携帯機能。これは、みんなが募金箱を持ち歩いているようなもの。例えば、イベントなどを開催して、参加者にスマートフォンから募金を集める事も考えられるだろう。

【質疑応答】

Q.HPをスマートフォン用のものしか作らない方法はどうだろうか?
A.技術的には可能だが、PCでHPを見ている人は8割程度なので少し心配。トップページに“携帯でご覧ください”と記載するのもいいかも知れない。最近では様々なシステムがありPC用でHPを作成してもスマートフォンで見た時に、勝手にある程度スマートフォン用にシンプルに整えてくれるソフトもある。

Q.携帯端末の方から情報を送ったり募金したりすることは可能か?
A.可能です。課金して匿名で行うこともできます。自動で個人情報を持ってかれることは基本的にはありません。

Q.お金がない団体はブログのみだったり、フリーのソフトでHPを作ったりしていると思うが、そういった団体でもスマートフォン用のサイトを作成することは可能か?
A.アメブロのようにPCで見た時と携帯で見た時とで見やすさが変わるよう工夫されている、スマートフォン最適化アドオン機能などを導入すればとりあえずは問題なく出来ると思う。そういった機能を追加していけば十分お金をかけずに出来ると思う。


◎講師プロフィール

菅文彦さん(合同会社コーズアクション 代表/日本ファンドレイジング協会 理事)
97年に財団法人オイスカに入り、企画・広報業務を担当。01年日本で初めての募金ポータルサイト「ぼきんやドットコム」を公開(05年同サイト終了)。05年にヤフー株式会社で社会貢献・CSR関連を担当。「Yahoo!ボランティア」のインターネット募金の企画運営、「Yahoo!カーボンオフセット」や社会啓発コンテンツの企画。「Yahoo!基金」の設立・事務局業務。10年に合同会社コーズアクション設立。

セッション31

「『日本発』のTABLE FOR TWOが生み出すイノベーション」

講師:小林智子さん(認定NPO法人TABLE FOR TWO International事務局長)
司会:北村政記さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:冨田瑛祐

【目的(Purpose):TABLE FOR TWOの紹介】

 TABLE FOR TWOは、食の不均衡を解消する活動を行っている。10億人は飢餓や栄養不良で食べるものが足りないが、先進国の10~15億人は肥満や生活習慣病という食べすぎの状態。
 そこで、先進国の社員食堂やレストランでヘルシーメニューの提供を行い、その際に20円の寄付を頂き飢餓で苦しんでいる人に学校給食を提供している。現在まで、1900万食相当の給食を届けることができた。また、学校給食が始まると学校に来る子供が倍に増えるので、教育の機会が増え、教育も6年~7年間継続するようになる。調理をする人をボランティアで出してもらったり、学校菜園を作ったりもしている。

【提携(Partnering):どんな組織や団体とどのように連携し、活動を展開するか?】

 現在550の団体や企業と提携している。これには2つのきっかけがあった。1つは、2008年4月に大企業でのメタボ検診が義務付けられ、社員の健康管理の流れが大きな後押しとなった。もう1つは、最初に電話や訪問した企業が1年、2年経ってから、企業側の準備が整って提携してくれるようになってきた。

 デニーズでは、世界食糧デーやアフリカでのワールドカップなどのキャンペーンを通じて社員食堂以外でもプログラムを展開している。
 スリーエフでは、男性を狙った商品を開発。ミスキャンパスがお父さんや彼氏に食べてほしいというコンセプト。
 NEWDAYSでは、おにぎりやパンなどで2週間~6週間のキャンペーンを行っている。

 どうして企業が提携してくれるかというと、商売として、TABLE FOR TWOのキャンペーンを行っている時期が、通常よりも多く商品が売れているという数字がある。

 高島屋では、全国の社員食堂で利用することになり、その社員食堂でTABLE FOR TWOの活動を知ったレストランやマーケティング担当の方がお客様に紹介したいということになり商品になったり、食育イベントに繋がったりもした。
 楽天のレシピサイトやiPhoneアプリにも活動を広げている。

 TABLE FOR TWO大学連合という組織を作り、学生が活動を行っている。パルコとの提携や、フットサルを行い参加費からの寄付、TFT48を作り萌えカフェの開催。

 自分たちにとって届いてほしい人に情報が届いているのかということを考えて、届いてほしい人のいる場所に行って情報発信を行うことが大きなヒントとなっている。

【組織・人事(People):どんな人たちを巻き込んでいくか?また組織づくりに必要なのはどういう人か?】

 TABLE FOR TWOの事務局は、有給職員が3名、パートタイムが3名、学生インターンが5名いる。毎月各食堂から寄付金額の報告があったり、新規の企業に訪問することを日々行っている。各参加企業で社会貢献部門だけが行うのではなく、社員や社長、役員にまで広がるようになっている。電通にはコミュニケーションツールを作ってもらったり、ニコンにはパネルを作ってもらったりもしている。

【宣伝・広報(Promotion):ミッションや活動内容をどんな媒体や手段で、どのように伝えていくか?】

 具体的には社内認知向上とマスに向けたプロモーションを行っている。社内認知向上では、カフェテリアの中や店頭で紹介してもらっている。マスに向けたプロモーションでは、テレビ新聞雑誌で掲載してもらっている。

 国連が定めている10月16日の世界食糧デーでは、「100万人のいただきます!」を行い、TABLE FOR TWOに100万人が参加してもらえるようになった。ポイントとしては、世界食糧デーが国連の記念日であり注目を集めやすいということと、毎年行っていける定番企画にしたこと。

【利益・成果(Profit):どうやって事業収益を上げて、目的を達成するのか?】

 20円の寄付の内上限20%を人件費や交通費などの運営費として使っている。光熱費などは節約して、一方でイベントではしっかり力を入れるためお金を使っている。


◎講師プロフィール

小林智子さん(認定NPO法人TABLE FOR TWO International 事業局長)
筑波大学国際総合学類卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー東京支社入社。幅広い業界のプロジェクトに従事。ドイツ、中国、インド、南アフリカでオペレーション改善や新規市場開拓のプロジェクトにも参画。グローバルNPOへのファンドレイジングに関するコンサルティングも務める。2010年にTABLE FOR TWO Internationalに加わり、食品メーカーや小売店とのパートナーシップ案件を主に担当。




セッション32

「疑似私募債徹底解説」

講師:多賀俊二さん(全国NPOバンク連絡会 常任理事・事務局)
   露木尚文さん(NPO法人ほっとコミュニティえどがわ 理事)
司会:竹内和広さん(日本ファンドレイジング協会会員)
記録:有木梨沙

【多賀さんの講演】

NPOが資金調達する方法は「もらう(返済する必要がない)」「借りる(いずれは返済する必要がある)」「出資を受ける」「稼ぐ(事業収入)」の4種類です。資金の使用用途は①運転資金、②設備資金などであり、全てが現金取引のみなら損益と収支は一致しているなら問題ありませんが、通常は未収・未払いがあるのでギャップが発生するので収入があっても支出が賄えず黒字倒産する危険性もあります。借りることに積極的なNPOは少ないですが、資金繰りは重要になってきます。

疑似私募債の分かりやすい例は組合員から集める生協債や私立学校で実施されている学校債です。あくまで債券もどきで「借金の証文」にすぎず、有価証券としての債券ではありません。手渡しても権利の譲渡にはなりません。金融商品取引法などの規制の一応対象外(学校債は規制あり)です。また、信頼してもらっているからこそ有利な条件で借りることができます。

NPOにとって疑似私募債はメリットが大きく、担保や保証人は不要で金利も安く設定可能ですし、ネットワークの力を見える化できますが、デメリットとしては、必要な額を調達できるとは限らず、返せなければネットワーク自体が崩壊します。疑似私募債が出資法における預かり金にあたらないと考えていますが、使用目的の不明確な活動や再投資のための疑似私募債の募集は避けた方がいいでしょう。また、投資ファンドのように「この事業が成功したら○%の配当を出します」というような発行条件は金融商品取引法に抵触する可能性があるため避けましょう。相手にわざわざ疑似私募債を発行させたり、疑似私募債の募集を代わりに実施したり仲介する行為も貸金業法に抵触する恐れがあり注意が必要です。

疑似私募債を利用する際には①事業計画書を作成・交付し、条件を明記するなど、きちんと借り手保護に留意すること、②金融機関やNPOバンク借入・市民ファンドなど複数の資金調達手段を併用することが大切です。今後の「疑似私募債ガイドライン」作成も待たれます。

【露木さんの講演】

ほっとコミュニティえどがわの事業である“ほっと館”“ほっとマンマ”“ほっとサロン”の運営は、年をとっても自分らしい暮らしが継続できる住まいの実現を目指しています。ほっと館の建設計画から実際に建設するまでもかなり時間がかかりました。事業計画を策定してもなかなか銀行からの融資が得られず、事業スキームを変更して建設資金集めを始めました。

まず身の丈にあったコミュニティレストランの設備費調達目的でほっと債(1口5万円)の協力をお願いし、協力者が多数出てきたことで借入れ総額は1000万円を超える金額になりました。この結果、信用力を高めることができ、金融機関からの融資を得ることができました。また、ほっと債の協力者の中から大口の融資に応じてくれる方々が出てきたため、ほっと館建設資金調達を目的としたほっとゆうし(1口100万円・利率2%・15年返済)への協力を呼びかけ、2000万円を超える金額を調達できました。

ほっと館の建設費の確保に柔軟に取り組んだことで、様々な資金調達方法を組み合わせることになり、結果的にバランスが取れたと考えています。

【質疑応答】

Q. 疑似私募債はNPO法人全体の中でどのくらいの規模(件数・金額など)で募集されているのでしょうか?
A(多賀さん). 公表された包括的な調査は現在ありません。知り合いから借りるという性質上、あまり表に出てくることがありません。HPに掲載しているNPO団体も一部あります。

Q. 不動産関係の事業でお金を借りたりする際、法律的に抵当権を付けるとなった時に、疑似私募債では、何か特別な手当てがあるのでしょうか?
A(露木さん). 疑似私募債では、そういう事はありません。疑似私募債では、連帯保証なども無いので、あくまで個人の信頼関係だけでやっています。


◎講師プロフィール

多賀俊二さん(全国NPOバンク連絡会 常任理事、事務局)
1994年、初のNPOバンクである未来バンク事業組合の設立に携わる。2003年からはA SEED JAPANエコ貯金プロジェクトに参加。2004年の秋、NPOバンクが証券取引法改正で存亡の危機にあることに気づき、勉強会を呼びかけ、現在のバンク連に至る。以後、NPOバンクとソーシャルファイナンスの発展に向け、日々奮闘している。 露木尚文さん(NPO法人ほっとコミュニティえどがわ 理事) 都市計画コンサルタントとして、地方公共団体の都市計画、市街地整備計画、住宅政策等の立案に携わる。2002年、NPO法人ほっとコミュニティえどがわの設立に参画し、理事に就任。高齢になっても住み続けられるまちづくりに取り組んでいる。一級建築士、技術士(建設部門)、マンション管理士、株式会社住宅・都市問題研究所代表取締役。 )

セッション33

「寄付者のための寄付税制を語れるようになろう!」

講師:脇坂誠也さん(認定NPO法人NPO会計税務専門家ネットワーク理事長・日本ファンドレイジング協会監事)
司会:栗田佳典さん(日本ファンドレイジング協会会員)
記録:山本玲子

【脇坂さんの講演】

寄付税制とは、①個人が寄付した場合、②法人が寄付した場合、④相続人が相続財産を寄付した場合の3つです。

寄付税制の基本的な考え方は、寄付をする阻害要因を除去するためにあるということです。サッカーのベッカムは今年6億円の契約金をフランスのチャリティー団体に全額寄付しました。おそらく、税制上の優遇を受けたいからで、手許に契約金は残りませんが、税金が戻ってくることを狙ったのでしょう。

公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人、学校法人を特定公益増進法人といいます。認定NPO法人はその成り立ちから別の体系で、税額控除もできるのに対して、特定公益増進法人はPSTをクリアしないと税額控除はできません。

税額控除は一昨年の法改正でできたもので、従来の所得控除と選べるようになりました。所得控除は税率が高い人に有利ですが、税額控除は所得金額にかかわらず、効果は一定です。これは税金を納める代わりにNPOに寄付するのと同じことになり、日本はおまかせ社会で税金を納めてなんでもしてもらう風潮が強かったですが、税金ではなく自分で公益的なお金の使い方を決められるようになりました。

法人が寄付した場合の優遇は、通常の損金参入額とは別枠で特別損金参入限度額が設けられました。税制優遇のある特定公益増進法人や認定NPOは損金になる可能性が強まると考えられます。企業は寄付以外にも広告宣伝などの方法もあるので、特定公益増進法人や認定NPOのメリットは信用が高まると考えたほうがいいでしょう。

相続人が受けられる優遇措置について、まず、相続と遺贈は別です。遺贈は遺言によるもので、認定でなくても非課税です。相続はお金をもらった人が、優遇措置を受けられます。お子さんがいらっしゃらない方で、相続人がいない場合は、お世話になった団体に寄付したいと思っているはずですが、これまでは受け皿がありませんでした。これからは、認定NPOや特定公益増進法人が受け皿になっていくでしょう。

認定NPO法人制度について、軽く触れます。特定公益増進法人については、行政が活動内容に公益性があるかどうかを判断しますが、NPO法人については行政が判断するのではなく、広く一般から支持を受けている、支援する人がたくさんいる団体を認めて、マーケットゲームにまかせましょう、という考え方です。PSTの要件は3つで、以前は相対値基準しかなく、認定NPOを取るのは大変で、事業収入があるとクリアできませんでしたが、介護保険事業などを排除することはないということで新しく絶対値基準が設けられました。また、人口の少ない地域で100人の寄付を集めるのは大変だということで、都道府県市町村が独自ルールをつくれる方法もできました。

絶対値基準については、正会員の会費は寄付とは認められず、賛助会員などは定款などで判断します。会費にプラスして寄付をもらうのはOKですが、強制してはいけません。 新たに100人集めるのは結構大変ですが、プラスアルファは集めやすいので、各団体で工夫してください。

【質問】

Q.公益増進法人だが、税額控除を受けたい。3000円を寄付してもらう方の声を掲載、それを販売しよう、という話をしているが、対価性にひっかかるのではないか?と、そこで議論が止まってしまう。対価性の基準が明示されているのか?
A.寄付された方に利益が及ばなければいいのではないか。基準はないだろう。ボーダーラインは結構難しい。


◎講師プロフィール

脇坂誠也さん(認定NPO法人NPO会計税務専門家ネットワーク 理事長/日本ファンドレイジング協会 監事/准認定ファンドレイザー)
国際協力事業団青年海外協力隊コートジボワールに派遣。1999年に脇坂税務会計事務所開設。「透明性の高い会計業務が出来てこそ、NPOの信頼性が向上し、活動を拡大することができる」として、NPOの会計・税務の支援、サポートに活躍中。NPO法人日本ファンドレイジング協会、公益財団法人さわやか福祉財団、東日本大震災支援全国ネットワーク 他 監事

セッション34

「日本型ファンドレイジング『もったいない寄付』を大解剖」

講師:石川 圭さん(NPO法人 ハンガー・フリー・ワールド 資金調達担当/准認定ファンドレイザー)
司会:今加奈子さん(日本ファンドレイジング協会会員)
記録:岩井静花

【石川さんの紹介】

 石川さんの所属するハンガー・フリー・ワールドはSNSを有効的に活用するトレンドに反し、手間のかかるアナログ式の方法を用い、資金調達を行っています。他人が気付いていないところにこそ、チャンスが転がっていまするというお話から、セッションが始まりました。

 まず始めに、「物品寄付をやっているか」という石川さんの問いかけに対し、「やっている」と答えた参加者は全体の1/3程度でした。「物品寄付を検討している」と答えた方もおよそ同数でした。

【石川さんの講演】

 封筒配布ひとつをとっても、いかに配布を増やすか工夫が必要です。締め切りを設けたり、期間を決めたり、メリハリをつけることが重要です。2012年の場合、換金額1億2500万円に対し、経費は3500万円ほどかかりました。換金額全体の内、ハガキは5000万円ほどで、50円ハガキ1枚当たり、経費を引くと37円の利益となります。また、1日あたり9000枚の書き損じハガキが届く計算となり、のべ参加人数(封筒を送り返した人数)は70,000人にものぼります。封筒を開けるだけでも、ひと手間です。

 当初は、切手を寄付者自身に貼らせるスタイルをとっていましたが、リスクは承知のうえで、実験的に一部地域のみ着払い制度に転換しました。加えて、封筒のサイズも、多くの荷物が入るよう、より大きなものに変更しました。その結果、利益向上につながったそうです。ポイントは、今の状態がベストなのかを熟考し、寄付者の声を拾うことだということです。寄付者は少しの手間にも敏感に反応するため、いかに寄付者のひと手間を省けるよう配慮するかが重要です。

 後半は、聞くチカラと捨てるチカラに関してのお話でした。「集中」「選択」という概念を念頭に、ターゲットを絞ることが重要です。また、全国どこでも「会って話す」ことを重視しています。特に新規の方にはメールよりも電話を使うようにし、関係が深まってからも、紹介、相談、人脈の3点を意識しています。また、寄付者の「ココロをくすぐる」ことも有効的です。結果をみせて刺激を与える、期限は相手に返答をさせるなど心理的なテクニックも駆使しています。どこが高く買ってくれるのか、どこが安く作れるのか、数字に厳しくなることも重要です。それと同時に、値段交渉の際にも自分の強みを最大限アピールすることが必要です。
以下の5つのポイントが成功の秘訣です。
(1)尖ること(いかに隙間に集中して入り込んでいくか)
(2)97%のNOをよく聞くこと
(3)プレゼンのみに頼らず実際に会うこと
(4)データをもとに過去の経験と比較し分析すること
(5)人脈形成を最重視すること

【質疑応答】

Q.改善点の優先順位の付け方は?
A.改善しやすさ、残り時間を参考にする。

Q.封筒で貴金属は十分に回収できるのか。
A.貴金属も返ってくる。貴金属は手間がかからないし、お金になる良いアイテム。

Q.コストを下回った場合の対策は?
A.使用済み切手などは、ある種「捨てアイテム」。返信率アップのためのもの。

Q.封筒の管理方法について
A.仕分けのための記号をいれている。全て手作業のため、手間はかかる。

Q.内部をどう説得して、動いたのか。
A.内部を説得するためには、数字を使って論理的に、根拠を明確にすることが重要。


◎講師プロフィール

石川圭さん(NPO法人ハンガー・フリー・ワールド 資金調達担当/准認定ファンドレイザー)
(特活)ハンガー・フリー・ワールド資金調達担当。大学で国際政治学を学ぶ。企業での販売職、営業職やフランス留学を経て、2010年より現職。
11:10 - 12:25

セッション35

「ディズニー流カスタマーサービスの5つのポイント」

講師:香取貴信さん(有限会社 香取感動マネジメント)
司会:木内 満さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:荒谷知佳

【香取さんの講演】

「以前の仕事について」

東京ディズニーランドで16歳から8年間ほど、主にアトラクション担当で働いていました。当時の時代や始めた動機、担当アトラクション「ジャングルクルーズ」の積み重なる練習に当初は続けられないと思っていました。なぜ8年間続けたかというと、いっしょに働くことになった仲間に恵まれました。特にと生まれて初めて「あの人みたいになりたい」と思った先輩のリーダーたちの存在がいました。このセッションでは、彼ら先輩やリーダーから学んだ事を伝えたいと思っています。

「2つのカスタマーサービス」

カスタマーサービスは、大きく分けると2種類があります。
1つ目は、『機能的サービス』。お客様の求めていることをきちんとする、当たり前のことを当たり前にするということです。
ディズニーで働いていた時、お客様から「3時のパレードは何時ですか?」と聞かれました。これに対してどう答えると良いでしょうか?「3時です。」ではありません。お客様の聞きたい事の本質を考えないといけません。「お客様はパレードが見たい。では、ここに何時に来るのか知りたいのだろう。」という事が解るので、これに対して答えないといけません。そうすると、「パレードがここに到着するのは3時15分頃です。」と答える事が出来ます。更に親切な場合は、「パレードを見終わるのは3時45分頃になります。」と答えるでしょう。
2つ目は、『情緒的サービス』。当たり前のサービスをベースに、お客様の期待を超え、もっと喜んでいただけることを考えるのです。これのために、相手のことをよく観察するのです。すると相手の好みなどが見えてきて、自分たちが持っている情報をサービスすることができ、期待を超えたサービスを実現できるのです。
例えば、お客様の持ち物を見た時、くまのプーさんのグッズを持っている場合、パレードでプーさんが良く見える場所を伝える事がそれに該当します。

「スイッチを入れる3つの方法」

『機能的サービス』『情緒的サービス』をできるときというのは「自分にスイッチが入っているかどうか」です。人間は、恐怖・権力・ペナルティーでは動かない。人間が自ら動く時とは、心が震えた時。感動と共感でしか人は動きません。人にスイッチを入れるためには、自分にスイッチを入れないといけません。では、自分にどうスイッチを入れるかについての方法を3つ紹介したいと思います。1つ目は、出かけるときの「行ってきます」。「何のために」行くのであるかを考えることです。私の場合は「日本を元気にするために行ってきます」です。できるかできないかはやってみないと解らない、大事なのは諦められない理由なのです。2つ目は、今日一日「誰の」幸せのために働くかを考えることです。己のためより、誰かのためだと強いパワーが湧いてきます。3つ目は、いい話をしましょう。いい話は意図して話していかないと伝わらない。これをディズニーでは「By Design」と言い、「全てのものは意図して作られる」という考えです。「何故このアトラクションにはこういうものが必要なのか?」そのバックストーリーがディズニーには全てあります。

「夢」

好きだからこそ情熱が燃えます。最後の一人になっても諦めない人は「続ける理由」しか考えていないのです。友人の「ゲームセットはいつでも自分」という言葉を聞きました。そんなことはできないと思っていても、情熱を燃やし続けていると誰かが応援してくれるようになるのです。


◎講師プロフィール

香取貴信さん(有限会社香取感動マネジメント 代表取締役)
1987年、オリエンタルランド運営部運営課エレクトリカルパレードゲストコントロールを経て、主にアトラクションを担当。1992年度、Spirit of 東京DisneyLand受賞。 2004年より現職。2011年5月より被災地福島と全国の絆づくりプロジェクト「福島ひまわり里親プロジェクト」に参画し、復興に向けた支援活動も積極的に行っている。

セッション36

「社会変革をおこすNPOのためのマーケティング」

講師:長浜洋二さん(NPOマーケティング研究所代表 公益社団法人シャンティ国際ボランティア会理事)
司会:田代純一さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:今井彩子

【長浜さんの講演】

NPOの支援者マーケティングから見た、ファンドレイジングの5つのポイントを紹介します。寄付者の立場にたって、「価値」「負担」「コミュニケーション」「利便性」「タイミング」を意識しましょう。

1.寄付者にとっての<価値>

寄付者の寄付動機(役に立ちたい、褒められたい等)を満たすものでなければなりません。
寄付金の使用用途、寄付金の提供により得られる効果を伝えます。特典(見返り)は相手によって変えましょう。御礼・報告はもちろん大事です。

特典設計のポイントは以下となります。
① 団体の活動についてより深く知って貰える様な特典にしましょう。
② 自然な形で団体の収入に直結する様な特典にしましょう。
③ ロゴ入りグッズなど団体の認知拡大に繋がるような特典にしましょう。
支援者をセグメントし、細かく特典および金額を設計しましょう。

2.寄付者の<負担>

探索コスト(団体情報や寄付/会員情報等を探すのにかかる時間や手間)、支払い時のコスト(金銭的、手数料等、時間的、身体的、心理的なもの)、事後的コスト(支援の結果を知るためにかかる時間や手間)と様々ある事を理解した上で価格設定をしましょう。

寄付金額設定の考え方は以下となります
支援者起点(支援者が認識する価値を基にした価格設定)、競合起点(競合団体の提示する価格を意識した価格設定)、コスト起点(特典提供、人件費など実際にかかったコストを基にした価格設定)
① 具体的な金額を示さない、低めの具体的な金額を示す、高めの具体的な金額を示す。

寄付を後押しする見せ方は以下となります
① 年会費で出来る事を具体的に提示し、会員申し込みのモチベーションを高める。
② 「1日あたり●円」という見せ方で負担が少ない事を伝え、寄付の敷居を低くする。
③ ゲーミフィケーションの効果を狙い、達成額/率をリアルタイムで表示することで寄付申し込みのモチベーションを高める。

3.寄付者との<コミュニケーション>

5つのメディア(広告、プロモーション、人的活動、広報・パブリシティ、口コミ)の長所・短所を考慮しながら最適な組み合わせを実施する。
自団体、受益者、支援者、第三者からの情報をバランスよく掲載し、団体の想いに加え、情報の客観性/信憑性を提供する。
活動分野の分析、広告により達成したい目標の明確化、ターゲット設定、競合の認識が必要です。

4.寄付の<利便性>

寄付についての問合せや支払い方法を可能な限り多く用意する事で、寄付者の利便性を高め、獲得出来る支援金を取り漏らさない様にする事が必要です。

5.寄付の<タイミング>

支援者にとって違和感のない、自然な流れの中で寄付を獲得するという事です。例えば、「自分にとって何らかの記念日に寄付をお願いします」と寄付者にお願いをしている基金もあります。

【質疑応答】

Q.銀行振込・郵便振替以外で次に導入すると良い支払い方法は何か?
A.クレジットカードです。インターネットを通じて支払いが出来る事と、寄付者の属性の情報を入手する事が出来ます。その次はコンビニ払いをオススメします。

Q.企業のマーケティングと非営利団体のマーケティングの違いは?
A.NPOは直接的に社会の課題を解決する為にするので、目指す方向性が違うと思います。企業の場合は、受益者しかいないですが、NPOは支援者の方向も向かなくてはいけないのでそこが大きな違いだと思います。

Q.街頭募金をする際に活動のPRカードを配ろうと思っている。寄付者から見た場合、寄付したときにコストのかかる物を受け取るとどういった心理が働くのか?
A.お金のかけ方の程度の話だと思います。PRカードを配ることで認知を拡げ、社会課題の解決のスピードを速められるときちんと説明出来る事が大事だと思います。


◎講師プロフィール

長浜洋二さん(NPOマーケティング研究所 代表/公益社団法人シャンティ国際ボランティア会 理事)
NTT、マツダを経て、現在、富士通に勤務。大手企業でマーケティング業務に携わる。米ピッツバーグ大学院にてNPOマネジメントに関わる公共経営学修士号を取得後、非営利シンクタンクにて調査・研究、ロビイング、ファンドレイジング等を行う。NPOマーケティングで社会を変える!『草莽塾』、ブログ『飛耳長目:米国にみるNPO戦略のヒント』主宰。

セッション37

「ソーシャルファイナンスを活かしたファンドレイジング」

~ソーシャルファイナンスの本質・最新事例一挙紹介

講師:木村真樹さん(コミュニティ・ユース・バンクmomo 代表理事/准認定ファンドレイザー)
   水谷衣里さん(三菱UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社 副主任研究員)
司会:高島弘行さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:村松正彦

【水谷さんの講演】

<ソーシャルファイナンスとは>

ソーシャルファイナンスとは、「経済的(金銭的)利益と社会的利益の両方を追い求める組織によって提供される金融」という定義。
ソーシャルファイナンスを実行していくその過程で、地域コミュニティを発展させていったり、ソーシャルキャピタルを発展させていったりするのが、大きな特徴である。

<ソーシャルファイナンスを実践する団体の事例>

1.トリオドス銀行
トリオドス銀行は1980年に、経済の専門家、税法学者、経営コンサルタント、銀行家が集まって、金融の在り方について研究し、「こういう金融が欲しいよね」と考えて行った結果、新しい銀行を作ることになった。
トリオドス銀行の大きな特徴としては、融資先を「自然環境」「文化福祉」「ソーシャルビジネス」に限定している。これは「持続不可能な対象には融資を行わない」という明確な意思によるものである。

2.コーポラディブ銀行
コーポラディブ銀行とは、イギリスの協同組合銀行で、組合員の意見を丁寧に拾う中で自分達は何をすべきか考えて行くことをしている。このように、顧客参加のもとに融資判断の方針を策定することで、差別化を行い、生き残りを図っている。

3.Nonprofit Finance Fund
Nonprofit Finance Fundとは、コミュニティの再生を主たる目的とする金融機関で、全米7か所に拠点を持っている巨大な組織。融資の対象は非営利組織で、殆どがNPOである。
融資と共にNPOの成長を担う助成財団へのコンサルティングも行うことで、NPOに流れるお金の流れの全体を良くするという、ソーシャルミッションを持っている組織である。

<日本の現状>

日本においてはソーシャルバンクというものはない。だが、市民出資・市民金融が拡大をみせている。momoもその1つである。

金融機関も大きな変化を見せている。代表的な例としては、西武信用金庫はコミュニティビジネス支援を行っており、100を越える融資を実践している。

個人投資家を募る活動も生まれている。セッション23で講演されたSVP東京では、個人が10万円の投資をし、またパートナーとしての活動もしながらNPOの成長を助けて行くという組織である。

【木村さんの講演】

地域課題の解決に、お金を循環させて行くチャレンジをしている。
地域のお金と、地域問題の解決にチャレンジするNPO、この両者を繋げる組織として愛知県でmomoを立ち上げた。

出資については全国から集めている。東京に住んでいる人からの出資が意外に多いが、よくよく聞いてみると、彼らの出身地の多くは愛知県。つまり、ふるさと納税的な出資をしている。

融資先の代表的な例としては、長年使われていなかった地域のキャンプ場を宿泊施設に再生させるというNPO法人への融資がある。この際に、資金提供以外にも、出資者を集めて商品開発会議を行ったり、融資先訪問ツアーを開催してテストマーケティングを行ったりした。こうして、事業を成功させた。

momoの融資先で、事業規模が大きく拡大した団体は地域の金融機関との取引も行う必要があるので、momoも金融機関との関係を強化し、金融機関への橋渡しを始めている。

【質疑応答】

Q.寄付と、配当の無い出資、両者の違いは何か?
A(木村さん).色々な選択肢がある中で、「配当の無い出資というものもある」、という感覚。自分としては寄付で10万円出すのはハードルが高いが、出資なら「どうせ使わない資産があるなら、配当の無い出資もあるかな」と思う。
寄付と出資との違いについては、寄付の際の税制優遇が全ての団体にある訳ではない。多様な選択肢を用意することが大切に思う。
A(水谷さん).寄付・融資・助成という様にお金の流れを多様化していくのが大切。経営支援の方は、新しい事業を作る人達が助けを求め易い、協力をし易い形を作って行くことが重要。


◎講師プロフィール

木村真樹さん(コミュニティ・ユース・バンクmomo 代表理事/准認定ファンドレイザー)
地方銀行勤務を経て、A SEED JAPAN事務局長やap bank運営事務局スタッフなどを歴任。2005年にmomoを設立し、若者たちによる"お金の地産地消"の推進や、社会責任・貢献志向の企業やコミュニティビジネス、NPOへのハンズオン支援を行っている。全国NPOバンク連絡会理事、東海若手起業塾メンター、NPO法人名古屋NGOセンター理事、愛知淑徳大学非常勤講師(パブリシティマネジメント入門)など兼務。
水谷衣里さん(三菱UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社 副主任研究員)
大学在学中から地域活動や中間支援組織を中心とした首都圏の市民活動に関わる。専門はソーシャルビジネスや民間非営利活動の基盤整備に関わる調査研究、企業の社会貢献活動支援など。NPO法人まちづくり情報センターかながわ理事。学識委員等多数。著作は「ソーシャルファイナンス」(まちと暮らし研究)、「成果志向の社会貢献活動~注目されるベンチャーフィランソロピー~」(MURC 政策研究レポート)など。

セッション38・冠講座3

■□■提供:セールスフォース・ドットコム ファンデーション■□■

「Salesforceで社会を変えよう!」

~非営利団体支援プログラム・サービスのご紹介~

講師:長野りえさん(Salesforce.com Foundation)
   吉田憲司さん(株式会社ファンドレックス)
   小堀悠さん(NPOサポートセンター)
   上原さん(特定非営利法人 テラ・ルネッサンス)
   原田さん(Salesforce.com Foundation)
司会:渡辺由美子さん(日本ファンドレイジング協会会員)
記録:細貝朋央

【長野さんによるSalesforce.comの1/1/1プロジェクト紹介】

1/1/1(1%)プロジェクトとは、米Salesforce.com会長兼CEOマーク・ベニオフ氏が創業時から提唱してきたもので、
・「時間の1%」、社員一人あたり20時間を社会貢献・ボランティア活動に当てる。
・「株式の1%」、4000万ドル以上を非営利団体に対して寄付または助成金として提供する。
・「製品の1%」、世界中の16000団体以上に製品寄贈、サービス提供する。
というプロジェクトである。

【長野さんのSalesforce製品提供プログラム】

非営利団体が直面している会員管理・組織内コミュニケーションなどの情報管理を一元化することができる。『Nonprofit Edition』10ライセンス、前記2つの12ヶ月ごとの自動更新、サポートデスク、オンライントレーニング、無料勉強会・ユーザーグループの6点を非営利団体に対して製品提供している。

【上原さんの講演】

実際に、Salesforceを導入したテラ・ルネッサンスの上原さんは、実践した感想を以下3点にして述べた。
1)家族で会員となっている人たちへの郵送物を1つにするなどの内部情報の振り返りとなった。
2)組織内での情報共有に関する共通言語ができた。
3)急なデータ抽出に困らなくなった。

【吉田さんの講演】

企業向けSalesforceと非営利団体向けSalesforceの違いについて。非営利団体向けSalesforceは、個人支援者の情報管理や支援者間の関係情報の管理といった機能が、最初から利用可能である。非営利団体がスムーズに利用を始められるように様々な工夫が施されている。

【原田さんの講演】

寄付をしたくなる要素の支援を、(1)したい分野に合致していること、(2)透明性、(3)自分が寄付をした結果どのようなインパクトがあったのか、の3点を踏まえつつ、支援者のモチベーションを維持していくための例として、カスタマーコミュニティというsalesforceのサイトを挙げる。このサイト内では、自分が行ってきた寄付の状況などを見れるマイページが設けられる。ツイッター、facebookなどのSNSと違い、ユーザーはセキュリティに保護された上で情報を発信することができる。具体的には、自分の支援している団体や支援したい団体のコミュニティに入ることで、そのコミュニティのメンバーだけが、コミュニティのユーザーの情報・近況を見ることができる。団体側は、それらを踏まえて効果的に個別にメッセージを送りやすくなる。

【小堀さんの講演】

NPOサポートセンターによるSalesforce導入サポートのための3つの研修プログラムの紹介を行なう。Salesforceのウェブサイトから申請すると、30日間無料でトライアル研修が利用できる。トライアル研修では、集会場にて1人1台のパソコンが与えられ、マニュアルを見ながら操作をして基本機能を理解することができる。また、団体のニーズに合わせて「会員・寄付」、「イベント管理」、「レポート」のテーマ別に活用方法を理解する実践研修も用意されている。また、2日間の集中研修や、その後1ヶ月に1回ごとのフォローアップを2・3ヶ月間行い、団体への導入を目指す導入研修がある。

【質疑応答】

Q.海外の現地人スタッフと日本との間でSalesforceで円滑な情報管理ができるのか?
A.原田さん:約30言語に対応した翻訳機能がある。

Q.「Nonprofit Edition」の11ライセンス以降の値段はいくらになるのか?
A.長野さん:11ライセンス以降は、全体の75%引きで購入できる。現在、更に安くするために価格の調整中である。


◎講師プロフィール

長野りえさん(セールスフォースドットコム ファンデーション)
セールスフォースドットコム ファンデーションNonprofit Product Manager。ミネソタ州立大学卒業後、米国のNGO勤務を経て帰国。日本にある国際NGOにて広報、ファンドレイジング、企業CSR対応を6年間行う。現在はセールスフォースドットコムファンデーションにて、社会貢献1/1/1モデル、主に非営利団体向け製品を日本に広めるプロダクトマネージャー。

吉田憲司さん(株式会社ファンドレックス取締役)
日本有数のファンドレイジング専門コンサルティング会社である株式会社ファンドレックスで、非営利団体向けの支援者関係性管理(DRM)システム(寄付者データベース)の開発に、2008年7月の同社設立から取締役として携わる。以前は2001年より、大手コンピュータメーカーでITに係る戦略策定やコンサルティングに携わっていた。2012年ファンドレックスとして、株式会社セールスフォース・ドットコムよりPartner Award 2012を受賞。

小堀悠さん((特活)NPOサポートセンター 事務局長代行)
学生時代より、環境団体、まちづくり団体の設立や運営、資金調達などに携わる。卒業後、(株)日立システムアンドサービスのSEとして企業や組合など様々な組織を対象に約60のシステム設計・構築案件に従事。
2009年より(特活)NPOサポートセンターに入職。主にNPOのマネジメントや資金調達をテーマとした研修・セミナーの企画および講師、SalesforceやPublishersなど資金調達に関連したサービスの普及に取り組む。

セッション39

「海外の助成財団から助成金を獲得する5つのポイント」

講師:ロシート・セラジーンさん(デルタインターナショナル NPO/NGOコンサルタント)
司会:萱間隆夫さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:村松正彦

【ロシートさんの講演】

海外の助成財団から助成金を獲得する5つのポイントについて、説明していく。
ポイント1:明確なニーズ
ポイント2:目的志向型
ポイント3:資金提供者を理解
ポイント4:戦略的
ポイント5:透明性

<ポイント1:明確なニーズ>

ポイント1では、重要な点が3つある。

(1)取り組む問題を明確なコトバにする
一般的ではなく、具体的な問題を説明していることが大切。
例えば、一般的な説明では「東北経済を立て直す東北経済復興」の場合、具体的には「石巻商店街再開のサポート」とする。このように、「一般的」な問題の中で、プロジェクトの助成期間中に取り組もうとする具体的な問題を取り上げて説明する事が良い。

(2)人々のニーズに合ったもの
どのような人々にどんなニーズがあるかを示す。NPOのニーズではなく、人々のニーズを書くこと。

(3)ニーズ・アセスメント(ニーズの検討)
「どのようなニーズ・アセスメントを行ったか?」「ニーズを示すデータはあるか?」について書くこと。

<ポイント2:目的志向型>

ポイント2では、重要な点が2つある。

(1)具体的な目標と目的
目的は、助成期間で実現出来る事。目標は、目的につながるもの。

(2)成果とインパクト
プロジェクトが受益者、家族、コミュニティなどに与える影響について、予想される成果を出来るだけ具体的に書くこと。

<ポイント3:資金提供者を理解>

ポイント3では、重要な点が3つある。

(1)ドナーの正しい情報を入手。
海外の助成財団についての情報が掲載されているウェブサイトがある。
Fundraising UKでは各種助成財団の今週の締め切り情報、The Foundation Centerでは分野別の締め切り情報を知ることが出来る。

(2)ドナーの優先順位と利益を知る
海外の助成財団のウェブサイトからは、助成対象・条件、どんな所に助成したか、助成期間、締め切りなどを知ることが出来る。

(3)プロセスと要件を確認
ある著名な財団では、毎年4万以上のプロジェクト概要書が提出される。その中から1万位の申請書が選ばれる。その1万の中から2000プロジェクトが承認される。このプロセスは半年以上かかる。
資金振込のスケジュールも異なり、ある財団はプロジェクトが始まる前に全て振り込むが、別の財団はプロジェクトの進行に合わせて振込みを行う。

<ポイント4:戦略的>

ポイント4では、重要な点が3つある。

(1)長期的・戦略的な計画
プロジェクトと資金調達の申請は長期的な戦略にどのように適合するかを説明すること。

(2)持続可能性(サステナビリティ)
プロジェクトは持続可能性があるか?プロジェクトが助成終了後も継続出来ることが大切。

(3)資金調達の多様性
米国や英国の財団は、プロジェクトの全部ではなく、一部を支援することを好む。これは「資金源が1つだけだと、その資金源が無くなった時に、プロジェクトの継続が困難になる。」と考えるため。支援額の割合は財団によって様々な基準がある。例えば「全予算の1/3だけを助成する」など。

<ポイント5:透明性>

ポイント5では、重要な点が3つある。

(1)オープン・コミュニケーションと再評価
コミュニケーションは時間掛かるが、それにより信頼を得ることは助成金を得るために大切なこと。信頼関係を作れば、他の財団を紹介して貰えるといったチャンスを得やすくなる。

(2)デューデリジェンス
これは、財団に自身の団体を信頼してもらうために行い、スタッフのリストやこれまでのプロジェクトについての各種報告書などを提出する。

(3)助成金期間内のコミュニケーション
助成金期間内のコミュニケーションは大切。報告書を出す時だけではなく、プロジェクトの状況に変更等があったら、その都度連絡すること。

【質疑応答】

Q.アメリカの財団は、全予算の1/3を出すのが標準的なのか?
A. 1/3は多いが、他にも色々な例がある。例えば、財団から1/2、他に2つから1/4、1/4など。


◎講師プロフィール

ロシート・セラジーンさん(デルタインターナショナル NPO/NGOコンサルタント)
効果的協力、持続可能なプログラムと組織的能力向上のためのワークショップ及びプロジェクト開発支援活動を行う。2011年3月からGive2Asia財団東日本大震災復興支援基金の日本担当。日米コミューニティ・エクスチェンジ、コロンビア大学東アジア研究所、東京YMCA、ニューヨーク州立大学生組合、コミュニティ・オーガナイザーなどを経験。2000年米国コロンビア大学で東アジアの人権問題を研究し、国際関係学修士号を取得。

セッション40

「『大学への法人寄付』 企画と実践」

~大学基金の経験から

講師:安藤晴夫さん(東京大学)
司会:米岡文土さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:佐野彩

【安藤さんの講演】

<これまでの取り組み>

 2006年に着任して最初の2年は創立130周年キャンペーンに取り組みました。その後、海洋政策の教育研究プログラム「総合海洋基盤」、水問題に関する「水の知」、航空産業に関する「航空イノベーション」、太陽光の問題をグローバルな視点から考える「大規模太陽光」、世界の電力問題の改善をめざす「次世代電力網」など、大きなプロジェクトを毎年手がけてきました。
 着任してまず行ったのは学内の研究者との関係構築です。社会性のある研究テーマに取り組み、企業や社会と向き合うコミュニケーション能力を持つ研究者を探しました。3〜5年目には、大学基金が関与するのに相応しい全学的な企画を立て、面白さや共感を得られることが確信できた企画を企業に提案し実現させました。その後は、得られた信頼をバネに、これまでのプロジェクトをフォローアップしながら、次の課題や新しい企画につなげています。
 仕事のミッションは、全学的に取り組むべき社会的課題に対して社会連携プロジェクトを恒常的に企画し、大学と社会の新しい関係を企業と構築することです。大学だけで何かを動かそうとしても歯車は動きません。相手を動かしたいのなら、両者の間には「テーマ」が必要で、それが噛み合えば歯車は回っていきます。継続可能なプロジェクトをいかに組み立てるか、寄付者と研究者の間に立って何ができるかを考えながら仕事に携わってきました。

<法人向けファンドレイジングの面白さと求められること>

 大学には面白い発想や研究が溢れています。社会的意義が高い課題をプロジェクト化して企業と連携しながら新しい拠点を構築し、大学の常識を超えて社会イノベーションにつなげていく。それはとても面白いです。求められるのは、何よりも託された寄付による成果を積み重ねることで得られる信頼関係です。企業、また学内の特に役員層といつでもコミュニケーションが取れるような信頼関係を作ることが大切です。より実践的な面では、企画の提案は冒頭5分が勝負です。シンプルにメッセージを伝え、相手の共感を得られるポイントを見逃さないことが重要です。




<まとめ>

 世間から大学がどう見られており、大学の強みは何かということに焦点を当てると、大学の価値は「先取り」にあります。時代の転換点に大学には何ができるのか、大学のリーダーシップで着手できることは何かなどを考えながらプロジェクトを企画し、旬のときに提案しています。驚きや斬新さがないと寄付は得られません。最も適切な相手にアプローチできたか、大学の思いを的確に表現できたか、企業の期待を受け止められたか、コーディネーターとしての役割を果たせたかなどを考えながら、「はじめに寄付ありき」ではなく、大学と社会との新しい関係を構築していくことをめざしています。

【質疑応答】

Q. 企業がプロジェクトによって恒常的に利益が得られるようになった場合、その一部を大学がロイヤルティとして受け取ることはできないのか。
A. 可能なものと可能でないものがある。何かを独占しようとすることは、新しいことを普及させるときにはブレーキになる。

Q. 研究者をプロジェクトに巻き込むコツは何か。
A. 企画テーマを考えながら候補を「研究者ストック」の中から探し、説きに行く。

Q. 東大ほどの知的リソースがない大学でも汎用化できるアイディアやノウハウはないか。
A. 規模や専門性、研究者の厚みの違いに応じた対応は必要だが、基本的な点は変わらない。

Q. 学生を巻き込んだファンドレイジングは行っているのか。
A. 学生のプロジェクトに特化した寄付を集めるのは難しいので、大学に集まった寄付の一部を充てている。


◎講師プロフィール

安藤晴夫さん(東京大学 渉外本部 シニアディレクター)
民間金融機関および事業会社勤務を経て、国立大学法人化後に設置された「大学基金」のファンドレイジング企画および渉外を分掌する渉外本部に7年勤務。全学規模の寄付講座や寄付プロジェクトの企画など、大学(本部・研究者)と法人企業との新たな連携構築を推進してきた。
13:40 - 14:55

セッション41

「世界を変えるパブリックスピーキング」

講師:蔭山洋介さん(スピーチライター)
司会:市川 斉さん(日本ファンドレイジング協会会員)
記録:菅磨里奈

【「世界を変える」とは】

価値観・世界観が変わると世界が動いていく。世界が変わるというのは、「当たり前」の基準が変わるということ。「当たり前」が変わると、そうではない世界は理不尽だ、間違っているという感覚が生まれる。そこから、NPOや社会起業的な活動が生まれてくる。
お金を集めることも大切。集めれば集めるほど、やりたい世界が広がり社会が変わっていく。

【説明すればわかってもらえる】

想いは簡単に伝わる。しかし、想いに答えてくれるかどうかは別。わかってくれても行動はしない。
お金を集めるのはパブリックスピーキングを使えばできる。会場代などだけでうまく仕掛けられる優れた方法。「説得」ではなく「感動」を使う。

【パブリックスピーキングとは】

狭義では普段話しているままのように見える話し方で話すこと。自分の活動や説明を通して背景を説明し、共感し応援してもらう。次の3つを行えばうまくいく。
1.演出  2.シナリオ  3.演技

1.演出に必要なもの

・コンセプト(私)・観客、この二つが決まればどう見せるかは自動的に決まる。
・衣装
ネクタイ、会場選び、チラシ、DMなどあらゆるところにその人のセンスが出る。センスを徹底的に磨いてコンセプトをぶれないようにすることが大切。
・配布資料
寄付のお願いの紙は先に渡しておくのではなく、最後になって共感の和が十分形成された後に、手渡しで配るのがいい。
・スライド
一生懸命スライドを作ると、スライドを読んでしまう。できるだけ情報を削る。
・会場の空気
空気は読むのではなく作る。何が起こるかわからない感じが出せると相手は本気になってくれる
・照明、BGM
照明を暗くすると自分を見てくれなくなる。マイクよりは生声を使ったほうが伝わる。
・大道具(客席)
机を置くと距離が離れるので椅子だけがおすすめ。椅子を半円型に置くともっと近くなる。

2.シナリオ

説得をすることなく共感を得てファンドレイジングにつなげていくにはセオリーがある。
起承転結をちゃんと使う。意見を一生懸命話さない。それを伝えたいと思った重大な出来事、事件があったはず。それを作りこんでドラマのように語る。聞き手の満足度はその事件がどれくらいの密度を持っていくかで決まる。

3.演技

その人の活動ややりたいことがその人の人生と照らし合わせてコンセプトとつながっているか。魂に嘘があると力が出ない。自分を突き動かす原動力に嘘偽りがなければ少々プレゼンが下手でも何とかなる。

【まとめ】

コアコンセプトをよく捉え、演出・演技・シナリオいずれも嘘偽りなくそれとまっすぐ結びついていて、力を生み出す仕掛けを持っているのが、パブリックスピーキングにおいて相手を感動させるポイント。光り輝いているすごい人を目の前にすると、こいつは一体何なんだと思うそのパワーが人を巻き込むリーダーになって巨大なムーブメントを作っていって世界を変えていく力になる。皆さんが人前でどんどん話してお金を集めて世界を変えていってくれればと思う。

【質疑応答】

Q.NPOのイベントは講演やシンポジウム型の時があるが、出演する側から提案した方がいいか?
A.提案した方がいい。その都度その良さを最大限引き出すにはどうすればいいかを考えて設計する。

Q.仕事やプライベートの衣装のコントロールはどの程度考えるべきか
A.手を抜いてもいいが、ある程度はこだわった方がいい。自分の気がいい物を着るとその人らしさやパワーを作っていく大きな助けになる。

Q. プレゼンの内容は現場でどのくらい内容を変えていいものか
A.慣れる前は徹底的に一語一句覚える。プレゼン時間の密度を覚える。慣れてくると引き出しができてくる。慣れると漠然とテーマを決めて、反応を見て思いつくままに話すとより自然でライブ感が出るし、観客の興味を引くことができる。


◎講師プロフィール

蔭山洋介さん(スピーチライター)
スピーチライター、パブリックスピーキングコーチ、演出家、スピーチ評論家。一部上場企業はもとより、外資・中小ベンチャー企業の経営者や管理職,政治家,NPO代表,青年会議所理事長などのリーダー層を主に,講演,記者会見,国際会議などのフォーマルなシーンから,朝礼や結婚式の祝辞などのプライベートシーンまで幅広く支援している。また、ファンドレイジングに特化した講演の設計も支援している。

セッション42・冠講座4

■□■提供:日本マイクロソフト株式会社■□■

「事業型NPO必見!IT活用でNPOの業務プロセスを徹底効率化・
NPOマネジメントのホップ、ステップ、ジャンプ」

講師:龍治玲奈さん(日本マイクロソフト株式会社)
   岡本泰志さん(NPO法人日本NPOセンター)
   会田和弘さん(NPO法人イーパーツ)
   工藤彰子さん(NPO法人「育て上げ」ネット)
   吉田憲司さん(株式会社ファンドレックス)
   鵜尾雅隆さん(日本ファンドレイジング協会)
司会:樽本哲さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:本田あゆみ

【鵜尾さんの挨拶】

ITの活用が様々な活動のソリューションにつながると分かっていても、各団体によってどういう切り口でやれば良いのかという悩みはあると思います。その切り口を初級から上級まで紹介するのでぜひ参考にして下さい。

【龍治さんの講演】

マイクロソフトとして提供しているサービスをホップという形で紹介します。まずSkypeによりオンライン会議を行うことができます。ファイル共有に関しては、スカイドライブがあり、写真やビデオ等の情報共有がスムーズにできます。また、1つのドキュメントを共有することにより、ドキュメントを最新の状態に保つことができます。パソコン環境の保守においては、セキュリティエッセンシャルズという無償のセキュリティソフトを提供しています。最後に、日本NPOセンターさんにお世話になっているTechSoup Japanというサービスで、NPOの方に無償でマイクロソフトの最新ソフトを提供しているので、ぜひご利用ください。

【吉田さんの講演】

Microsoft Dynamics CRMを紹介するに当たって、まずデータベースについて説明します。データベースには情報を細かく管理し、それを活用するための各種機能がついています。支援者との関係性を細かく記録し、団体の誰もが情報が欲しい時に引き出す事が出来るため、支援者対応の中心的な役割を果たす事が出来ます。

【岡本さんの講演】

日本NPOセンターの事例についてお話しします。Microsoft Dynamics CRMは支援者拡大のためのツールとして導入しました。マイクロソフトさんと協力してNPO向けのテンプレートを作り、人と自団体に対する関わり方を管理し、業務を通じて支援者の情報を蓄積して行く事が出来る様になりました。このツールでターゲット別のアクションを取り、より支援者との関わりを広げる様にしています。

【会田さんの講演】

NPO法人イーパーツの事例をお話しします。業務の増大により、エクセルでは情報処理が難しくなっていたため、Microsoft Dynamics CRMを導入しました。情報の一元化と共有のために、イーパーツでは、業務の整理・システムの設計・役割分担を行いました。メリットとしては、情報共有による時間の効率化、スタッフの業務の可視化が出来る事です。課題としては、コストが掛かる事、専門家が必要である事です。
効率化が実感出来たエピソードとしては、スタッフが休んでも仕事が出来た事、人件費1人分位の削減が出来た事、ファイル場所で迷うことが無くなった事です。

【工藤さんの講演】

「育て上げ」ネットの事例について紹介します。事業所が複雑化し、かつ対象者も増加していく中で個人の特定が難しくなっていました。データを統一し、何がキーワードとなって対象者に情報が届くのか、どういう支援が必要なのかを知るためにMicrosofr Dynamics CRMを導入しました。その中で、セキュリティーロールを設定する事で、個人情報の保護、パソコンの熟練度の違いによるデータの毀損を防ぐ事が出来ました。
ロール設定方法としては、各部署の役割を書き出し、理事と話しをして決めました。
エンティティの設定、入力画面のルールを決めるプロセスとしては、必要なデータを書き出し、最小公倍数で必要な情報を抜き出し、データ化出来るものだけを登録用紙にまとめ、それと同じものをエンティティの紙に作れるように工夫しました。

【質疑応答】

Q. Microsoft Dynamics CRMの導入コストは何が掛かるか?
A(岡本さん).サーバーの強化のコストと、専任担当者のコストがある。
A(会田さん).サーバー導入コスト、全員分のアカウント費用、カスタマイズ用の専門家費用が掛かった。
A(工藤さん).専門外なのでコストは分からないが、担当間での情報共有の会議等の時間はコストとなった。


◎講師プロフィール

龍治玲奈さん(日本マイクロソフト株式会社 法務・政策企画統括本部 政策企画本部 渉外・社会貢献課長)
岡本泰志さん(NPO法人日本NPOセンター 総務部門 NPO法人イーパーツ 常務理事・事務局長)
工藤彰子さん(NPO法人「育て上げ」ネット 若年者就労支援課長)
吉田憲司さん(株式会社ファンドレックス 取締役)
鵜尾雅隆さん(日本ファンドレイジング協会 代表理事 / 株式会社ファンドレックス 代表取締役)

セッション43

「メディアや人のつながりを活かしたファンドレイジング」

講師:鬼丸昌也さん(NPO法人テラルネッサンス 創設者・理事)
司会:鴨崎貴泰さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:村松正彦

【鬼丸さんの講演】

<自己紹介・自団体紹介>

テラルネッサンスでは、地雷除去のための活動や、自分たちの活動を伝える講演会などをしている。

自分が国際協力に興味を持ち始めたのは、中学・高校の時から。カンボジアに地雷を見に行った時に、ショックを受けた。ここに住んでいる人は、地雷原に囲まれていることを知っている。だが、お金がないから引っ越せない。このような人たちは世界に沢山いる。

自分に出来ることは殆どないが、地雷のことを日本で伝えることなら出来る。講演でお金を頂いて、地雷除去団体と契約してお金を渡し、その報告を受けてまた講演をして行けば循環が生まれるだろうと思い、講演会を始めた。

<講演会について>

講演会は年に120回程度で、小学校・中学校・高校・大学でも行っている。

10年前から講演会をしているので、それを聞いた学生が成長して大人になり、出世し、支援者になる。テラルネッサンスに支援しなくてもどこかで社会変革の担い手になるはず。「外に伝える」「パイを増やす」。それが私たちの大切な任務だと思っている。

<情報=資産>

みなさんの情報を棚卸しして頂きたい。なぜなら、NPO/NGOにとって最大の資産は情報だから。では、どういう風に整理するか?ポイントは「共感と感動」。「職員の中で感動的なエピソードはあるか?」「支援を受けた人の中に感動的な、もしくは困難に打ち勝った体験はあるか?」「支援者の中に感動的な体験はあるか?」これをどんどん掘り起こしていくと、職員のモチベーションが上がるし、支援者、特に新規の支援者にとって、安心出来る材料になる。

その情報を棚卸しして、整理して、話して頂きたい。話す所はいくらでもある。教育機関・ロータリークラブ・ライオンズクラブなど、地域の中に話す場所は幾らでもある。そうやって色々な所に行っていると、口コミが起こる。人の紹介によって自分は多くの講演先を獲得することができた。

<信頼は『借りて』くる>

とはいえ、テラルネッサンスを作った時は、信頼は0だった。では、信頼をどうやって蓄積したか?信頼は『借りて』くるもので、作るものではない。どうやって借りてきたか?メディアを使わせて貰った。学校で講演する時は、学校長の許可を貰って、自分たちがプレスリリースを出した。テラルネッサンスに信頼はなくても、学校や教育委員会は信頼をされている。

<プレスリリースの書き方>

では、どういうプレスリリースを書いたか?まずは活動に焦点をあてたリリース。
次は創業者に焦点をあて、さらに違う職員にスポットを当てる。テラルネッサンスは海外に現場を持っているので、海外職員が帰国した際に取材を受けさせる。ネタは新鮮なので、取材をして貰える。
支援者に焦点を当てる方法もある。テラルネッサンスがかかわるインクカートリッジ回収プロジェクトを支援してくれた人たちが地元新聞に掲載されると、そのプロジェクトが県内に広がり、テラルネッサンスにとってもプラスとなった。

<人は『ひと』が連れてくる>

人は『ひと』が連れてくる。自分は企業の経営が大好きで、会社に学びに行っていた。自分は勉強したいだけで、一生懸命聞いていると、相手は「どんな活動しているの?」と聞いてきて、そこから寄付が集まったりする。

<最後に一言>

テラルネッサンスもこれから資金調達の色んな手法を試していきたいと思っている。この業界がもっと効果的に、もっと温かなファンドレイジングのノウハウを蓄積出来れば、と思っている。それほど、魅力ある価値のある仕事。

【質疑応答】

Q.プレスリリースはどう書いたら良いのか?
A.プレスリリースは色々な書き方がある。大事なことは出し続けること。出し続ければ、受け手が認知しはじめる。記者の人に取材して貰ったら、名刺を貰って、たまに電話やメールを入れると良い。そのうちに、向こうから「ネタがないか」と聞いてくる。


◎講師プロフィール

鬼丸昌也さん(NPO法人テラ・ルネッサンス 創設者・理事)
立命館大学法学部卒。高校在学中にアリヤラトネ博士(スリランカの農村開発指導者)と出逢い、『すべての人に未来をつくりだす能力(ちから)がある』と教えられる。様々なNGOの活動に参加する中で、異なる文化、価値観の対話こそが平和をつくりだす鍵だと気づく。大学在学中に「テラ・ルネッサンス」設立。2002年、(社)日本青年会議所人間力大賞受賞。地雷、子ども兵や平和問題を伝える講演活動は年120回以上。

セッション44

「ダイレクトメールを活かしたファンドレイジング・三つの成功の鍵」

講師:岡 徹さん(ダイレクトマーケティングジャパン株式会社 代表取締役社長)
司会:毛利葉さん(日本ファンドレイジング協会会員)
記録:村松正彦

【岡さんの講演】

<自己紹介>

この業界で約50年働いており、ダイレクトマーケティングジャパン株式会社・代表取締役社長、DMA米国ダイレクトマーケティングアソシエーション日本代理事務局代表、DMA国際エコー賞アンバサダー・DMA国際エコー賞米国審査委員などをしている。

<ダイレクトマーケティングとは>

「日本は個人情報保護法があるから、ダイレクトメールなんて駄目だろう」というのは間違い。お客様を如何にお迎えして、「来て良かった」と思えるダイレクトメールを作る事が大切。ダイレクトマーケティングとは、ダイレクトコミュニケーションの手法である。

<DMA国際エコー賞>

DMA米国ダイレクトマーケティングアソシエーションが主催している、DMA国際エコー賞では、ダイレクトマーケティングに関する海外の成功事例をコンペして、発表している。その主だった物を簡単に紹介させて頂く。

事例1:ドッゲルゲンガー(DMA国際エコー賞2012年度ダイヤモンド賞受賞作品)
犬用ペットフード<ぺディグリー>を販売しているマース社では、捨て犬や迷子犬を飼い主がいない窮状から救済することを目的とした里親プログラム<ぺディグリーアダプションドライブ>を実施しているが、更なる認知度向上のため、キャンペーンを実施した。
その際、人と飼い主のいない犬達を結びつけ、里親になって貰うために、人と犬との顔相の類似性をマッチングする顔認識ソフト<ドッゲルゲンガー>を開発して公開した所、ウェブサイトへの訪問数が400倍以上となった。

事例2:靴下をはかせて!(DMA国際エコー賞2011年度シルバー賞受賞作品)
イリノイ州ジョリエットにあるオペレーション・ケア・パッケージは1年を通じて何万ものケア・パッケージ(支援物資)を、海外に配属されている米国兵士に送っている米国のボランティア団体。知名度がないので、名称を全米で知られるようにするために、ドナーに送られる手紙の開封率アップの施策を行った。
ドナーが「開かずにはいられない」気持ちになり中身をすぐにでも見たいと思うように、ダイレクトメールの中に靴下を同封することにした。ドナーはカードに署名し、それを同封した靴下に貼って返送すると、オペレーション・ケア・パッケージは兵士に送るケア・パッケージにその靴下を一緒に詰める。このダイレクトメールに対するドナーからのレスポンス率は過去最高を記録した。

事例3:ペンの力
ノルウェー赤十字は、発展途上国において支援を必要としている子供達を対象としたチャイルドスポンサープログラムを実施している。このプログラムの認知度の向上と新規スポンサーの獲得を目的として、ダイレクトメールを選択した。この際に、ロソトに住む孤児の9歳の少女、リンフォからの手紙という設定にした。リンフォからの手紙は、スポンサープログラムの支援を受ける以前の彼女の毎日の生活について書かれている。赤十字のスポンサープログラムによって、リンフォの生活がどれだけドラマチックに変わったのかを、その文章を赤字で訂正するという方法で表現した。このダイレクトメールは予想を大きく上回るレスポンスを獲得した。

<既存ドナーと見込みドナー>

データリストは2種類に分けられる
①ハウスリスト<既存ドナー顧客>
②アウトサイドリスト<見込みドナー>

アウトサイドリストはハウスリストに対して、ドナー顧客獲得費用が何倍も掛かるので、既存ドナーを大切にすること。

【質疑応答】

Q. ダイレクトメールの頻度はコンスタントが良いのか?ランダムが良いのか?
A.理想は1年に6-12回は定期レポートを出したい。その中で募金のお願いをすること。


◎講師プロフィール

岡 徹(あきら)さん(ダイレクトマーケティングジャパン株式会社 代表取締役社長)
タイムライフブックス日本支社初のマーケティング本部長、日本リーダーズダイジェスト、アメックス初代ダイレクトマーケティングディレクター、シティバンク日本人初の副頭取など、日本における業界のトップ複数企業でダイレクトマーケティング現場の執行役員を歴任。1991年にダイレクトマーケティングジャパン株式会社設立。ダイレクトマーケティング全般に関るコンサルティング事業を展開中。社団法人日本DM協会副会長。

セッション45

「認定・仮認定NPO取得への実践的ポイント11」

~3千円寄付×100人で認定に

講師:関口宏聡さん(シーズ・市民活動を支える制度をつくる会)
司会:池本桂子さん(日本ファンドレイジング協会会員)
記録:高坂知子

【関口さんの講演】

NPO法人であれば、認定を申請することができます。小さな団体から大きな団体、地方でも、認定をとれば、寄付税制を使うことができます。取得に向けて、11のポイントをお話します。

0.なぜ、認定NPO法人?

 税制が改正され、世界でもトップレベルとなった日本の寄付税制を使うためには、認定NPO法人であることです。これからは、寄付金控除が使えることが当たり前になってきます。寄付金控除による還付は大きく、寄付する側の関心は高いです。また、認定NPO法人は年々増えており、認定をとることが当たり前になってきます。企業も重視していまして、認定されていると企業に税メリットがあります。また、反社会的団体でないという証にもなります。

1.取得は計画的に

認定は過去が審査されます。いま認定を受けたいと思っても、認定を受けるのは、2年後になります。2事業年度分、必要な条件を満たす必要があります。寄付以外に、7つの基準があり、まずはその基準を確認されてから、寄付を集めることが大切です。

2.活動はオープンに

役員や正会員のみ、といった限定的な活動をしてしまうと取得が難しいです。イベントは、不特定多数、幅広く広報し、参加条件を限定しないでください。 

3.役員には超注意

 自NPOの役員が、別NPO、会社、非営利団体など、法人格をもつ団体と、役員を兼務をしている場合、兼務している団体が重なってしまうと認証要件を満たさなくなりますので、注意してください。

4.会計はもちろん大事

 認定にあたっては、認定員による実地調査があり、会計帳簿をチェックします。会計ソフトをいれたり、専門家を入れたり、顧問に会計士や税理士をいれたりし、会計レベルを高めておく必要があります。

5.報告・公関義務は増加

 NPO法人の事務に加えて、認定法人には義務付けられる書類が増えます。事務負担の増加に耐えられるか、考慮したほうがいいでしょう。

6.当たり前を当たり前に

NPO法人だけで義務付けられることがあるなかで、認定を受ければ、さらに事務が増えますから、そもそもNPO法人として、当たり前のことができているか、確認しておく必要があります。

ここまでできれば、仮認定で申請できます。さらにパブリックサポートテスト(PST)を満たすと認定申請できます。

7.寄付金だけが寄付じゃない

寄付がなくても、特典のない賛助会費、助成金や企業の協賛金も寄付に入り、収入を洗い出してみましょう。

8.「寄付者名簿」が命

寄付を証明する書類(寄付者名簿)を揃える必要があります。PST上有効な寄付になるよう、必要な情報4点セットを記載するようにします。氏名、住所、金額、受領年月日が4点セットになります。

9.定款・会員制度に一工夫

定款違反では認定が取れません。実態に合わない点、改善ができる点がないか、チェックしましょう。会費3,000円ならカウントできる等。

10.取得後がファンドレイザーの本番

取得後は、優遇税制を理解して、フル活用していってください。

11.設立も認定取得前提で

これから設立する方は、認定前提で設立を目指したほうがスムーズにいきます。最短で13ヶ月で申請することができます。

【質疑応答】

Q:今年度から目指しています。役員に公務員が多いのですが、どうでしょうか。また、役所からの委託も報告に載せる必要がありますか。
A:自治体職員も同一の市町村、都道府県もカウント対象で、同じ市町村の職員で占められている場合は無理です。報告書には載せる必要があります。

Q:最短13ヶ月とは?
A:NPOの初年度の事業年度は付則で決められますから、設立して1ヶ月で初年度を終わらせます。これで1事業年度、次の4月で2期が終わります。5月には申請可能となるので、13ヶ月ということになります。実際に申請したNPO法人もいます。


◎講師プロフィール

関口宏聡さん(NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会 常務理事/プログラム・ディレクター)
2009年、東京学芸大学卒。2007年6月よりシーズで、日本ファンドレイジング協会設立に尽力。2011年の「新寄付税制・NPO法改正」実現では市民側の中心的役割を果たし、現在は活用促進のため、全国各地での学習会や条例制定の働きかけなどに奮闘中。せんだい・みやぎNPOセンター評議員(2010年~)、神奈川県指定特定非営利活動法人審査会委員(2012年~)など。

セッション46

「金融業界全体による社会貢献」

~過去7年間で3億7,500万円以上を集めたファンドレイジングイベント運営紹介~

講師:堀 久美子さん(UBS証券株式会社 コミュニティ・アフェアーズ&ダイバーシティ エグゼクティブ・ディレクター/FITチャリティ・ラン実行委員会2012 アドバイザー)
司会:河内山信一さん(日本ファンドレイジング協会会員/准認定ファンドレイザー)
記録:伊森由美

【堀さんの講演】

・自己紹介

2009年、2010年にFITチャリティ・ラン実行委員長を務め、2011年は111社から6,800万円を集め、2012年は実行委員のアドバイザーを務めている。
このセッションでは、過去7年間で3億7,500万円以上を集めたこのイベントの紹介をさせて頂く。

・現在行っている活動

FITとは、「Financial Industry in Tokyo」の頭文字をとったもので、東京の金融機関の人達が集まって走るというチャリティランのイベントを行っている。目的としては、地域に根差して社会的に意義ある活動をしているけども認知度がなかなか上がらなくて資金が集まりにくい非営利団体に寄付をする、というもの。

FIT は2005年から活動を行っている。2004年にスマトラ島地震がきっかけで、社会的な課題に向き合って、主に外資系の機関が集まって何か出来ないだろうかという思いから、このイベントが企画された。

このイベントの仕組みとしては、企業単位で登録の申請をして頂き、社員やその家族・友人の参加を募っている。ある程度の競争意識を働かせ、多くの寄付金を得られるように工夫も行っている。
FITの運営母体は、NPOといった様な組織形態をとっていない。毎年新たに実行委員会を形成している。

2012年のイベントには、7000人が参加し、それぞれの個人が5km・10kmという目標を設けたり、リレーをしたりして、チャリティーランを行っていた。
2012年は、国立競技場を中心に青山のイチョウ並木を走って戻って来るというコースで、総勢7000人程度が走った。
2012年の寄付金総額は6100万円で、その中から経費を引いた91%を事前に選んだ8団体に均等に分配した。

・活動の中で印象的だった事

FITのイベントは大変楽しいイベントで、他企業との人脈も広がる。
「美味しい」「楽しい」「新しい」という事を重視して行っている。支援する団体に対しても、金融機関からの寄付で行っているので、金融機関と支援先団体との繋がりも重要であると考えている。
 また、バリアフリーの視点や医療福祉保健の分野を学んでいる学生からの支援もして貰っている。

【質疑応答】

Q.イベントをする際に、大変だった事は何か?
A.色々な企業の人達が集まっているので、コミュニケーションを図るのが難しい。どのように楽しんで貰えるのか、ボランティアではなく、チームをリードして貰えるように工夫するかが大変である。
 また、大変華々しいイベントかと思うが、警察や国立競技場との渉外が大変である。 
 日本の中で、このようなイベントを立ち上げは素晴らしいと思うが、参加者が増える事による、事務的作業が大変になって来る。しかし、支援先団体の人からは泣いて喜んで貰っているので、継続的にやって行く為に、ボランティア同士の理解が重要であると思う。

Q.このイベントのきっかけはどのようなものであったのか。
A.スマトラ島の地震がきっかけで始めようと思ったが、まずは、東京で出来る事はないかという外資系企業の社員同士との話がきっかけであったように思う。有志に近い形で始まった。

Q.金融機関の人でなくても参加したいようなイベントであるが、このイベントは、企業単位ではあるかと思うが、個人の意思が強いように思う。寄付金を上げるために、競わせる工夫はどのようなものをしているのか。
A.企業を競わせる際には、バランスが必要であると考えている。トップ3社については、名前は挙げるが、企業金額は公表していない。沢山の社員が参加する企業については、内部での広報も活発的である。

【最後の一言】

 人事考課の時期には、こちらから、企業側に一方的に評価をし、頑張ってくれたことをお伝えしている。ボランティアで参加してくれる人は、自然と企業でのリーダーシップなどを発揮することにより、評価が高いように思う。


◎講師プロフィール

堀久美子さん(UBS証券株式会社 コミュニティ・アフェアーズ&ダイバーシティ エグゼクティブ・ディレクター/FITチャリティ・ラン実行委員会2012 アドバイザー)
英国ヨーク大学卒業、レディング大学院修了、専門は人権教育と死生学。日本の公共セクターで人権教育・啓発に携わる。人権教育トレーナーなどを経験後、2004年、株式会社損害保険ジャパンCSR・環境推進室に勤務し、2007年より現職。UBS日本および韓国オフィスのコミュニティ活動を推進。2009・10年には「FITチャリティ・ラン」共同実行委員長を務める。2011年には111社から7,600人が参加、6,800万円を集めた。

セッション47

「徹底比較!最も使いやすいNPOの決済システムとは」

講師:江崎玲子さん(株式会社ソノリテ 代表取締役)
   高島友和さん(CANPANセンター ファンドレイジング支援チーム マネージャー)
   副島康寛さん(株式会社J-Payment ペイメント事業部 営業部長)
ファシリテーター:菅文彦さん(合同会社コーズアクション 代表/日本ファンドレイジング協会 理事)
司会:河合将生さん(日本ファンドレイジング協会会員)
記録:葛巻あゆみ

【講師の皆さんが提供しているオンライン決済サービスについて】

・江崎さん(Bokinchan)

 Bokinchanというサービスを提供している。特徴はまず、募金に特化した成り立ちであるということである。例えば団体からくるメールを寄付者が受け取る、受け取らないなどをカスタマイズできる。次に、ウェブ上での郵便振替や銀行口座からの寄付申し込みにも対応しているということである。また、導入コンサルティングはもちろん、運用もサポートしている。これからBokinchanと連携可能なデータベースも発売される予定である。

・高島さん(CANPAN)

 CANPANは、ウェブ上で自分達について紹介・表示している団体に提供するサービスである。これは直接寄付を募るためのもので、寄付申し込みから最短20日で入金することが出来る。団体別に専用ページが出来る仕組みになっている。また、寄付者向けの画面は別々にすることが出来る(管理画面は共通)。ネットでの寄付は東日本大震災後から上昇傾向にある。ユーザーの集いを開き、交流の場を設けている。

・福島さん(J-Payment決済サービス)

 元々の顧客層は物品販売のショッピングサイトが多かったが、最近ではNPOからの問い合わせが多く今では100~150団体に利用してもらっている。J-Paymentの決済システムの特徴は、各審査機関への手続きの代行や、簡単導入、スピード導入など。NPO団体向けのマニュアルを別途作り、より簡単に使用してもらえるようにしている。また、カード会社に協力してもらい、最短1週間で利用が可能であり、業界最高水準のセキュリティで、情報漏えいのリスクがなくなる。そして完全な自動課金システムで、マンスリー寄付者での一回登録すれば自動的に毎月寄付がされていくので、決済データを毎月アップロードする必要がない。

【質疑応答】

Q.NPOにコンサルティングをする団体をしている。NPOの人達は忙しいので、システムの提案だけをしても、それを導入する労力が無い場合が多い。決済サービス側では、NPOの労力を何処まで下げられるのか?
A.(Bokinchan):NPO側は、ウェブサイトにBokinchanへのリンクバナーを置くだけで良い。しかし、「何もしなくて良い」と思って導入する事はお勧めしてない。オンライン決済は、団体がファンドレイジングをどう捉えるかの中で決まるので、「とりあえずカード決済ができるようにしたい」という団体は、Bokinchanを入れても余り有効に使えないと思う。
A.(CANPAN):NPO側にして貰う事は、
 (1)ウェブサイト上にCANPANへのボタンを付けて貰う事、
 (2)CANPANのデータベースに登録して貰う事、の2点。
この2点でシステムの導入までは行ける。しかし、肝心なのはそれ以降なので、それ以降を考えて進めて行く事をお勧めする。
A.(J-Payment):NPO側にして貰う事は、
 (1)ボタンのサンプルソースをウェブサイトに埋め込んで貰う、
 (2)サービスの管理画面の設定を行う、の2点。

【相澤さん(ファンドレックス)からのコメント】

ファンドレックスは非営利団体向けにコンサルティングサービスを行っている会社。
ファンドレックスでは、salesforceを活用して、非営利団体向けにカスタマイズを行った「ファンドレックスDRM」という製品を無償で提供している。このファンドレックスDRMと決済システムとの相互連動を新たにサービスとして提供を開始した。このサービスでは、相互連動により、CSVファイルをいじる手間が省ける。今後は決済代行会社のニーズに応じて徐々にサービスを拡大してく予定。

【菅さんからのコメント】

どのオンライン決済サービスが良いかは、団体の特徴や規模によってかなり変わってくる。会員数が非常に多い団体なら、しっかり初期投資をするのが結果として合理的だろう。


◎講師プロフィール

ファシリテーター:菅文彦さん(合同会社コーズアクション 代表/日本ファンドレイジング協会 理事)
事例発表者:ソノリテ、CANPANセンター、J-Payment
15:20 - 15:50

クロージングセッション

「日本の寄付文化の革新を目指して」

第4回日本ファンドレイジング大賞発表
 第4回日本ファンドレイジング大賞
  特定非営利活動法人TABLE FOR TWO International

 第4回日本ファンドレイジング大賞 特別賞
  「絵画で日本を一つに展覧会 」実行委員会

(過去受賞団体:第1回日本ファンドレイジング大賞「認定NPO法人世界の子どもにワクチンを日本委員会」、第2回日本ファンドレイジング大賞「あしなが育英会」、第3回日本ファンドレイジング大賞「NPO法人ハンガー・フリー・ワールド」。)